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「NPM(new public management)」の考え方が普及することにより、いわゆる「CS(customers satisfaction)」「顧客(市民)満足」を達成することが行政サービスの目標であるとする考え方が広がりました。
いわゆる究極の成果指標が、「個々の市民が満足するか否か」であるというものです。
こういった考え方によって、「市民の論理」から生まれる行政サービスの実施が可能になると言われます。
しかしながら、そのような市民満足度を図ることはとても難しいものです。
まずニードをしっかりと掴んで、そのニードを満たすサービスがあるか否かということがあります。
そして、既に実施されているサービスの場合は、その量や質がニードを満たしているのかということがあります。
また、市民個々のニードを把握して、行政にどこまで一人ひとりに対応した、様々なサービスを実施することができるのかといった、市民の多様化と行政能力の問題、対応すべき範疇はどこまでかという問題もあります。
こういった観点から考えますと、市民の各々が自分のニードに合ったサービスを選択する環境(システム)を、まずは創造することが重要であることがわかります。
もちろん、公共的なサービスの実施が民により供給される(新しい公共)という方向性にある今日では、行政が当然の如く市民ニーズを直接充足させるサービスを提供することではなく、民によりサービスが実施されることの振興や民の供給するサービスに係る公平性を監視するといったことが行政の役割となることもありますし、分権的な官民への権限付与(委託)も重要な施策ということになります。
また、一方では、それにより行政から市民への直接サービスが減ることにより、市民の満足度を行政が捉えることが難しくなるかもしれません。
サービスの形態がニーズの実際を直接表していない場合も考えられます。例えば高齢者への配食サービスなどの場合は、その食事の量や質が市民のニーズではなく、ニーズの本質は「人との暖かいふれあい」であるとも考えられます。  
このようにニーズと言いましても、そう単純なものではありません。
次に、市民満足度の測定について考えて見ますと、もちろん訴及先を間違わなければ、アンケートも効果的だと思われますが、ランダムなアンケートのような、回答者が問いにあるサービスを受給している状態か否かを考慮しないような対応ではなく、日頃からサービスを提供する際に、その時点でのCRM的な市民要望把握が必要で、また、苦情窓口の設置により、いわば市民不満足にどう対応して、不満足を満足に変えるのかといった取組みをすることこそ重要であると考えられます。
これらの日常的によって拾うことができた「市民不満足」を、どう事務事業評価・事業の改良・計画の見直しに結びつけていくことができるかということはとても重要な視点です。 
アンケートについても、アンケートというよりは、市民各々によるサービス評価と考えた方が良いかもしれません。
さらに、施策を考える場合、当然全ての市民ニーズに応えることはできません。
必ず優先順位付けを行うことが必要になります。
市民はサービスを需給するだけではなく、その費用も支出しているわけですので、その辺のメリハリをどう合理的に結果づけるかが重要です。

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