その6 祈り

 『祈りの先』 立香綾

テーマ外の短編として掲載されています。

カップルがピロートークの中で「しゃぶってる姿って祈りの姿みたいだね。」というような話の切り口から会話劇が始まる。
吸茎が祈りの姿を想起させるのは、かしずいた姿を想像しやすいからではないだろうか。
ひざまずいて目をつむり、ハンドマイクを両手で持って、うつむき加減でアジル。
そういう想像をするとまあまあわかる気がする。
言ってしまえば下腹部に顔を埋めて何事かしていれば祈りのポーズに見えてしまうというのはある。
さらに言えば、折り重なっていつ果てるともなく抽挿を繰り返し繰り返し夜明けまでするのかと思えるほど続けたらそれは祈り以外の何物でもない。
祈りを捧げる人と、祈りを捧げる人の睦み合い。
そう思うと崇高さすら抱かせる。

実際はそうでもないことのほうが多いでしょうけど。

褥をともにするということはとても有難いことだと思います。
同衾してくれるだけで非常に嬉しいので、そこで目的は達しています。
実際の同衾は恩返しのようなもので喜んでいただけるよう努力するのみです。すなわち祈りです。
個人的には部分的に祈りというよりすべてが祈りです。
「もしあなたが男だったら喜んで咥えています。」といって苦笑いさせたこともあるけれど、それはその行為が祈りに似ていたから。
祈れるものなら祈りたい。

で、本文ですが、そんな二人はもう別れているということで彼女は他の人に祈りを捧げているし、彼氏だった人は優成のものに祈りを捧げる。
テーマ外の短編かと思いきや、それほど外れてもいなかった。
思い出したように二人が再び祈りを交わせばしっかりテーマに交わる。
その一歩があればゴールラインを超えていて、そこまでは書いてなかった。
それだけのこと。
余白が広いので、様々に想像できるのもいい。
詩のようだった。

連作なんてどうだろう。続きを1~5ページ程度で他の人に書いてもらって、またさらに続きを書くとかね。
既存の小説にたいし本歌取りの要領で話を続けるNTR小説なんてのもいいと思う。

いやあ、感想文を書くのが楽しかった。

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