私は私を何と呼ぶ?

現6歳児の姪っ子は2年くらい前まで「○○(名前)がする!」「これ、○○(名前)の!」と自分自身を名前で呼んでいましたが、気づいたら「私」になっていました。ほほう。一人称も成長するのだなぁと実感したますいけです。今回はこの一人称のお話をしようと思います。

自分で自分の名前を呼ぶ子

本当に幼いころの話は覚えていないので、もしかしたら私も姪っ子と同じように「私」という概念が身につくまで「ますいけがする!!」と名前で自分を読んでいたかもしれません。ですが、幼稚園生の頃の古い記憶の中に「自分の事を名前で呼んでいるぶりっ子がいた」というものがあるので、自分を名前で呼ぶ=ぶりっ子という認識があったようです。そこから考えると私は、姪っ子より早い段階で自分の事を「私」と呼ぶようになっていたのではないかと思います。
今でも「自分の事を名前で呼ぶ奴は私とは生きている世界が違う」という謎の考えを持っています。自分で自分を名前で呼ぶのが悪いわけではないのですが、どうしても私と同じ世界観を持っているとは思えないのです。価値観の違いという奴でしょうか。
そんな謎の考えを持ちながら20代中盤位までは普通に私は「私」と言って生活してきました。

私の中の男が嫌がる

20代中盤で、自分の中の男性性が大きくなってきたとき、持って生まれた女性の体も嫌でしたが、女性が主に使う一人称の「私」も受け入れがたくなりました。「私」と言うのが自分の中の女を認めたようで、女性性を主張しているようで。私の中の男性性が「私」と言う事に対して嫌悪感を持つようになったのです。それから、自分自身にぴったりくる一人称探しが始まったのです。

私はホルモン注射もしていませんし、外科手術もしていません。男物のいかつい恰好(当時)をしていつつも、顔は女性的だし、体のラインも女性的です。そんな私が「俺」や「僕」というのは違和感がありました。
世の中には「僕っ子」「俺っ子」など僕や俺を使う女性を現す言葉もありますが、それは女性で「俺」、もしくは「僕」を使う人のための言葉で、私のようにメンタルが完全女性じゃない、性別違和を抱えている人が「俺」や「僕」を使うのとはまた違った場合の話になります。

実際に「俺」って使ってみたこともあるのです。「あのさー、俺さー」と。なんだかとっても「俺」と鏡に映った自分がかみ合わなくて仕方ない記憶があるのです。何故かみ合わないかと言うと、どこか不自然なのです。無理やり男であろうとしているようで。「俺」も「僕」も男性が使うというイメージが強くて、ちゃんと生まれた時から男性ではない私にとっては「俺」や「僕」の響きは男性性が強すぎたのです。(地域によってはおばちゃんが「オレ」と自分のことを言う所もありますけど今回はそういうのは無視します。)

”一人称”で検索して色々な一人称を見てきました。それがし、小生、みども、一人称の歴史を紐解くと色々でてきます。どれもこれも自分と今の時代と生活に合いません。結局は「自分」に落ち着きました。「自分」の一人称はとても体育会系で、硬派で上下関係厳しい部活とかで使われてそうなイメージがあって「俺」や「僕」とは違うイメージをもたらしてくれるので、直接的な男性性は薄いのではないかと思ったのです。

社会人やっていくうえで

友達の前でも、家族の前でも、職場でも私は「自分」を一人称にしてきました。前職は本当に野郎の職場で、私が「自分」と言っている事なんて誰も気にしていないような職場でした。体育会系の職場でしたし、立ち仕事、動く仕事で、職場内に指示を出す怒鳴り声が響き渡るような所でした。

メンタルの調子を崩して、前職を辞め今の職場に行ったら全然雰囲気が違いました。指示が普通の口調で来る。怒鳴り声で指示されない、女性ばかりの職場。前職とは正反対と言ってもいいでしょう。(そのため、前職とは違ったしんどさがありますが。)そんな女性的な雰囲気の職場で「押忍!!」と言いそうな「自分」という一人称は当たり前ですが、浮きました。ここでも「なんか違うぞ。」という感覚に陥ったのです。

私が私を「自分」と呼ぼうとしたときは、メンタルは完全に男性でありたかった時期です。見た目も中身も男らしくあらねばならないという、ごりっごりな考えでした。だからこそ「私」が受け入れらなかったのです。ですが、現職場に入ったころは、ごりっごりの「ねばならぬ思考」から抜け出せています。性別に関しても、女っていうのや嫌だけど、男も難しいだからその中間位で。そういう人もいるでしょ?という曖昧さを身に着けていました。そのため仕事中や、公的な場所では「私」と言う事を受け入れられたのです。

FTM(女性から男性へ性別移行した人)の友人たちは「俺」、「僕」、「自分」、「わし」などと自分自身を呼んでいます。本当に人それぞれです。

入り混じる一人称

現在、職場にいるときは「私」って言うぞ。と決めた私です。職場で「私」「私」言ってますと、私生活上「自分」と言っても大丈夫な人相手にも「私」って言ってしまったり、「自分」と言ってしまった後にあれ?「私」っていうべきだった?とか考えたり使い分けがだいぶ慣れはしましたが、ちょっと苦戦しています。日本語の一人称は数が多く、それら一つ一つが違うイメージを相手に与えるので、本当に難しいなと思います。英語のように「I」で済ませられたらこんなことに悩んでいなかったのではないかとも思います。ですが、私は日本語の数多い一人称が好きなので、現在「私」と「自分を」使い分けているのが内心嫌いではないのです。

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