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地目別有祖面積から見えるもの

新しい横浜市役所の市民情報センターに寄ったところ、市内山間部のウォーキングマップ
が10種類以上も置いてあってびっくりした。
横浜市は海の街の印象があるが、実はリフレッシュに手ごろな山間部もたくさん有している。
さいたま市にもウォーキングマップはあるが、このような山間部を歩くようなものは無い。
というか、山間部というものがさいたま市内には無い。
固定資産税の資料で地目別有祖地面積という資料(令和2年1月)があるが、これを見ると、さいたま市と横浜市の土地の状況(土地利用の状況)には随分違いがある。
さいたま市の山林は少ない。
310ヘクタールである。
名古屋市の215ヘクタール、川崎市の252ヘクタールに続いて全国の政令指定都市では3番目に少ない。
川崎市の山林が少ないのは以外だが、なんと横浜市の山林は1618ヘクタールもある。
やはり山間部を歩くウォーキングマップが多いのも頷ける。
東京近郊で山林が一番多いのは相模原市の5161ヘクタールである。
千葉市でも山林は2755ヘクタールある。
さいたま市は、山林は少ないが、田畑は横浜市や相模原市より多いのが特徴である。
たしかに、さいたま市は台地に挟まれた平地や見沼田んぼ等の低地を抱えている。
田畑はあっても、さいたま市に“木々の緑”が少ないのは明らかだ。
さいたま市には海も無いが山も無いということか。
だからこそ、“SDGs未来都市”への選定に向けた取組を進め、環境に優しいことをアピールしてきたのだろう。
土地利用の状況で、さいたま市に特徴だった部分はもう一つ。
極端に工業地区が少ないことだ。
さいたま市の工業地区は307ヘクタール。
横浜市では2959ヘクタール、川崎市で5098ヘクタール。
千葉市は1491ヘクタール。
臨海部ではない相模原市でも564ヘクタールある。
工業地区は熊本市に次いで、政令指定都市の中で2番目に少ない。
臨海部の多い政令指定都市の中ではこの順位も仕方のないことか。
さいたま市は工業地区から生み出される財政収入は少ないだろうが、工業地区に付いて回る公害や騒音、犯罪等々の問題、そしてそれに関する社会的費用もおそらくは少ないだろう。
だからこそ、住み心地の良い“文教都市”を謳うことができているとも言える。
しかしながら、その反面、さいたま市の住宅地区は大きく、札幌市の11790ヘクタール、横浜市の16465や名古屋市の11810ヘクタールには遠く及ばないが、大阪市、京都市、福岡市等とほぼ同程度の6675ヘクタールを擁している。
東京近郊の他の政令指定都市を見ると、千葉市が5341ヘクタール、相模原市が3473ヘクタールとなっている。
千葉市や横浜市が一定の住宅地区と工業地区の両方を抱えていることを考えると、自治体の収益の面でさいたま市の財政は、工業がもたらす地元への波及効果が無い中で、他の地域に就業する働き手の給与に依存するといった特異なものになっていると言える。
一言でいえば、バランスが悪い。
このように、さいたま市の、東京をはじめ近隣自治体の産業(への就業者)に依存した体質は、首都高速道路等の充実ぶりや、北から南を縦貫する京浜東北線、上野東京ラインや湘南新宿ライン、埼京線、東西を横断する武蔵野線の混雑ぶりを見れば、なるほどなと納得感があるものではある。
今後、サラリーマンの働き方に柔軟性が更に出てきて、リモートが働き方の一つのスタンダードとなることにより、さいたま市から緑や海、湖のあるような地域に住民が流れることになるなら、工業地区の少ないさいたま市にはたいへんな危機が訪れるであろうことは想像に難くない。
そういう意味で、さいたま市には東京近隣のプロフィタブル・エリアに隣接するという利便性の強みだけでは今後戦えなくなる状況が目の前にあると言える。


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