『カラフル』読んでみて
大学生の頃、私と同学年の男の子2人で、知的障害のある方のスポーツ教室を運営するボランティアをやっていました。
2人で企画を考えて、毎回参加してくれた皆さんと一緒に身体を動かしていました。
学校のプログラムで募集があったこのボランティア。
たまたまその男の子も応募していたので、一緒に活動することになったのです。
活動をはじめた頃、私はその男の子が苦手でした。
弱気でマイナス思考で、なんだか「一緒にいて気分が下がるな」と思っていました。
この人と一緒にこれから活動するのは正直きつそうだなとも感じていた始末。
一緒に企画考える時や準備など、何も行動してくれず、もどかしく思っていたのです。
「何で何も言わないしやらないの?」
「もっとしっかりしてよ」
本人には言いませんでしたが、内心そう思っていました。
活動をはじめて半月くらい経った頃。
私は企画と運営が楽しくて、色々アイデアを出し、次々とそのボランティアで実践していきました。
しかし、ある時、自分の企画を過信していて、参加者の方の気持ちを考えず、彼らや彼女らを嫌な気持ちにさせてしまいました。
自分のやりたいという気持ちだけで、参加する人たちがどう感じるか、しっかり楽しめる内容なのかを考えられていなかったのです。
終わった後、涙が出てきて、自分のことしか考えていなかった企画をしていたんだなと、とても恥ずかしく思いました。
その時、その頼りない彼は、優しく声をかけてくれたのです。
「頑張ってやってたのは本当なんだから、次はこの経験を活かしてやっていけば大丈夫だよ」
私が独りよがりになったことも、それを痛感して恥じて後悔している今の私も、全て分かった上で声をかけてくれたのです。
「彼は弱気で何もやらないん人なんじゃなくて、人の気持ちをよくみている人なんだな」
彼のその話す表情や声のトーンで、優しさや本当の姿が伝わってきました。
私は、この時のやり取りをきっかけに、彼の見方が変わったのです。
そのあと、暫く経ったある日。
彼は一冊の本を私に貸してくれました。
森絵都さんの『カラフル』
彼は私に本を手渡しこう言いました。
「僕が君に言いたかったことはこういうことなんだ。僕から言って伝わるか分からないし、上手く言葉にするのは難しいから、読んでみて」
私は早速読んでみました。
彼からの私へのメッセージが、この物語を通して伝わってきました。
「世界はカラフルだ」
一つの物事や出来事でも感じ方や見方は十人十色。
そんなようなことが物語に書かれていました。
私だけの固定観念で知的障害のある方を見てしまっていたし、彼のことも私だけの視点で見ていたなと気づきました。
みんなそれぞれ感じ方があって、されて嫌な事だって傷つくことだって十人十色あるということ。
決めつけて物事を見てはいけないんだなと感じました。
そして、黙って頼りなく思っていた彼は、色んな人の気持ちを考えて常に行動してくれていたんだなということに初めて気がついたのです。
この出来事から、私は色んな人の色んな立場を想像して言葉や態度に気をつけるようになりました。
考える時も、みんなが本当に楽しめるような企画か、全員を想像して創るようになりました。
素晴らしい気づきを与えてくれた彼と、知的障害の方々に感謝しています。
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