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弦楽器の良し悪し

ヴァイオリンの良い悪いはどこで決まるのでしょうか。

メーカ(製作者)?
古さ?
性能(音)?
金額?
健康状態?

多分正解はないと思います。それぞれに正しく間違っているとも言えるでしょう。それぞれの人が楽器のどこに価値や良さを見出しているかだけであり、その個人が自分の楽器にどれだけ愛情を持っているかでしかなく、良し悪しを判断できる・測れるものではないのかもしれません。

プロの演奏家にとっては、楽器の価値(も大事ですが)よりも自分の表現したい音が出るか出ないかが重要になりますし、趣味で演奏を楽しんでいる人には億単位の楽器はほぼ無意味と言えます。逆に楽器を投資の対象にしている人は、音色などよりもその金額やラベルが重要になってくるはずです。

ここでひとつお話ししておくと、ストラディヴァリやガルネリでも健康状態が良くないものからは、名器と言われるようなあの音は出てきません(個人の耳の感想です)。つい最近の話ですが、ストラドを探していて試奏までしてみたけれど、G線の響きがいまいちだったために購入に至らなかったのを目にしたばかりです。製作者が良ければ必ずいい音がするというのは、ある意味正解である意味ではただの迷信です。自分も業界に入って体験を通して理解できるようになりました。

それは、新作イタリーを凌駕するような恐ろしくいい音がする新作アジアン楽器があることでも分かります。例えるならロールスロイスであってもエンジンが調整されていない(またはかからない)ならただの鉄屑ですし、ライツのカメラにも同じことが言えるはずです。軽自動車だって完璧に整備されていれば乗り心地は抜群ですし、ちゃんとオーバーホールしたリコーのオートハーフなら決定的瞬間だって撮ることができるんです。

つまり、自分が何を最優先に求め、どこまでそれを追求・許容できるか。周りの助言や話に耳を傾けて参考にするのは良いと思いますが、安易にそれが正解やマジョリティだと信じて楽器を求めるのはあまりお勧めしません。良い言い方ではありませんが、市場とはそもそも作られたものという視点を持つと、色々な雑音に心がかき乱されることなく音楽に集中できるのではないでしょうか。ネットやSNSが普及した現代では、あまりに沢山の情報があり過ぎて、情報にのまれ疲れてしまうことがあると思います。音楽は本来そういった疲れを癒したり、ストレスを発散するために楽しむものな気がしています。

消費するのではなく、所有欲を満たすのではなく、自慢するためではなく、良い音を奏でるためのお手伝いをさせていただけるなら、職人としてこんなに嬉しいことはありません。

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昭和最後の申年生まれ。音と木に携わる仕事をしながら、岩や光と戯れる遊びをしています。シンプル&美しいのが好き。Reader discretion is strongly advised. なかお
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