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水原氏を「嘘つき」と糾弾するよりギャンブル依存症の怖さを伝えたい

数日前、日経新聞の夕刊に載っていたコラム。ある通訳者が「通訳者の資質」について書いたものだったが、その中で、ギャンブル依存症で事件を起こした水原一平氏について触れていた。「私欲のため大谷選手になりすまし嘘までついた」「倫理観が決定的に欠けていた」とし、「(倫理観や自制心が必要な)通訳をしてはならない人物」と評価。そのうえで、通訳者の権限を拡大しすぎない等の予防策をまとめていた。

この水原氏の評価において、絶対的に欠けている視点があると思う。それは、彼が「ギャンブル依存症」であるということだ。
自分の意志でギャンブルをとめることができないこの疾患において、ギャンブルを続けるために「嘘をつく」「人間関係が壊れる」「借金をする」のは典型的な症状であると多くの専門家が言っている。事件を起こしたときの水原氏はまさにその渦中にあり、“通訳どころではない”状況だろう。この段階の水原氏の言動を取り上げ「通訳の資質を問う」ことに意味があるとは到底思えない。

こういったコラムが大新聞に載ってしまうあたり、「依存症」という疾患がいかに世間で些末なことと思われているか、あるいは誤解されているかがわかる。これを掲載した新聞社でも、このコラムの内容に問題意識を感じなかったのだろうかと疑問に思う。

著名人の自死のニュースには、必ず自殺対策や相談の連絡先がセットで報道されるようになった。ギャンブル依存やアルコール・薬物依存のニュースでも同様に、依存症の本人や家族のための相談先をセットで報道するようにしてはどうだろうか。


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