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2023年12月14日、虹の見える夜を超えて

12月14日、レインボー本八幡で1人の女性熱波師が退職された
彼女は4年以上前から気がつけば毎週日曜日レインボー本八幡の受付にいた
河童(レインボー本八幡の元副支配人、レインボー新小岩現副支配人)が140℃近いサウナ室で本当に人が死にかねない量のロウリュをして、浴室が阿鼻叫喚に包まれてる中、ロウリュ後にその副支配人が食堂で酔っ払ってめちゃくちゃな状況になってる中でも、受付で来る人、帰る人に真摯に向き合って仕事をしていた
その様を見て、俺は「掃き溜めに鶴」と言った
サ道のドラマが始まり少しずつサウナブームでは?と思われ始めてた2019年にレインボー本八幡ではそんな素振りも無く、馬鹿みたいな男達が集まって、ギャーギャー悲鳴を叫びながら全身緑のおっさんのロウリュを受け、ロウリュが終われば食堂で中学生みたいな会話をする、まるで掃き溜めのようなサウナに似つかわしくなかった彼女を見てパッと出た言葉がそうだった

そこから1年ほどして、彼女は「みー」と名乗って気がつけば熱波師になってた
所属施設であるレインボー本八幡で受付や食堂、熱波のサポートに留まらず鶴見にあるおふろの国、錦糸町の楽天地、東名厚木健康センター、まつばら、レインボー新小岩、渋谷サウナスなどでもゲストであおぎ始めてた
当時俺は転勤により広島に住んでた為受けることは出来なかったけど、舞浜ユーラシアでも定期イベントが始まって、2023年になる頃には赤坂の金の亀、楽天地スパ、法典の湯、オリエンタル上野、果ては東名厚木健康センターやニューウイングのレディースデーなど定期イベントやゲスト熱波も始まって、瞬く間に人気有名熱波師になっていった

なんでそんな人気になっていったかは理由なんて分からないけど、確かなのは彼女の受付時代から変わらなかったお客様への真摯な対応、施設への気配り、そしてサウナ室でのシンプルだけど真正面から力強く来る気持ち良い風
当たり前だけど忘れてしまいがちな事を愚直にやり続けてきた結果もひとつなんだろうなと思う

そしてみーさんはレインボー本八幡を退職するという選択を取った
退職当日は何故だか俺まで緊張してた笑
20時のイベント前、17時過ぎに入館すると続々と知り合いに会った
熱波師さんや知り合ったサウナ好きさん達
少しずつだけど19時半を過ぎる頃には明らかに普段の木曜日より浴室にいる人が多かった
20時からゲスト熱波師くるみあべしさんのイベントにみーさんがサポートという形で入るのだけど、この日だけはくるみあべしさんもみーさんの卒業だからと口上で言ってた
イベントの入室が始まる頃にはサウナ室前に30人以上並んでて、初めて見る程の大行列だった
こういった節目にこれだけの人に見守られるというのはとても素晴らしいし、幸せなことだと思う
そしてそれだけのことを積み上げてきた結果とも言える(ちなみに前日の13日に俺も今の会社の最終出社だったけどマネージャーはおろか3人、しかもうち2人は人事とマーケティングにしか会えなかった)

そして1セット目からみーさんのロウリュ
最後のレインボー本八幡でのみーさんロウリュ、そして全力の熱波を満喫する為に120℃近い温度の中3段目に座る
口上でこれまでの4年間のことや最初に書いた「掃き溜めに鶴」などに触れながらロウリュが始まる
彼女が父と慕う緑のおっさんがロウリュで流してるシンフォギアのRADIANT FORCE(輝く力)を流す中尋常じゃない熱、そしてそれを乗せた力強い風を10分以上浴びる
人としての化けの皮が剥がれそうなほどの熱さ、痛さ
それでももう気合いと根性だけで3段目に居続けた
これで死のうが別に良いと思いながら
俺よりもあおぐ方がキツいのに、最後くらい出てくわけにはいかないだろ

そして何事も始まりがあれば終わりがあるように、30分以上行われた熱波イベントも終わりを迎える
6セット目、最終セットのみーさんはサウナ室に入ってきた時点で泣いており、震える声で汗と涙を流しながら、感謝の気持ちとともに力強くタオルを振る
そんな彼女の姿を見ていると先に述べたような思い出やこれまで受けてきた熱波のことが続々と頭に思い浮かび万感の思いにかられる
彼女がここに至るまでの道程は順風満帆とは言えなかったろうし、熱波師という少し特殊な仕事上人知れないところで苦労や悩み、辛さも多くあったかもしれない
それでも諦めず、腐らず、誰かのために自分の時間や体力を犠牲にして尽くしてきたというのは誇るべきことであり、立派なことだと思う
その先にあった未来が、このサウナ室で、この光景ならそれが正解かどうかは分からないけど1番彼女らしい選択の結果なんだと思った
そして熱波イベントはみーさんの力強い「ありがとうございましたっ!」という挨拶とともに締め括られた
市川のあるサウナ施設で働くいち従業員の卒業
伝説なんて大それたものでは無いけど、この約40分に及ぶイベントはサウナの熱以外の熱いものが身体の芯に残るイベントになった

さらには最後の最後でみーさんによる108熱波で大団円を迎えたこの日は何処を取っても、誰にとっても素晴らしい1日になったと思う

いつかみーさんも熱波師を引退するかもしれないし、俺もあっさり死ぬかもしれないし、あの日あの場に居た人の記憶から薄れて忘れてしまうかもしれない
それでもまだサウナや熱波師というものがあるなら、この文章がある限り誰かの中で生き続けていくと思う

14日から1週間も経ってしまった
何度も書いては消してを繰り返して、納得いくものなんて多分一生かけないからそれを受け入れるしかない、時間は無常にも過ぎていく

みーさんはこれからも熱波を続けていくけど、それでもこの日の事は残しておきたいと強く思った

あの日、掃き溜めに居た鶴は、いつの間にか掃き溜めをも自分の庭を作り上げていって、多くの人たちに見守られながら大空に羽ばたいていった
その大きな羽をタオルに変えて、これからも求めてる人がいる限り、時に羽を休めながらもその風をサウナ室という空の中で元気に旗めかせて欲しい
レインボー本八幡で働いてくれてありがとう
おかげでサウナがより楽しくなったよ

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