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ウンコ、ウンコ、言ってるヘンな人 中村 亜矢子 第1回

インタヴューの相手は、中村 亜矢子さん。ゾウが大好きで、ゾウの現状を知ってもらうために、ゾウのウンコで紙をつくっています。

新しいウンコに出会うたびに、「わぁ」ってなる中村さん。ウンコではじまり、ウンコでおわるインタヴューです。これを読めば、2019年、運がつくこと間違いないゾウ!?

全5回に分けてお届します。第1回です。

中村 亜矢子
1984年東京都生まれ。象のUNKO elephant paper代表。環境活動家。象糞紙作家。象の糞で紙を作りながら野生動物の保護活動を続けいる。

聞き手 マスダ ヒロシ
1987年埼玉県生まれ。The U 編集長。イラストレーター。1月中旬から原宿の「ビオ オジヤン カフェ」で個展やります。1年半海外を旅してた。

生きてるゾウからしかとれないウンコのほうがいい

マスダ
ぼく、ウンコが好きなんです。

中村
あはははは、そうなんですね(笑)。

マスダ
はい(笑)。なので、ウンコを生かす中村さんがおもしろいなあと思って。

まずは、今の活動について教えてください。

中村
簡単に説明すると、ゾウのウンコ(UNKO)で紙をつくりながら、環境教育活動をしています。環境活動家みたいな。

なんで、こういう活動しているかというと、象牙(ぞうげ)をとるにはゾウを殺さないといけないけど、ウンコは生きているゾウからとれるんです。殺したものからとれる象牙よりも、生きてるゾウからしかとれないウンコのほうがいいよねって。

マスダ
ウンコで紙って、おもしろいですよね。

中村
環境保護とか動物保護に関心のない人に、「なんだろ、この人?」「アタマおかしいのかな?」って思ってもらえたらうれしいんですよね。「ウンコ、ウンコ、言ってるヘンな人がいる」を入り口にして「へえ、ゾウって象牙とるために殺されてるんだあ」ってことを知ってもらえたらなあって。

マスダ
みんな、ウンコ好きですもんね。

中村
けっこうみんなウンコ大丈夫なんですけど、たまに、「ウンコ」って言葉でバンってシャッターを閉められちゃうこともるんですよね(笑)。「へっ、あなたも出してるよね」って思っちゃいます(笑)。

マスダ
みんながウンコ好きってわけじゃないんですね(笑)。

中村
でも、だいたいの人はおもしろがってくれます。

地球上の生物が絶滅することって、歴史の流れにそっているとは思うんですよね。それを変えよう、ゾウを守る活動って、上からというか、おこがましいとは思うんです。

ただ、なんでこういうことをやってるかというと、「ゾウの住めない世界、ゾウに関わらず野生動物が住めない地球に住みたいですか?」って私自身に聞いたときに、私は野生動物がいる地球に住みたいなあって思ってて。

私がやっていることが正しいというよりは、私はこういう考えです。あなたはどうですか?と聞いてる感じです。

マスダ
別に押しつけているんじゃなくて、自分の意見を言ってる感覚なんですね。

中村
もし、私の活動をおもしろいと思ってもらえるのであれば、応援してくださいって。今は、ゾウのウンコを使いながら応援してくれる人を増やしています。

ただ、ツールとしてウンコを使ってるんですが、ウンコで紙をつくるのがおもしろくって、おもしろくって。

ウンコと対話する

マスダ
どんなことにおもしろさを感じていますか?

中村
いろんな動物園のウンコをもらうと、「ナナちゃん(ゾウの名前)は、あんまり噛んでないね」って、みんなのウンコが違うんです。

マスダ
へー、ゾウによって、ウンコにも個性があるんですね(笑)。

中村
同じアジアゾウでも、アイちゃんとナナちゃんでは違いますね。もちろん、動物園によってあげている餌が違うんですけどね。

野生のアフリカゾウは枝をたくさん食べてて黒っぽい色、シロサイは草を食べているんで黄色いっぽい色をしてるんですよね。

マスダ
何を食べているかもわかるんですね。

中村
新しいウンコに出会うたびに、わぁってなって。ウンコと対話するじゃないですけど。あなたはこういう子なんだねっていうことがわかったり。

マスダ
はあ、ダイヤローグ・ウンコですね(笑)。

中村
動物園からゾウのうんこを送ってもらって、そのゾウに会う前に紙をつくることもあるんですけど、ウンコを見て性格分析をするんです。全然噛んでない子は「せっかちなのかなあ」、「もうちょっと噛まなくちゃダメよ」とか。

そんなことを思いながら実際にそのゾウと会うと、さらに愛おしくなるというか。

マスダ
ウンコって、Twitterに似ているかもしれないですね。カラダから出た140文字の言葉で、この人ってこういう人なんだろうなあって、想像できるし。会ってみると、やっぱりそういう人だったなって。

中村
そうです、そうです。

そもそも、ゾウだけじゃなくて、動物全般が好きなんですよね。元々いちばん好きなのは狼です。ただ、ゾウとかサイとかバクとかのウンコから紙をつくってると愛着が湧いてくるんです。ウンコから動物をどんどん好きになってます。今ではゾウは特別な存在です。

マスダ
このインタヴューもウンコみたいなものですね。中村さんから出てくる言葉で、中村さんのことを好きになる人がたくさんいると思います。

中村
かなりマニアックなウンコですけどね(笑)。

お前、ゾウのウンコで紙つくってみろ

マスダ
ウンコで紙をつくる、いちばん最初のきっかけは、何だったんですか?

中村
もともと、動物園の飼育係になることが小学生の頃からの夢だったんです。その夢を叶えるために、瑞穂農芸高校の畜産科に入りました。

マスダ
へえ、動物について学べる高校があるんですね。

中村
「飼育員になる近道はそこだろう」と思って。そこで3年間、動物のことを学んで。

専門学校の説明会で「動物園に入って飼育係になるには、どうしたらいいですか?」って専門学校の先生に聞いてみると、「無理だね」って言われて(笑)。

マスダ
ああ、飼育係になるのって、狭き門なんですか?

中村
特に公立の動物園については、ほぼ大卒ですね。「専門学校からじゃ難しいよ、高卒じゃ難しいよ」って話をされたんですけど。勉強が好きじゃなかったので、大学は無理ってなって(笑)。

マスダ
そこは、あっさり(笑)。

中村
お金かけて専門学校に行っても、なれないんじゃしょうがないと思って、高卒じゃ無理と言われたけど、高卒で探してくれる動物園を探そうって思って。

マスダ
とりあえずみんなと同じように学校へ行こうってなりそうですけど、夢に一直線だったわけですね。

中村
高卒でも、個人経営の宇都宮動物園が面接を受けさせてくれて。社員として採用してくれて、飼育係になれたんです。

マスダ
ちなみに、どれくらいの数の動物園を調べたんですか?

中村
北は北海道、南は沖縄までどこでもいいと思ってて、上から順番に就職担当の先生に電話をかけてもらったんです。それで、宇都宮動物園を見つけてくれて。

マスダ
へえ、しらみつぶしに就職の先生が電話かけてくれたんですか。いい学校ですね。

中村
就職にもチカラを入れていたからですかね。

それで、夢を叶えたんですけど、2年目にプライベートで半月板のケガをして、飼育係から部署移動になったんです。自分の責任でケガをしたので、飼育係できないならやめますっていう感じではなく、申し訳ないなあって気持ちで働いていたんです。

事故した次の年かな、園長がタイにゾウのことを学びに行って、帰ってきたら、「おい、ゾウのウンコで紙つくれるらしいから、お前つくってみろ」って(笑)。

マスダ
おー、人生を変える一言ですねえ。

第2回/私はゾウのウンコで紙がつくれる 1月4日公開

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撮影協力/GALLERY KISSA


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