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散文詩:流転

 朝は兄貴で夕方が僕だった

大型商業施設に出かける度に
ペットショップで君を探す
父と幼児の姪と三人で訪れた
施設内の店にいた生後二ヶ月の
ミニチュア・シュナウザーを
君の名で呼んだだってこの仔は
一度天に召されてまた地上に
還って来てくれた君だから
そうではないって誰が言える?

 歩けなくなった君を抱いて毎秋
 庭の出入り口に慎ましく咲く
 ミセバヤの紫色に送迎されて
 裏の田畑の畦道を散歩したね
 老いた君は僕に抱かれたまんま
 宙からウンチを落としたね

毎夕散歩に付き添った僕に
目の前の君は見向きもせず
顔をくっ付けて見る姪っ子を
ガラスの内側から舐めている

生き違った一人と一匹の
出逢いの様子に頬がゆるんだ

ミセバヤ〈花言葉〉大切なあなた、つつましさ
Twitter#言葉の添え木[お題]

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