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ガバ部40ドル統率者通信 ②ピレアス号の艦長、シオーナ

1.はじめに

カードゲーマーなら、誰しもが一生のうちに夢見るものがある。

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そう、世界最強の生物である。

ここでいう世界最強の生物とは「パワータフネスがゴリゴリに大きい生き物」「馬鹿みたいに大量に能力を持っている生き物」のことである。皆様の中でも子供の頃、あるいは初心者の頃、パックからアホみたいにパワーがどでかいカードを手に入れて興奮したことがある人もいるだろう。

この世界最強の生物を用いるために工夫を重ねるのもMTGの醍醐味である。

上の《引き裂かれし永劫、エムラクール》のような、元々が規格外の生き物をどうやってゲームで使うか、あるいは体格に恵まれない女子供、老人のようなパワーを持つクリーチャーをいかにしてバックアップし鍛え上げるか、やり方はいくらでも考えられる。

そして、ガバ部の中にも、そんな世界最強の生物を夢見て止まない大馬鹿野郎が現れた。

彼がパートナーに選んだクリーチャーはこちらだ。

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ピレアス号の艦長、シオーナ》(画像クリックで能力の詳細が出ます)

デッキリストは下のリンクから参照願いたい(MTGGoldfishのページへ飛びます)

さて、私がこのデッキを回してもいいのだが、上っ面だけかじって適当なことを書くと、最悪「この阿呆がッ!」と壁に叩きつけられる可能性もある。せっかくなので、このデッキを作って愛用している本人に話を伺うのが一番早いだろう。

というわけで、このデッキを組んだ「マッツ」氏にインタビューをしようと思う。彼は常にMTGで上へ上へと向かっていくタフな精神の持ち主であり、活躍の場はリミテッドならばドラフトやシールド、構築はスタンダードからレガシーまで、ありとあらゆる格闘技…もといフォーマットのノウハウを貪欲に吸収する、まさに名実ともに「世界最強の生物」を目指す一人のストイックな男である。

正直この「ガバ部」というとんでもない名前のコミュニティに参加してもらっているのが申し訳ないくらいにMTGがうまい。

それでは、さっそくインタビュー開始だ!

2.なぜこの統率者を選んだんですか?

僕はね、オーラって最強の「格闘技」だと思うんですよ。

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そもそも、格闘技とは何でしょうか?かの格闘漫画家の板垣先生は、自著の中で「非力なものが強大な敵に対し抵抗するための技術」であると書かれています。

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オーラについても同じです。非力な1/1クリーチャーに多数のオーラを貼り付けることで強力なクリーチャーを作り、あっという間に相手のライフを削り取る、いわゆる「オーラビートダウン」という戦法は、様々なフォーマットで結果を残しています。

今回、私は統率者戦というなんでもありの地下闘技場で、この戦法が通じるかを確かめたかったのです。

すいません、前置きが長くなりました。本題に入りましょう。

まず、オーラを有効活用できる統率者の中で、《ピレアス号の艦長、シオーナ》を選んだのは、彼女が怪しい動きが出来るからです。

この統率者、攻め攻めのカードでありながら、以前がんきゅーさんが言っていた「固有技」を持っているのです。こちらのカードを見てください。

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《信仰の守り》
1WW
エンチャント ― - オーラ
エンチャント(クリーチャー)エンチャントされているクリーチャーは破壊不能を持つ。クリーチャーが1体戦場に出るたび、あなたは信仰の守りをそのクリーチャーにつけてもよい。

一見何ともないオーラですが、今回のデッキでは以下の動きが可能となります。

1.適当なカードに《信仰の守り》をエンチャント
2.ピレアス号の艦長、シオーナが誘発、1/1人間トークンが出てくる
3.《信仰の守り》が誘発、1/1人間トークンに《信仰の守り》をエンチャント
4.以下2~3を繰り返すと無限にトークンが出てくる。

幸い、ピレアス号の艦長、シオーナも《信仰の守り》もそこまで高い値段ではなく、40ドル以内で収まると思ったので、今回は彼女を使用し、オーラが最強の格闘技であるという私の理論を証明しようとデッキを組みました。

今の私なら《法務官の声、アトラクサ》にだって勝てる。

3.構築で注意した点はありますか?

このデッキで重要なことは、上に挙げたコンボを抜きにして「いかにして非力なクリーチャーにオーラを貼り付けて強力なクリーチャーを作るか」ということです。今回、私は以下の点に注意して構築をしました。

・いかに効率よくエンチャントを手札に加えるか
・いかに効率よくエンチャントを貼るか

まず1点目ですが、緑白という色はドローが苦手な色として有名です。ですが、オーラを使うなら話が別です。

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皆様は、「エンチャントレス」というカード群をご存じでしょうか?「エンチャント呪文を唱えるたび、カードを引ける」という能力を持った一連のカードです。今回は、予算の許す限りこのようなカードを多数採用し、絶え間なくエンチャントを手札に加える動きを可能にしました。

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なお、ピレアス号の艦長、シオーナも場に出たとき、ライブラリーの上から7枚見て、オーラを手札に加えることが出来ます。これらの能力を駆使し、できるだけオーラを切らさないようにしたいですね。

そして2点目、当たり前ですが、1ターンに貼れるエンチャントの数が増やせられれば、それだけ一度にクリーチャーを強化することが出来ます。我々はできるだけ短時間で最強のクリーチャーを作り上げる必要があるのです。

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そういうわけで、オーラのコストを減らすカードも一定数採用しました。これならばオーラを効率的に張り付けることが可能でしょう。

4.このデッキの魅力を教えてください。

最初に述べた通り、オーラはMTGにおける最強の格闘技です。

そして、統率者戦という膨大なカードプールを擁するフォーマットであるならば、使えるオーラの選択肢も多岐にわたります。

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それこそ過去に猛威を振るったエンチャントから、マイナーながらもなかなか強力なエンチャントまで幅広く用いることが出来ます。

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また、色々探してみると、オーラを持っていることをうまく利用し、優位にゲームを進められるカードも存在します。自分の有利な状況を作り出すことも立派な格闘技であり、かの柔術家も、ジャングルジムや様々な環境を活かし、自分の実力以上の敵を屠っています。

自分のクリーチャーを世界最強に仕上げることが出来る、そしてそのうえで、自分の環境を活かして相手に優位に立つことが出来る。この2点に魅力を感じた方がいらっしゃったら、ぜひ使ってほしいデッキです。

5.おわりに

氏はまたこう続ける。

「実はですね、この間ガバ部のメンバーで40ドル統率者戦でこのデッキを使ったんですが、その際に無限コンボが完成して、無数の1/1トークンを呼び出すことが出来たんです。」

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「ただね、速攻を持たせる手段がなくてですね、相手に《破滅の根本原理》を撃ち込まれましてね。そのまま負けちゃいました。いやー悔しいなあ。」

氏の話を聞きながら、筆者の脳裏にはかの地上最強の生物が浮かんでいた。

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彼も地下闘技場で暴れまわった挙句、最終的に麻酔銃を撃ち込まれて昏倒。お縄になったのではなかったか。やはりMTGにおいても世界最強の生物は飛び道具には勝てないのか。

それでもこのエピソードを語る氏の声は明るい。次はいかにしてこの「飛び道具」を克服するか、色々と考えているのだろう。次の機会があれば、こういう搦め手に対しても対抗できるデッキが完成しているに違いない。

かの偉大なる中国拳法家の言葉を借りると、「技術こそが闘争の構成物質そのもの」。これからも高まっていくであろうマッツ氏の技術を期待して、この記事の締めくくりとしたい。

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