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父の入院

夜の11時半頃に母から電話があった。
普段かかってこない時間帯の電話は、これまでの経験上嫌な予感しかしない。
母がかけてきているということは父に何かあったのではと思いつつ、電話に出る。

予想通り父が体調不良で入院したという連絡だった。
命の危険があるというわけではないので、母は自宅に帰ってきたという。
とりあえずほっとする。

翌日、母が入院のための書類に署名をしてほしいと訪ねてきた。
父の様子を聞きながら署名をする。検査をしても不調の原因がわからないという。3年前に心筋梗塞でかなりぎりぎりの状態になったことがあるが、今回の不調はそれと関係ないらしい。

「65過ぎると、ガタっとくるもんやな」と母が呟いて帰っていった。
母から最初の連絡をもらった後から、私も全く同じことを考えていた。

もう父と過ごせる時間は、それほど長くないのかもしれない。
祖父母や親しい友人を見送ったことから、人はいつか死ぬと知っているけれど。

自分の親がいなくなる。
遠くない時期にそうなることを想像しようとしているが、まだできない。