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#連続小説【アオハル】

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自分の半生を振り返ったリアルとフィクションを混合した青春ストーリーです。高評価、低評価問わず遠慮なくコメントしてください。1日1ページ投稿を目標としてます!
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#小説

#連続小説【アオハル】〜プロローグ〜

(進路って決めなきゃいけんの?何で?) 中学3年。しかも夏。周りはドコドコの高校行きたいだとか、試験勉強だとか、塾に通う奴までいる始末。 俺は1人川辺にピーチベッドや漫画を広げ、タバコをふかしながら、クーラーボックスに入れてきたコーラやカルピスで乾杯中…何が悲しくて中年のサボリーマンみたいな事をしてるのか… (高校ってそんなに大事か?んだよどいつもこいつも!) 「おー!マイク〜!ま〜たオッサンごっこか?お前も毎日飽きねぇよな?」 「ん?んだよ…シャンかよ。オメェも暇なん

#連続小説【アオハル】〜第七章・地獄のバンク 5〜

俺は芝生に寝転がりながら西村さんにストレッチをしてもらっていた。 「鬼木。お前水分摂ってないだろ。水分不足だと足がつり易くなるって前にも言ったと思うけどな。」 「すんません。自分では摂ってたつもりだったんですが...」 「普段から意識して水は飲まないとだめなんだよ。最低でも2ℓは飲んでないとな。」 「そんなにですか!?下痢になるんじゃないですか?」 「そうだな...俺は常に水っぽいクソしてるけど慣れた!」 (おいおい...ここでも慣れろ的なアレか!?) 「慣れっ

#連続小説【アオハル】〜第七章・地獄のバンク 4〜

「おおし!一年はピスト持ってバンクに集合しろ!」 『はい!!!!!』 バンクは1周400mで中央は芝生で覆われている。俺達はその芝生に集合させられたのだ。 「バンクは見ての通り傾斜がついてる。どんだけスピードを出しても遠心力で外側へブッ飛ばされない為だ。まずはバンクの走行に慣れるまで周回練習をする。先頭を1周交代で走るからな。番手を変わる場所はあそこの1コーナーだ。先頭は"上がります"って声を出して右側に抜けろ。その後は最後尾に張り付くんだ。ロードと違ってピストは速度が

#連続小説【アオハル】〜第七章・地獄のバンク 3〜

翌朝午前6:00。 いつも通りの目覚めであった。今日は初めてバンクに乗る日だ。学校まで自転車で向かい、その後は部のバスで移動をするそうだ。集合予定は7:30。泊まり込みの練習になるので、俺は手早く身支度をすませると学校へと向かった。 いつも走ってる道路なのに、この日は何だか違って見えた気がした。気持ちが昂っていたからだろうな...程なくして石谷が追いついて来たので二人で先頭を交代しながら学校を目指していた。 「石谷ぃ〜お前バンクって何の練習するのか分かるか?」 「ぁあ?

#連続小説【アオハル】〜第七章・地獄のバンク 2 〜

「おーし!時間は掛かったが何とかなったな。残りの時間はピストに乗ってみようか!ロードとは全く違うから驚くとは思うが慣れろ!」 (でた!慣れろ...) このフレーズが出た時は本当に慣れるしか方法がない時ばかりだ。俺は器用な方ではないので、いつも苦労をしていた覚えしかない。 ピストに乗る時は基本一般道は走らない。答えは単純でタイヤの摩耗を防ぐ為だ。安いタイヤでも一本数千円する代物なのに修理が効かないので当然だろう。 「ピストに乗る時はこのローラーを使う。」 『はい!!!

#連続小説【アオハル】〜第七章・地獄のバンク 1 〜

俺達チャリ部の練習は、週6で行っていた。月曜日が休養日となっているのだが、それは土日の練習は地獄の合宿が組まれていたからである。 「5限目は明日のバンク合宿の準備に入る。とりあえず飯食っとけよ!」 「バンクってなんすか?」 俺は聴き慣れない言葉に頭の中はハテナがいっぱいだ。 「バンクってのはアレの事。競輪場で競輪選手がレースを行う競争路のことだ。茶碗の中を自転車で走るようなイメージだな。」 竹之内さんは部室の壁に飾ってある写真を指差してそう答えた。俺、健太、義和は同

#連続小説【アオハル】〜第六章・練習あるのみ 5 〜

(痛っっって!!!!!) 誰もが寝静まる夜中に俺は激痛で目を覚ました。左足のふくらはぎがビキビキと、音を立てているかの如くつっていたからだ。 足がつるなんて経験はこの時が初めてだった。どうしたらいいのか分からずパニックになった俺は、目に涙を浮かべのたうち回った。 (何なんだよこれ!?痛すぎる!痛い!...痛い..死ぬ!) 体に力が入ると余計に痛みを感じたので、深呼吸を行いリラックスするよう努めた。ところが痛みの和らぐ隙を、嘲笑うかのように電撃が走る。その度に歯を食い縛

#連続小説【アオハル】〜第六章・練習あるのみ 4 〜

もうすっかり辺りは暗くなり時計はしてないのだが、体感としては21時頃といった感じ。 「石谷!お疲れ!」 「おう!お疲れ!」 石谷と別れ俺は最後の緩やかな坂を登っていった。その先にあるのが、俺の下宿先である重田先生の自宅である。坂を登りっきった所にイカツイ7代目クラウンが停車していた。 (フルスモの車高短...なんだあのヤクザ仕様のクラウン...絡まれたらめんでぇ) 俺は変な奴に絡まれるのはゴメンだと思い、クラウンとの距離を取りながら走り去るつもりでペダルに力を込めた

#連続小説【アオハル】〜第六章・練習あるのみ 1 〜

「よし…健太前出ろ!スピードが落ちたらすぐに変われ!」 「はい!」 ここは産業道路と県内では呼ばれている道だ。道幅は広く片側三車線もある。俺達は左端を走行しており比較的に安全に走る事ができる場所だ。 この道路に来てからはスピードが一段階上がり平均時速は40キロになっていた。健太もスピードを維持するために必死になってペダルを回しているのが分かる。 「よし。健太は竹之内の前に入れ。鬼木前出ろ!」 俺の隣に来た西村さんがそう伝えてきた。 『はい!!』 (ぐぉ…風!?だ

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 5

部室に戻ると西村さんのハンケツ姿が目に入ってきた。 「おお!お疲れ!乗ってきたか!どうだ?足パンパンだろ?」 自転車のウェアを着る時は、男女共に下着を着けないのが一般的だからハンケツになっているのは珍しくない。しかしシュールな姿で質問してくる西村さんに笑いを堪えるので俺は必死になっていた。 竹之内さんがこれからのメニューについて西村さんに話しかけたから良かったものの危うく吹き出してしまう所だった。 「後半は長距離で問題ないだろ。とりあえずペースは抑えめで安全に走行出来

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 4 〜

「最後だー!もがけもがけ!回せ回せ回せー!」 『ハァ…ハァ…は…い!!!!!』 合計15本。ふくらはぎ、ふとももは乳酸でパンパン。おまけに腹、背中、腕はプルプルと震える始末。満身創痍とはこの事なのかもしれない。明日は100%筋肉痛だろう。 俺はフラフラしながらも頂上までやっとの思いで到着した。 「お前ら、よく頑張った!初日でこの坂を15本いけたのは自慢できるレベルだ。三人とも体もデケエから今後が楽しみだな!アハハハ!」 (竹之内さん…めっちゃ余裕じゃん…1年違うだけ

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 3 〜

練習場所は学校から目と鼻の先にある寮付近であった。学校自体が山の上にあるので自転車の練習にはうってつけの場所だ。 「まず、自転車に慣れる前にペダルの脱着をマスターすることから始める。ペダルの凹んでる部分があるだろう?ソコにシューズの金具を合わせて踏み込んでみろ!」 (金具…これか…?) カチン!と音がすると、ペダルと靴がくっついて離れなくなった。 (うぉ⁉︎何だこれ⁉︎) 俺はちょっとだけパニックだ。両足がガッチリと固定されてしまってる感覚が違和感しかなかったから。

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 2 〜

薩摩実業高校は全校生徒で3000名を超えるマンモス高校だ。学科も文理科、普通科、商業科、情報科、機械科、電気科、土木科、これが1クラス40名〜50名で2クラスあり、俺が所属するスポーツ学科はその人数で最低でも7クラスあった。スポーツをする為に入学した奴が350名を超えるなんてマジヤバだ。 しかも、5時限目から部活動を開始するのだからスポーツに対する力の入れようは想像出来るのではないだろうか? 4限目が終わり、俺は同じクラスでもある健太、義和と共に部室を訪れていた。 「ちゃ

#連続小説【アオハル】〜第五章・自転車競技部 1 〜

薩摩実業高校自転車競技部、通称チャリ部は部員総数8名だ。三年生1名。二年生2名。一年生5名。その中の1人に女子選手が1名いる。一年生が入学した時点で団体競技に出場できるので、同好会から部活動として認められたのだそうだ。 入学式のあった日には、部員全員の顔合わせがあった。日焼けした顔が印象的で細マッチョな三年生の西村さん。 二年生は、小柄で天然パーマの竹之内さんに紅一点の美空さん。 一年生は俺。同じ出身地の健太と義和。西村さんと出身地が同じな川野。親父が競輪好きな石谷である。