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ガレッガ名人伝 ~神威氏との対談記録~

はじめに彼女と出会ったのは、何がきっかけだっただろうか。たまたまYoutubeで見つけた、この動画がきっかけだったと思う。

もともと自分はSTGが好きで、この動画を見るときも「はぇーこんなおもろいゲームがあんねや」くらいの気持ちで見たと思う。だが、この動画を見た自分は、その熱量に圧倒されることになる。

「バトルガレッガで2000万点」…当時の自分には、この点数がすごいのかどうなのかが分からなかった。だが、目の前で繰り広げられる光景、興奮する実況、そして、すべてが終わった後のプレイヤーの感謝の挨拶…それらすべてを見て、分からないなりに興奮したのは今でも覚えている。配信を見たとき、確かにこう思ったものだ。

「この人みたいに、バトルガレッガを面白くプレイしたい」

自分にとって、バトルガレッガの全一(全国一位)スコアラー「神威」氏との出会いは、それが初めてだった。バトルガレッガがリリースされて25年、今でも真摯にこのゲームに向き合い続けており、今なおスコアを更新し続ける鉄人である。

最近で言えば、ウメハラ氏主催の格闘ゲームイベント「獣道Ⅲ」に、異色のSTGというジャンルで出場。「神威VS神威」という対戦カードを引っ提げ会場を興奮の渦に巻き込んだのが記憶に新しい。

全一スコアラーの神威氏と平凡なプレイヤーである筆者、筆者が一方的に憧れることはあれど、これ以上の接点はないだろうと思っていた。しかしこの度、色々な幸運が重なり、なんと神威氏と「一緒にガレッガについて話をしましょう!」という流れになった。コチラが対談内容のアーカイブである。

非常にためになった対談かつ、氏の話が非常に面白いので一見の価値があるのだが、内容が3時間とかなり長い。そのため今回は、せっかくなのでこの対談内容をまとめたものを記事化して残しておこうと思う。

筆者の印象に残ったシーン、そしてバトルガレッガというゲームを遊んだことのない方も共感していただけるようなシーンに焦点をあててまとめていくので、全容が気になる方はぜひ上のアーカイブを見ていただきたい。

・神威氏が「バトルガレッガ」と出会うまで

■ そもそもゲーセンに通うきっかけは?

筆者「神威さん、今日はよろしくお願いします。今回バトルガレッガについて話していこうと思いますが、せっかくなので、まずは神威さんについて掘り下げていきたく思います。

筆者「まず、『バトルガレッガ』に出会う…というよりそれ以前に、ゲーセンに通い始めたきっかけを教えていただいてもよろしいでしょうか?

神威氏「そうですね…実はいきなりゲーセンに通うようになったわけではないんです。当時すでに我々の世代は、ゲーセンでゲームを遊ぶのではなく、家庭用ゲーム機でゲームを遊ぶのが主流でした。なので、これについては『アーケードゲームに触れた』というのが先ですね。」

神威氏「駄菓子屋だとかファミコンコーナーの一角でアーケードゲームを遊んだのが、私にとってのアーケードゲームとの出会いでした。これらを遊んでいくうちに、『家で遊べないこういうゲームをもっと遊んでみたい!』という気持ちが強くなり、ゲーセンに通うようになったんです。」

(ボーナストラック)神威氏のゲーセン事情

神威氏「当時はゲーセンはいくつもあって、小学校を卒業してから色んなゲーセンに通うようになりました。ただ、あまりに雰囲気が怖いところは避けてましたね。暗いゲーセンとか。それでも治安はいいものとは言えず、当時お気に入りだったマウンテンバイクを盗まれたこともあります(笑)。

筆者「ひゃー、すごい場所だったんだなあ。ちなみに、どういったタイミングでゲーセンに行ってたんですか?」

神威氏「色々なタイミングですね。下校時とか、お使いに行ったときにスーパーの脇にあったゲーセンに遊びに行くとか。帰りが遅くなって親に怒られたことも何度もあります(笑)。

筆者「(笑)どう言い訳されていたんですか?」

神威氏「混んでたから遅れたっていうのはよく使ってました。でも冷静に考えれば、スーパーで1時間も混むなんて現象、あり得ないんですよ。すぐ親にばれました。後は診察に行った帰りにゲーセンに行ったときは『午後の診察が始まるまで待ってた!』って言いましたね。帰ってくりゃいいのに(笑)。

筆者「(爆笑)

■ バトルガレッガと神威氏を引き合わせた 一本のビデオテープ

筆者「そうして神威さんがゲーセンで遊んでいた中で、1996年、ついに『バトルガレッガ』がリリースされるわけです。そもそもこのゲーム、どこで知ったんですか?事前にもう情報をキャッチされていたり、稼働当初から身の回りで話題になっていたんですか?」

神威氏「実はそういう流れではないんですよ!私とバトルガレッガとの出会いのきっかけは、一本のビデオテープでした。

神威氏「当時、私はゲーセンでひたすら『グラディウス3』を遊んでいました。このゲームは年上の方がよく遊ばれており、高校生のお兄さんたちとワイワイ言いながら遊んでいたのを覚えています。そして、その人たちとのつながりの延長で、社会人でありながら『グラディウス3』の攻略をされていたサークルの人たちと仲良くなり、色んなSTGの攻略ビデオをダビングしてもらったんです。『グラディウス3』はもちろん、『グラディウス2』とか『沙羅曼蛇』もありましたね。」

神威氏「そしてその時、サークルの人に『せっかくだから話題になってる最近のSTGの攻略ビデオもあげちゃう』と言われて頂いたビデオが、ゲーメストビデオに収録されていたキャサ夫さん(※)のプレイ動画だったんです。そのビデオの映像が、私が初めて見た『バトルガレッガ』でした。」

(※)キャサ夫氏…バーチャファイターの強豪プレイヤーとして有名。当時バトルガレッガ全一スコアホルダーであり、ゲーメストに攻略記事を掲載されていた。2020年5月にはゲーセンミカド24時間配信で神威氏との新旧全一ガレッガ配信が実現、話題となった。

筆者「映像を見たとき、どう思われました?」

神威氏「『すごい弾の多いゲームだなあ』『何やってるかわからないけど、何でこんな弾をよけられるんだろう』という思いはありました、そして何より、臨場感あふれる演出と、それを支えるきれいでカッコいい音楽に衝撃を受けたことは覚えています。

筆者「それで実際、このゲームをプレイしてみようと思われたと。」

神威氏「おっしゃる通りです。」

■ ガレッガが行きつけのゲーセンにない?!

神威氏「で、実際に『バトルガレッガ』を遊ぼうかなと思ったんですが、実はこのゲーム、通っていたゲーセンに入っていなかったんです。

筆者「え?なかったんですか?!

神威氏「そうなんですよ。ただ、あの時代のゲーセンって、『コミュニケーションノート』というものが置かれていることが多くて。」

筆者「コミュニケーションノート?」

神威氏「ゲーセンを利用するお客さんが、自分の要望や『初めて○○クリアした!』といったようなゲームに対するメッセージなどを残していくために置かれているノートのことで、当時私が通っていたゲーセンにも置かれていました。それはそれは色んな人がひたすら書き綴った膨大な数のノートがあって、27~28冊くらいはあったかなあ。」

筆者「なるほど。」

神威氏「で、そのノートにひたすら常連のお客さんが『ガレッガを入れてくれ』と(笑)。で、その後、元々店長さんが入れる予定だったのか、その要望に応えるためだったのかは分かりませんが、ようやく行きつけのゲーセンに『バトルガレッガ』が導入されるわけです。私の心のふるさとというか、原点というか、そういう場所で遊べるようになったのは非常に大きかったですね。」

・バトルガレッガと向き合い続けた25年間

■ 同じゲームを25年間やることの意味

筆者「その後神威さんは実に25年ともいえる長い歳月を『バトルガレッガ』と向き合い続けるわけですが、この感覚が正直僕には理解できないところがあって、というのも、僕は今年29になったばかりで、同じゲームを25年間やり続けた経験がないんですよ。なので、神威さんにとってこの25年間って、どういうものだったのかなという疑問はありますね」

神威氏「なるほど、わかりました。まず言えるのが、私はこのゲームを続けようと思って続けていなかったんです。

筆者「え?なんですと?」

神威氏「言葉のままです、続けようとして続けていなかった。言い換えれば、生活習慣の一部になっていたんです。学校に行って帰る途中に行きつけのゲーセンに立ち寄り『バトルガレッガ』を遊ぶ、365日の間360日はこんな感じでした。そのままここまで来たので、自分にとってすごい事をしている感覚はなく、もっとフラットなものでしたね。あたりまえのような。」

筆者「途中でおなか一杯になることってなかったんですか?」

神威氏「ええっと…そりゃ25年続けていたので色々はありました。ただ、一回も挫折というか、心が折れてやめたいということはなかったです。これは幸運だったのかなあと。」

■ 「全一」という一つの標

神威氏「当然一つのゲームを長時間遊ぶにあたって、目標は必要でした。当時はゲームセンター向けの情報誌、『ゲーメスト』というものがあったのですが、その雑誌でアーケードゲームの全国ハイスコア集計をしていたんです。各店舗の点数の集計欄と、店舗のトップスコアが集計されたものがずらっと並んでたんですね。『このゲーセン行ってみたいなあ』『この人どんなプレイするんだろうなあ』と思いながらそれを見ていた記憶があります。」

筆者「僕の理解なんですけど、神威さんって『バトルガレッガ』をすぐクリアされて、そのあとものすごい速さで全一スコアを出されてますよね?」

神威氏「そうですね、クリア後1年半かな?」

筆者「これ、僕の勝手な思い込みなんですけど、全一スコアを出した後、『もういいや!満足!』ってはならなかったんですか?仮に僕が同じ状況に置かれたなら、一つの区切りとしてやめてしまいそうなものなんですが。」

神威氏「今振り返ると、そんなことは思ってなかったですね。『結果は求めているんだけど、結果で進退が決まるということはやってない』というのが近いかな?『ハイスコアが出たからやめよう!』とは微塵も思ってませんでした。」

筆者「なるほど、やっていたら全一スコアがでちゃったという感じでしょうか?(※)」

神威氏「いやでも、全一を取るのは大変でしたよ!

(※)「やっていたら全一スコアがでちゃった」…今回自分で編集していた際、前後の文脈を見て「何言ってるんだコイツ」と思った箇所。本来ならバッサリカットする予定だったのだが、これを抜くと前後の文脈がつながらなくなるので、恥をしのんでそのまま掲載した。

■ バトルガレッガ全一争い

神威氏「当時、『バトルガレッガ』の全一と目されていたプレイヤーは、私含めて3人でした。ただちょっと、私はこの中で後発組だったので、追い付かなくちゃいけないなという思いはありました。」

神威氏「更に、残り2人のプレイヤーは、千葉の方で活躍していたこともあり、お互いに情報共有をしていたんじゃないかなと思います。私はそれらを得ることが出来ないという状況でした。ネットがない時代の話なので、情報というのはものすごく貴重だったんですね。さすがに『ゲーメスト』上の情報だけで彼らのプレイは研究できませんし。更にこの頃は、情報をお互い秘匿するのが当たり前の時代だったんです。

筆者「料理人が秘伝のレシピを隠し続けるみたいな感じでしょうか。」

神威氏「そうですね、ネタが割れるということは、自分のスコアが抜かれるリスクを負うというわけですから。

筆者「となると、その情報が共有できない分、神威さんは相当不利な状況だったというわけですが、どうやって彼らと戦っていたんですか?」

神威氏「そうだなあ。自分の師匠と言える人やバイブルと呼ばれるようなものもなかったので、そこは一人で開拓していきました。後は自分のパターンをアップデートするために、トッププレイヤーの情報を調べられるのであれば調べに行きましたし、自分で能動的に動いて活動していましたね。

筆者「もう己で自分を高めていくしかなかったと。」

神威氏「そうです。がむしゃらに同じことをやってましたけど、楽しかったですね。楽しくないって思うことがなくて、よく人に『何で同じことをずっとやれるの?』って言われることがありましたけど、私はもともと『同じことをずっとやり続ける』ということが得意なんですね。むしろ自分には合っていました。」

筆者「楽しんでやれたというのが、一番の原動力だったんですね。」

神威氏「その通りです!」

■ 他のゲームはやらなかったの?

筆者「上の話に関連しますけど、ずっと『バトルガレッガ』一筋でやられていた間、他のSTGも名作が出るわけですよね。『怒首領蜂』とか。そういったものはプレイされなかったんですか?」

神威氏「数えるほどしかやってないですねえ…『Gダライアス』とか『ライデンファイターズJET』『サイヴァリア』くらいかな?これらのゲームも『全一をとる!』という思いでやってきたんですが、なかなか『バトルガレッガ』と両立できなくて」

筆者「一つの物事にどっしり構えることが出来る反面、複数のゲームを同時に遊ぶということはできなかったんですね。」

神威氏「それに近いです。確かに私は『バーチャファイター』と『バトルガレッガ』を両立して遊んでいたことはありますけど、全然温度が違うんですね。なんというか、他のゲームは燃え上がってもすぐ消えちゃうんです。『ライデンファイターズJET』なんかも一時期は『バトルガレッガ』そっちのけで遊んでいたんですが、気がついたら『バトルガレッガ』に戻ってきていました。ガレッガは自分の中で火がメラメラと静かに燃えているんですよ。それが消えることはないんです。

■ 結局は出会いですべてが変わる

筆者「私なんかだと、MTG(マジック・ザ・ギャザリング)というカードゲームが根っこにありまして、その脇でチョロチョロほかのゲームを遊ぶこともあるんですが、結局MTGに帰ってくることが多いんですよね。そりゃトッププレイヤーの皆様ほど熱意を持ってやっているかと言われると怪しいですが、それでも長いスパンでこの趣味と付き合っています。結局何を土台にするかっていうのは大切ですよね。

神威氏「そうですね。ファーストコンタクトってかなり大切で、『そこに○○というゲームがあったから』という理由で全一になられていた方、結構いらっしゃいますよ。例えばですが、『ケツイ~絆地獄たち~』の全一の方なんかは、『たまたまゲーセンで入荷したゲームがケツイだった』という理由でゲームをプレイし始め、今では全一も取られています。『これがもし『バトルガレッガ』だったら、神威さんとガチで競い合ってたかもしれないね!』とも話されてました(笑)。そういうなんというか、環境の良さやタイミングの良さというか、偶然の連続があって活躍されているプレイヤーがほとんどだと思います。」

■ コミュニティは宝

筆者「神威さんの話を伺っていると、本当に自身の属するコミュニティって大切なんだなあって思いまして。これ、恐ろしい想像なんですけど、もし当時、STGに理解があるコミュニティがなかったら、こんなに長い間『バトルガレッガ』はされていないですか?

神威氏「間違いなくしていないですね。結局人は何をするにしても、成し遂げたことに共感してくれる人、評価してくれる人が必要なんだなと思って。

筆者「この話、あらゆることに共通するとは思うのですが、極論を言ってしまえば、特にSTGは自己満足の世界じゃないですか。スコアも攻略状況も自分で完結しちゃう。だからこそ自分以外にも評価してくれる人が必要ということですよね。」

神威氏「そうですね。だからコミュニティってものすごく重要で、でも自分で環境は選ぶことはできなくて、これはもう運ですね。でも一方で、普段やっている自分の行動は確実に人を呼び寄せます。類は友を呼ぶではないんですけれども、今になって思えば、自分が真剣に取り組んでいた活動が、コミュニティを引き寄せてきたのかもなあとも思えますね。」

筆者「神威さんのそのひたむきな姿勢が、コミュニティを形成していったのかもしれませんね」

神威氏「もちろん自分から飛び込んでいくこともありましたよ!というか、気が進まなくても知人に強引にコミュニティに放り込まれることもありました。それでも行ってみれば魅力的なコミュニティだったりして、知人に『いいコミュニティだっただろお?』って言われたこともありました(笑)。」

(ボーナストラック) STGのコミュニティ今昔

神威氏「私自身どちらかというと、年上のコミュニティに属していたかなあと思います。というのも、当時中学生だったころ、同級生の中で一番人気だったのは間違いなく対戦格闘ゲームで、STGを遊ぶコミュニティは年上の方が属しているものしかなかったんです。だからそんな中でかわいがってもらったのかなあとも思っています。」

筆者「あ、これ僕もほとんど同じ状況で、というのも今我々世代でSTGというと、間違いなく『Apex Legends』に代表されるようなFPSになってしまうんですね。だから同世代やちょっと下の世代には間違いなく『昔はね、STGというとね、もとは飛行機みたいなのが弾撃ってね、画面がスクロールしてね…』という説明が入ります。そういった説明をしても、「ほーん」って返されることがほとんどです。だから僕も「誰か俺がやってることをわかってくれ!!」という思いに飢えてて、理解を示してもらうコミュニティを探す必要があったんです。幸い今ではそういったコミュニティにも属していますが、やっぱり年上の方が多いコミュニティですね。」

・バトルガレッガの魅力

■ なんもかもカッコいい、臨場感あふれるゲーム

筆者「さて、『バトルガレッガ』というゲームの魅力ですが、こんなもの1日で語りつくすのが無理だと思います。」

神威氏「うーん、細かい事を挙げだすとキリがないからなあ。それこそ話したいことが延々と出てきますよね。」

筆者「私はバトルガレッガというゲームだと、やっぱりBGMが好きで、とにかくボス曲『Stab and Stomp !』が好きなんですよね!初めて聞いたとき本当に衝撃を受けました。」

神威氏「私が『バトルガレッガ』というゲームを続けられたのは、この曲があったからこそといっても過言ではないですね!」

筆者「そしてこの曲と言えば、やはり5面ボス、そして7面中ボスの『ブラックハート』だと思います。僕がガレッガを遊ぼうと思ったのも、『こいつと戦いたい!』という思いがあったからですね。本当に演出含めてものすごいカッコいいんですよ!中ボスの空中空母を倒したら、その下から『ブラックハート、出ます!』と言わんばかりに小型機を引き連れて出撃。本当にシビレる演出なんです!」

筆者「演出と言えば細かいところが本当にキッチリできていて、例えば砲塔が動くアニメーション一つとっても、ものすごいリアリティを持って動きますし、敵を倒して発生する爆発もいきなり爆発するものや、くすぶって爆発するものもありますし、その爆風もランダムで変わるし…いやーカッコいい!!最高のゲームです!!

神威氏「細かいなあ(笑)。確かに、プラモデルとかお好きな方は、細かい可動域の動きってくすぐられることが多いと思います。あと、見て思うのですが、本当にリアリティにこだわってるなあとは思いますよね。だから弾も『針弾』と呼ばれる現実味を帯びているような弾なんですよ。見づらくて苦労するんですけど(笑)。」

筆者「そうなんですよお(笑)。でも当時のSTGというと、蛍光色のエネルギー弾みたいなものが主流でしたよね。そんな中であえてこの弾を使った『バトルガレッガ』。リアリティにこだわったライジングの姿勢がうかがえます。」

■ やったことがすぐ帰ってくるゲーム

筆者「神威さんの考えられる、このゲームの魅力って何でしょうか?」

神威氏「自分で考えてやったことのフィードバックが、すぐに帰ってくるということだと思います。なので、自分の成長が実感できるゲームだと思いますね。」

筆者「成長過程がすぐ現れるということですか?」

神威氏「うーん、必ずしもそうではないんというのが面白いところなんですよ。ゲームには2通りあって、『攻略をする際、正解のルートをたどって行けば必ずクリアできる』というゲームと、『正解のルートをたどって行っても必ずしもクリアできない』というゲームがあるんですよ。で、『バトルガレッガ』は後者なんです。どうしてもランダム要素が絡んでしまうんですね。」

神威氏「で、このことを踏まえたうえで先ほどの話に戻るんですけど、例えば一つ一つの状況に身を置いていく場合、『どういう風に切り抜けるか』『どういう風に準備するか』といった思考をどんどん切り替えていくんですね。で、うまくいかなかったらまた改善するわけです。そうやって思考を育てていき、考え方が固まってくると、『バトルガレッガ』というゲームは見やすくなるんじゃないかと思います。そうだなあ、なんといえばいいんだろう。脳みそを取り換えるって言った方がいいのかなあ?

■ 「ガレッガ脳」の育て方

筆者「…?『脳みそを取り換える』…?

神威氏「例えば私が25歳だとしましょう。そうしたら、私が25年間生きてきた脳みそではなくて、別の領域を使って『バトルガレッガ』を遊ぶという…ちょっと変な話かもしれませんが。」

神威氏「もちろん、『バトルガレッガ』以外の経験をもとにした日常の思考回路でも、『バトルガレッガ』と向き合うことは可能です。でもそれでうまくいっているときって、そもそも『バトルガレッガ』の機嫌がいい時なんですね。だからとっさのアドリブが効かない。『バトルガレッガ』に特化した脳領域を育てていって、そちらの思考回路で遊んでいる人は、もう何をやってもうまく行くんです。

神威氏「だから、『〇面がクリアできない!』『スコアが伸びない!』って悩んでいる人は、いわゆる『自分脳』で遊んでいるわけです。これを打破するためには、思考回路を切り替えて『ガレッガ脳』を育てていかないといけないんです。もちろんかなり難しい話だと思うんですけど、その思考回路を一気に変える最適な方法もあって、どうやるかというと、もう『ガレッガ脳』になっている人の話を聞いて、そのまんまやることなんです。

筆者「なるほど!」

神威氏「例えが悪いですけど、太っている人がやせている人の腸内細菌を取り入れたら、一気にやせることがあるらしいということを聞いて、それに近いのかなあと。」

筆者「ガレッガ善玉菌を入れると(笑)

神威氏「そうですね(笑)。そうやってできることが増えていくと、『次はこれやろう』『アレをやってみよう』という風にどんどんとやれることが増えていって、その中毒性が『バトルガレッガ』の魅力ですね。」

筆者「わかります。越えられなかったはずのものが越えられた。その瞬間、次はアレに挑戦してみよう、これをトライしてみよう。そうやって色々やれて行くのが面白いんですよね。」

神威氏「だからスコアが出ても続けちゃうんですよ!『まだアレやってなかったなあ』とかあるわけなんです。目標スコアが出ても、やってなかったことを取り入れることで、またスコアが伸びる。もう延々と遊び続けられるんですね!」

(ボーナストラック) バトルガレッガ=有機体

神威氏「プレイヤーの心の持ち方で、このゲームって変わってくるんですね。私は『バトルガレッガ』は意識を持った生命体だと思っておりまして、昨日と今日で同じ顔を見せることは全くないと思っています。だから私、昨年『獣道Ⅲ』に出場させていただいた際も、始まる前に筐体をポンポンと叩きまして、『今日は頼むぞ!』と。」

筆者「となると、神威さんにとって『バトルガレッガ』は、攻略対象ではなくて、一種の相棒に近い何かだと。」

神威氏「そうですそうです!相棒でもあるし、私自身でもあるんですよ。鏡写しというか、ガレッガが私で、私がガレッガみたいな…わかりますか?」

筆者「う~ん、分からないです。甘えてしまえばスコアは伸びないし、厳しくいけばちゃんとした納得のいったスコアが出る。そういう風な話として今の表現は受け止めていますが…あっていますか?」

神威氏「そうとも言えますね。ただやっぱりニュアンスが少し違って、私は『バトルガレッガ』を遊ぶときにものすごい集中するのですが、その際、私が遊ぶ自機は、もう私の手足の延長線上にあるというような感覚なんですね。だから右手を伸ばす、コップを掴むといった感じで画面の中の自機が動かせるというか…なんというか、『マトリックス』に近いものがありますね。あの映画って、意識の集合体みたいなものが、画面の中にガッと入っていって、そして画面の中のものが自由に動かせるようになるじゃないですか。そんな感覚に近いです。だから『私はガレッガであり、ガレッガは私である』という感じですね。」

・「スコアラー」の考え方

■ ひたすら楽してSTG

筆者「さて、いよいよディープな話というか…いわゆるスコアを稼ぐスコアラーとしての神威さんの考えをお聞かせいただけられればと思います。まず、スコアを稼ぐ上で重要なことはございますか?」

神威氏「いいですよ!まず、意外かもしれませんが、スコアを稼ぐというのは何も難しいことがスタートラインではありません。どういうことかというと、ローリスクハイリターンのものを考えるというところがスタートラインなんですね。楽な仕事で大きく儲けられるのと、神経を擦り減らしながらちょっとしか儲からない場合、どっちを取るかと言われれば前者だと思います。つまり、簡単な稼ぎから始めるわけなんです。そうすると、楽して高い点数が得られるわけです。」

神威氏「で、そうやって下地ができ始めてから、初めてもっと難しい稼ぎに手を出して行くわけです。平均的にスコアが伸びて言っているわけですから、そうやって自分のスコアを伸ばしていくわけですね。だから、スコアラーがSTGを初めて遊ぶ時って、もうこういうことしか考えていないわけです。『楽してクリアしよう』と。」

筆者「へぇー、ちょっと意外です。まずは簡単なことを詰めていくのが大切なんですね。」

神威氏「そうですね。ちなみにスコアの話とは少しずれますが、STGを遊ぶ一番楽な方法って、弾よけをしないことなんです。つまり、敵をすぐ叩いて弾を撃たせなければいいんです。あらかじめ敵の出る位置を把握しておいて、一気に殲滅する感じですかね。これができないと、画面上の弾をヒーヒー言いながらよけざるを得ないこれだとSTGというゲームにアレルギーが出ちゃうんです。うまい人は逆に考えて、どうやって弾を撃たせないということを考えます。そうすると弾よけをしなくて済むようになるので、その分ほかの事にリソースを割くことができるんです。これが『楽』の真髄ですね。」

筆者「楽をすることは悪いことではないんですね。」

(ボーナストラック)低ランク≠楽

筆者「そういえば楽…というかいわゆる、ゲーム内の難易度を低いままに保って遊ぶ低ランクプレイだと、ぴらきちさん(※)が有名じゃないですか。初めて彼の『グラディウス4』や『バトルガレッガ』のプレイを見たとき、失礼かもしれませんが『この人何やってんだ』って思ったのは今でも覚えています。グラ4だとひたすらカプセルは回すし、ガレッガだと序盤は弾は撃たないし…」

神威氏「あー…ぴらきちさんはあれ、楽してないですよ。ああいう縛りプレイです。彼のプレイの根幹には『どれだけランクを下げてゲームを攻略してやるか』という思想があって、だから血を吐きながらランクの下がる行動をとり続けているんです。一部ネタプレイみたいなのも挟みますしね。だから彼はすごいんです。」

筆者「なるほど、やっぱりすごい人なんだなあ…」

神威氏「初心者がやるプレイじゃないですね(笑)。もちろん参考になるところはあると思いますよ!」

(※)ぴらきち氏…「グラディウス4」の低ランクプレイでおなじみのシューター。氏の徹底したランク管理は素人目には意味不明であり、大きな反響を呼んだ。ゲーセンミカドでの配信時、実況の池田氏に「俺ゲームって遊んでなかったんだなあ…」と言わせたシーンが筆者にとって印象的。

■ じこはおこるさ だったらどうする?

筆者「で、次は難しいことを詰めていくわけですが、これはもう、一つ一つ丁寧につぶしていくわけですよね。」

神威氏「そうです。『バトルガレッガ』で言うところの難しい所って、ランダム要素が絡むところなんですね。だから、『ここでもしこういう行動をとられたら、ここはこうしよう』という引き出しがたくさんある人が、このゲームがうまい人と言えますね。

筆者「…それって、対策が取れるようなものなんですか?」

神威氏「はい。少なくとも私は全部取っています。だから、プレイの内容が安定するんです。ただまあ、それでも『それって聞いてないよ!』というような貧乏くじを引かされてしまうこともありますが(笑)。」

神威氏「ガレッガの運要素って、運がいいと楽だし、運が悪いと難しいという状況が主なんですが、その中でも、運が悪いと切り抜けるのが無理という状況があるんですね。いわゆる『事故』です。で、これは100%避けなくちゃいけない。

筆者「でも、事故は事故ですよね。それって防ぎようがあるんですか?」

神威氏「簡単です。自分がその状況に至ったまでの行動を振り返ればいいんです。例えば日常生活でも、見通しの悪い場所で道で車に轢かれてしまうということは起こり得ますよね。起きてしまえばそれは事故なんですが、じゃあその事故が起こる確率ってコントロール不能かというとそうではなくて、事前に限りなく小さくできるんですよ。ちゃんと横断前に右左を見るとか、車道に飛び出さないとか。それと同じです。」

神威氏「『バトルガレッガ』で言うと、意図せずものすごい数の弾に撃たれて死んだ。こういうことってよくあると思うんです。じゃあ、これってなんで起きたのか、さかのぼって確認していくわけですよ。10秒戻してみてどうだったか、見つからなければ20秒、30秒とどんどんさかのぼっていくわけです。で、実は30秒前の何気ない行動が原因で、そういう状況が起きていたということがよくあるんですよ。なので、ここから逆算して修正していくわけです。」

筆者「この話、MTGにも通づる話だとおもいます。よく最後の方のつばぜり合いになったとき、相手に対処不能なカードを叩きつけられて『お、おもんねぇ~!』って言うことがよくあるんです。でもそれって、さかのぼってみると、実は5ターン前に撃った何気ない除去がきっかけで引き起こされたって言うことがよくあるんですね。行動を振り返って引き出しを増やすというのは、分野を問わず大切な話なんだと思います。」

■ その人に合わせた攻略法を

神威氏「人間って、ロジカルに考える部分と、そうでない部分との2面があるんですね。で、そこの割合の大きさというか、得手不得手というのは人それぞれなんです。なので、その人その人にあったパターンを構築していけばいいんですね。

神威氏「例えば心の強い人なら『何が来ても大丈夫じゃ!』という心意気でいけるところを、テンパっちゃう人なんかは『ここでどうしてもテンパってしまうから、出来るだけ落ち着いてプレイできる状況を作っておこう』という風にやってもいいわけです。こうやって同じゲームでも違う攻略法が生まれるのが面白いところで、『バトルガレッガ』はそれが特に顕著だと思います。」

(ボーナストラック)うまい人のプレイは簡単に見える でも実は…?

神威氏「実は私、プレイしているときに『事故を起こさせないセンサー』というものをフルに稼働させて遊んでいるんですね。ただこれって、目に見えないものであるので、誰も分からないわけです。で、何も知らない人が見ると、画面に敵が出てこないので、『何だこのゲーム、簡単そうじゃん!』って思うわけですよ。で、単純にまねてやってみると弾は多いわ敵は多いわでエライ目に合うんです(笑)。背後のメカニズムを知らないからそうなっちゃうんです。」

筆者「STGってこういうこと多いですよね。例えば『雷電』でもうまい人って画面に弾が出ないじゃないですか。いざ自分が遊ぶとなると、逃した戦車に背後から撃たれて死ぬという(笑)。これを防ぐためには『事前に戦車が出てくる場所を把握して速攻で叩く』というプロセスが必要なわけですが、うまい人の画面からの情報だとそれが伝わらないですからね。だって、画面に戦車がいないんだから(笑)。

・終わりに

■ 「継続は力なり」

筆者「本日は神威さん、お忙しい所、本当にありがとうございました。神威さんの熱意があるお話が聞けて、本当に楽しかったです!」

神威氏「ありがとうございました!私は対談の締めとして、この言葉を贈りたいと思います。」

継続は力なり
更なる継続は宝なり
永遠の継続は歴史なり

神威氏「これは本当にある言葉で、40年自分の仕事を続けてきた私の母が言っていた言葉です。これを意識してガレッガを遊んでいたわけではないんですが、一つのことに向き合い続けることの意味、何事も続けていけば、継続した者しか眺めない場所からの風景が望めるという真髄を、『バトルガレッガ』に改めて教えられました。今日は本当にありがとうございました!」

・対談を終えて

いかがだっただろうか。これで半分しかまとめていないので恐ろしい話である。というのも、後半はフリートークというか、まとまらない話をしていたため、まとめきれなかった。本当に申し訳ない。

フリートーク含めて全容が気になった方は、以下のアーカイブを見ていただきたい。

「継続は力なり」…対談の締めくくりであった言葉だが、思えば筆者がこういう縁に巡り合えたのも、がむしゃらに情報を発信し続け、自分なりにゲームを愛していたからなのかとも思う。これからも神威氏に限らず、色々な方とつながっていけられればと思う。

改めて、このような対談を設けてくださった神威氏に感謝の気持ちを述べつつ、この記事の締めの言葉としたい。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。