見出し画像

ガバ部40ドル統率者通信 ⑤熊の女王、アイユーラ

1.はじめに

「人間は羆(ヒグマ)には勝てねェ」…板垣先生の名著「餓狼伝」で触れられたセリフだっただろうか。

当たり前である。ヒグマは体重200kg~500kg、大きなものになると1トンを超える巨躯を持ち、下手な銃弾もはじき返すその強靭なガタイは脅威でしかない。この記事を書くにあたり色々調べたが、どのサイト様や書籍も「戦おうと思ってはいけない」と述べているあたり、まず人間が絶対に勝てる代物ではないだろう。まさに陸上最強生物といっても過言ではないのではないか。

画像1

さて、そんな最強生物「ヒグマ」…もとい「クマ」だが、MTG世界においては極めてポピュラーな生き物である。色んなクマがいるが、大体が「Grizzly(ハイイログマ)」として銘打たれているため、ほぼヒグマと思っていいだろう。上のイラストなんかだと、若いグリズリーが巨木をワンパンでかち割っている。こんなんMTG世界においても最強生物であるに違いない。

で、そんなポピュラー部族「クマ」なのだが、意外にも「クマ」を部族として参照するカードは長らく存在しなかった。が、昨年2019年に、ついに全国のクマ愛好家に向けて、クマを参照する伝説のクリーチャーがついに現れたのである。それがこちら。

画像2

熊の女王、アイユーラ》(画像クリックで能力の詳細が出ます)

デッキリストは下のリンクから参照願いたい(MTGGoldfishのページへ飛びます)

さて、普段だったらこの後、筆者がデッキリストを眺めてコンセプトやら何やらを説明できない理由をグダグダと言い訳し、作った製作者の方のインタビューへなだれ込む、という流れが通例である。だが、意外や意外、今回は筆者がこのデッキのコンセプトからイチオシポイントまで全部説明できる。

何を隠そう、今回このデッキを作ったのは私「マッサン」だからである。一応どういう人か自己紹介すると、日々MTGの面白さを追求するべくTwitchで配信を行っており、更に「ブロール」というスタンダード版統率者構築を布教しようと、40本の記事を今までに書き上げてきたMTGプレイヤーである。

なおプレイングとデッキ構築能力はアレな部分が多く、名実ともに弊コミュニティ「ガバ部」の総帥として祭り上げられている。

それでは、今回は私自らが、これがどういうデッキなのかを説明していきたい。

2.なぜこの統率者を選んだんですか?

画像3

ことは2ヶ月前、「なんかいい統率者いねえかなあ」と筆者がストレージを漁っていた際に、たまたま《アイユーラの影響》を掘り出したしたことに端を発する。

「そういえばアイユーラなんていたなあ…どんなカードだっけ…?」と思い、EDHRECという筆者がお世話になっている統率者専用データベースを調べてみると、結構面白そうな能力を持っており、更に、アイユーラと相性のいいカードが相当安そうに見えたのである。

画像4

考えてみれば当たり前である。「2マナ2/2のバニラ生物」、多くのMTGプレイヤーがこれを総称して「クマ」と呼ぶが、これは多くの熊が2マナ2/2のバニラ生物であることに由来している。流石に2マナ2/2のバニラ生物に多額の金を要求されることは無いようである。

画像5

というわけで、資金的な問題はOKだ。となると、あとは組んだり遊んで楽しいかどうかだが、筆者はこういう「並べてしばいて勝つ」ことを忠実に守る部族アグロや蛮族デッキをこよなく愛している。何なら筆者の一番好きな統率者は《群衆の親分、クレンコ》であったりする。そこも問題なさそうだ。

というわけで、《熊の女王、アイユーラ》を採用し、筆者も40ドル統率者デッキを組むに至った。という話である。

画像6

なお完全に余談だが、上記の《アイユーラの影響》と一緒に《反体制魔導士、ケス》を掘り出し、物は試しにこれを統率者に据えたデッキも作ったのだが、こっちは紆余曲折を経て1000ドル統率者デッキになった。先述したEDHRECで勧められたカードを片っ端から採用した結果の出来事だった。とんでもない話である。

3.構築で注意した点はありますか?

色々注意した点はあるが、ザックリまとめると以下のようになる。

・一定数の(値段に見合った)「熊」を採用する
・並べて殴って勝てる手段を入れておく
・全体除去を食らっても立て直せる手段を講じておく

それぞれ順に説明しよう。

1.一定数の(値段に見合った)「熊」を採用する

当たり前だが、熊の女王、アイユーラ》の能力を十全に使うためには、一定数の「熊」が必要である。というわけで、色々探して採用できそうな「熊」は片っ端から採用した。

画像7

変幻の機械》。3マナで変異し、0マナでひっくり返すと特定のクリーチャータイプを得られる。当然指定は「熊」である。

画像8

自在自動機械》。1マナ多相1/1。恐らく環境最軽量の熊である。

画像9

カメレオンの巨像》。4マナ多相4/4で、マナの続く限り自身を大きくできる。まごうこと無き最強の熊である。

…とまあ、こういう風に、明らかに見た目上熊ではないが、ルール上「熊」として扱えるカードは多数採用し、かさましをしている。

画像10

なお、正真正銘の熊でも一部採用できなかったものがある。例えばこの《森の熊》、一見普通の2マナ2/2バニラの熊なのだが、お値段は驚愕の30ドル超。流石にバニラ1枚でデッキの要求金額の半分以上を持っていかれるのはきつ過ぎる。よって不採用となった。

2.並べて殴って勝てる手段を入れておく

さて、こういう蛮族デッキの勝ち筋は2通りある。1つは「特定のクリーチャーをデカくして殴り勝つ」、そしてもう1つは「クリーチャーを横に並べて面で押して勝つ」、おおむねどちらかである。今回は多数の熊を並べて相手を屠るため、後者の面で押すタイプの戦略を採用しよう。

となると、まず必要なことは「クリーチャーのパワーを底上げする」ことである。これについてはアイユーラ自身の能力で熊にカウンターが乗せられるので問題はなさそうだ。

画像11

更に、全体のパワーを底上げできる追加手段として《ガイアの頌歌》などを採用。本当は全バニラ生物のサイズを向上させる《ムラガンダの印刻》を採用したかったのだが、地味に高かったので断念した。

そしてもう一つ、「効率よく相手にダメージを与える」ことが必要だ。まあ、飛行をつけたりして相手に全部ダメージを与えられればいいのだが、残念ながら緑だとそれはできないだろう。

画像12

というわけで、みんな大好きバーランこと《踏み荒らし》を使ってペンペン草も残さないレベルで蹂躙しよう。

3.全体除去を食らっても立て直せる手段を講じておく

さて、並べて殴るというその性質上、このデッキは全体除去一発で沈む。流石に全体除去を1回食らっただけで、後のゲームを指をくわえて眺めるのは面白くない。対策を入れてやろう。

画像13

まずはシンプルに破壊不能を持たせられるものだ。例えばこの《鼓舞する呼び声》だが、カウンターを乗せたクリーチャーを全て破壊不能にできる。アイユーラの能力でカウンターを乗せた熊だらけなのは目に見えているので、ほとんどの熊は保護することが出来る。更に、カウンターを乗せたクリーチャー1体につきカードを1枚引けるというのも大きい。

画像14

後は、仮に全体除去を食らっても、クリーチャーを供給して立て直せる手段を入れておこう。例えばこの《産み落とす太枝》は、4マナタップで2/2の多相クリーチャートークンを生成できる。アイユーラを出し直せばカウンターを乗せて毎ターン4/4を生み出すことが出来る。

4.このデッキの魅力を教えてください

このデッキの魅力を一言で説明すると、「This is the 蛮族。暴力 is God」となるだろう。

統率者戦の政治要素?無限コンボ?知ったことかいな、要は40点ライフ削れば人は死ぬんじゃ!というシンプル極まりない設計思想で作ったデッキがこれである。ただ愚直に、まっすぐにクリーチャーを並べて人をミンチにする快感は恐らくこのデッキならではないだろうか。

画像2

地味に《熊の女王、アイユーラ》のスペックも高く、2マナで設置して後続の熊のサイズが上がっていくのを眺めるだけでも楽しい。

「部族のシナジー」「殴って勝つ」という要素をふんだんに味わえる、安価でかつシンプルなこのデッキ、是非興味があればトライしてほしい。

5.おわりに

いかがだっただろうか。蛮族デッキを愛してやまない筆者が初めて作った40ドル統率者デッキである。何分初めてのデッキなので粗も目立つかもしれないが、それも含めていい仕上がりになったと思う。

なおこのデッキ、一つ問題点を挙げるとするならば、ヘイトの溜まり具合いもかなり激しい。要は他プレイヤーからしたらお隣に蛮族の拠点が設置されたようなもので、そりゃ結託して全力で叩き潰しにくること間違いなしである。政治要素と無関係とは先ほどの言だが、実は最も政治要素を要求されるデッキではないだろうか。

「何事も暴力で解決するのが一番」というコトワザがあるが、これは「暴力をふるって物事に当たれ」という意味ではない。「最も効果的なタイミングで最大限の暴力を用いて一気に叩き潰す」という意味だと筆者は解釈している。

現実の熊も、実は自らは積極的に暴力をふるうことはない。狩りなどどうしても必要な時にその恵まれた体格を活用するのである。そういう熊の習性までばっちり再現したこのデッキ、是非体感してほしい。

それでは皆様、よい統率者ライフを!

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。