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#尾崎翠
テクストの「場」 尾崎翠の代表的作品群(1927〜1933)の場合
1、はじめに
尾崎翠は、時に「幻の作家」などと言われることがある。
それは、実際の作品数が少ないだけでなく、作家としての評価の中心となる作品のほぼ全てが、昭和2年(1927)~昭和8年(1933)の約七年間に発表されたものであり、あたかも文化とモダニズムの1920年代の終焉とともに筆を折ったかのような印象を与えるためである 。その印象が、「モダニズム女性文学の作家」 という、実際には時期的
「フェミニズム批評」という視点が可能にする不可視領域へのアプローチ ―塚本 靖代 『尾崎翠論―尾崎翠の戦略としての「妹」について』を読む―
(2006年に刊行された塚本靖代氏の遺著の『日本海新聞』での書評。2006.7)
本書(近代文芸社、2006)は、2002年逝去された塚本靖代氏の修士論文に、雑誌論文を加えて刊行されたもので、あまりに早く逝かれた塚本氏が私たちに残された、重要な研究成果である。塚本氏は、フェミニズム批評という方法、あるいは視点から尾崎翠にアプローチした、近年の尾崎翠研究におけるキーパーソンの一人であった。