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道路への不満度が著しく高い。

さいたま市の市民意識調査(令和4年実施)における質問、「さいたま市が今後一層魅力的になるためにはどのような方向性に発展すればよいか」への回答を見てみると、災害に強く治安が良いには30.3%、子育てがしやすいには24.9%、交通の利便性が高いが15.4%であるのに比べて、自然が豊かであることには12.4%、観光の街であることには7.2%、商工業、産業が盛んなまちには4.5%となっている。
このように、さいたま市民は、広々とした緑豊かな郊外の一戸建てに住むことや、観光や商工業で活気のある町であることよりも、東京都心、職場、学校に近い、災害に強い町を好んで選択した方々なのだろう。
どちらかと言えばその地の利便性を活かしつつも静かに地元で時を過ごしたい方々である。
そうするとやはり東京都に近いさいたま市の南部の人口は、その交通の利便性から増加し、利便性の薄い北部では人口が減少傾向にある地域も出てくる。
そういう意味では、さいたま市の中でも南部と北部で、その街の振興策として必要とされる施策が異なってくるのではないか。
特に人口が減少する北部では、空き家や既にシャッターを閉ざした商店をどうするのかということもあり、そのような街の外観ももちろんだが、高齢者が増えているであろう市民の買い物や医者への通院の利便性をどう確保していけばよいのか。
いや、実は南部の中を見ても、人口が増加しているところと減少しているところがまだらになっている状況にある。子育て期の市民が多いイメージがある南区であっても、太田窪地区の高齢化率はとても高い。
施策は市単位で、もしくは10個ある区の単位で一律に実施しても、個々の市民にとっては十分ではないように思う。
行政にはそのような細かなニーズの把握と、それに対する緻密な手当ができるだけの体力(予算や人員)があるのだろうかと心配になる。
もう少し補完性の原理に目を向けて、市民や事業者と行政が一体となって街づくりを進めるプラットフォームを作って、地域ごとにこれを運用していかなければいけないのではなかろうか。
ここを重点的に推進せずに何を重点とするのか。
また、この市民意識調査を見ると、地域医療への不満度もまあまああるが、各区とも公共交通・道路への不満度が著しく高い。
今後力を入れて欲しいとする施策を見ても公共交通・道路が全市で見て47.4%とトップとなった。各10区毎に見ても、全ての区で公共交通・道路への不満がトップとなっている。
さいたま市は、他の政令指定都市の公共交通・道路環境に比べて、公共交通・道路環境の現況はどうなっているのだろうか。
まず、令和3年3月の“大都市の都市計画道路整備率の順位を見てみよう。
東京23区及び政令指定都市全21市の中で、整備率トップは札幌市の97.4%、札幌市と名古屋市、神戸市、福岡市が90%を超え、さいたま市は最下位の68.7%となっている。
令和3年3月の政令指定都市の“幹線道路の整備率”を見ても、整備率のトップは名古屋市の94.7%、さいたま市は18位の58.9%となっている。
市内の自動車交通の利便性を図る資料(平成27年秋季)もあって、それは昼間12時間平均旅行速度。いわゆる渋滞度を測る指標だ。
この速度が速いのは静岡市の37.6キロメートル(第1位)、その後には新潟市、神戸市、千葉市が続く。さいたま市は25キロメートル(東京都区部を含めて)19位。その混雑度は20位の東京23区や21位の京都市とほぼ変わらない状況だ。
さいたま市は他市との交通網の状況を見れば、東日本の交通の結節点として広域交通基盤の整備が充実し、全国へのアクセスも優れ、東日本でも有数の乗客を有している。また、東北自動車道が縦貫しているほか、関越自動車道や首都圏中央連絡自動車道に囲まれており、高速道路の利便性に優れている。(さいたま市資料)・・・とされるが、市内から市内への交通の利便性は他市と比べると大分低い状況にあると言ってよい。
これではなるほど、道路環境への市民の不満度が高いことも頷ける。
次に、さいたま市の道路環境に要する経費の額を近隣政令指定都市と比較してみたい。
2018年の地方財政状況調査によると、さいたま市の道路環境に要する経費は合計335億6千6百万円、千葉市は320億4千7百万円、横浜市は1285億9千1百万円、川崎市は504億9千2百万円、相模原市は199億3千6百万円となる。
これを人口(2018年4月現在)割にして一人当たりの額を出してみよう。
すると、さいたま市は2万6千円。千葉市は3万2千円。横浜市は3万4千円。川崎市は3万3千円。相模原市は2万7千円となる。
さいたま市の道路環境に要する経費は、相模原市のそれよりは若干高いが、さいたま市は相模原市よりもはるかに都市部であると言ってよいであろうし、その上、幹線道路整備率が低く、渋滞度が高い現況を抱えながら、そこにかける経費は千葉市や横浜市、川崎市の76%から81%程度である。
道路環境に対する市民の不満は、道路環境に要する経費のかけ方を見ても、それはそうなんだろうなと納得してしまう。

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