見出し画像

第64回おうちでレガシー カバレージ Round2 夜光(黒単) VS スン(スニーク・ショー)

《偉大なる統一者、アトラクサ》と言うカードがある。飛行絆魂警戒接死7/7と言う破格のスペックに加え、細かい説明を省くと、場に出た時、一度に手札を補充できるクリーチャーである。

唯一のネックはそのマナコスト。赤以外のマナシンボルを含む7マナはなかなかシビアなものがあるのだが、そこはインチキが出来るのがmtg。様々な踏み倒し手段が存在する。

ことレガシーにおいては、ありとあらゆる手段でこのマナコストを踏み倒し運用するデッキが横行しており、まさに大アトラクサ時代と言っても過言ではない。

「スン」の持ち込んだデッキ「スニーク・ショー」は、そんなデッキの筆頭である。《実物定時教育》《騙し討ち》で高いマナ域のクリーチャーを叩きつけて勝利するデッキである。

このスニーク・ショー、レガシー黎明期から続く由緒正しいアーキタイプなのだが、天敵のURデルバーが跋扈した挙句、更に《紅蓮破》がメインボードに積まれるようになった結果、廃れてしまったアーキタイプである。そんなアーキタイプが一気にスターダムに躍り出ると言うのも、面白い話だろう。

一方で、このアトラクサ環境を逆手に取るプレイヤーもいる。「黒単」を持ち込んだ「夜光」もその1人だ。

往時は「1人去る時」とまで揶揄された黒だが、近年は黒のクリーチャーのスペックがメキメキ向上しており、その波に乗って隆盛してきている。《暗黒の儀式》を絡めて早期に着地する《黙示録、シェオルドレッド》は驚異の一言だろう。

一見すると、このデッキがアトラクサ環境を逆手に取ったデッキとは思えないかもしれない。しかし、この試合を見た人間は納得するだろう。この黒単こそ、アトラクサ環境を生き抜く一つの答えなのかもしれないと。

■Game 1

《思案》で手札を整えていくスンに対し、夜光は想起コストで《悲嘆》をキャスト。スンの手札を確認していく。

公開された手札は《実物提示教育》《全知》《残虐の執政官》《渦まく知識》《思案》《Tropical Island》。この時点でスンのデッキを理解した夜光は、《実物提示教育》を捨てさせて大幅な速度ダウンを狙う。

更に、生贄に捧げられる《悲嘆》に《マラキールの再誕》をプレイ。再度盤面に戻し、今度は《残虐の執政官》を捨てさせる。

コンボパーツを捨てられながらも《思案》を連打して勝機を伺うスン。しかし、続いて夜光の《トーラックへの賛歌》が突き刺さる。捨てられたスンのカードはよりによってコンボパーツの《全知》《偉大なる統一者、アトラクサ》。

スンの顔が歪む。何せスニーク・ショーは《実物提示教育》や《騙し討ち》でファッティを叩きつけるコンボデッキであるため、手札にコンボパーツが2枚揃って初めて動き出すことができる。こんなに手札からカードを捨てられると、動けるものも動けないのだ。

さて、度重なる夜光の干渉により、すっかり動きが途絶えてしまったスン。こうなると夜光のペースであり、あとは盤面に定着した《悲嘆》で殴れば勝ちとなるだろう。普通は。

だが、このゲームは違った。夜光はここで1マナ払うと、このアトラクサひしめくコンボ環境に対するソリューションを提示する。

彼の提示したソリューション、それは…《再活性》。マナコスト分のライフロスと引き換えに、墓地からクリーチャーを釣り上げられるソーサリーである。

「《偉大なる統一者、アトラクサ》をはじめとした大型クリーチャーが環境にのさばるなら、それを手札から捨てて逆手に使ってやればいい。」

これこそ、夜光の考えた、黒単がアトラクサ環境を生き抜く方法である。

夜光が指定した《再活性》の対象は、スンの墓地に捨てられた《残虐の執政官》。オーナーは自分であるにもかかわらず、容赦なくライフと手札を奪い去る無慈悲な執政官を前に、スンは盤面を畳んだ。

夜光1ースン0

■Game 2

続くゲームも、夜光の《思考囲い》から幕を開ける。スンの手札は《引き裂かれし永劫、エムラクール》《騙し討ち》《実物提示教育》《睡蓮の花びら》《Volcanic Island》《汚染された三角州》。夜光は《実物提示教育》をディスカードさせ、ギリギリのラインでコンボを防ぐ。

更に、続くターンで夜光は更に《思考囲い》。新たにスンが引いてきたカードは《目くらまし》。夜光は《騙し討ち》を抜き、徹底的にコンボを阻害していく。

1ゲーム目同様、動きを制限されるスン。しかし、ここで思いもよらないことが起こる。ターンを貰い、祈りながら引いたカードは…なんと《実物提示教育》!すぐさまキャストし、手札に残っていた《引き裂かれし永劫、エムラクール》を盤面へ送り込む。

対する夜光が《実物提示教育》から出したカードは《ダウスィーの虚空歩き》。墓地を完封するカードだが、少なくとも自分の《引き裂かれし永劫、エムラクール》を阻害するカードではないだろう。

このままターンが返ってくれば勝てる!スンはそう念じ、ターンを夜光へ返す。


先も少し触れたが、今現在、レガシーは「いかにして《偉大なる統一者、アトラクサ》に代表される大型クリーチャーを、少ないコストで盤面へ送り込むか」ということに腐心したデッキが多い。

墓地から釣り上げるリアニメイト、《自然の秩序》によりライブラリーから盤面へ持ってくるプロバントなど…そして、スンが使うスニーク・ショーも、その中に含まれている。

そうしたデッキを痛烈に意識した黒単が、《実物提示教育》から飛び出した《引き裂かれし永劫、エムラクール》への対応を怠っていることがあるだろうか?

結論から言おう。夜光はキッチリと、その対策も練っていた。そして既に、この段階で、その対策は手札にそろっていたのだ。


夜光はターンを貰うと、《シェオルドレッドの勅令》をプレイ。スンを対象とし、《引き裂かれし永劫、エムラクール》を生贄に捧げさせる。

せっかく着地した大型クリーチャーを生贄に捧げられてしまったスン。渋々墓地へ送ろうとするが、夜光の盤面を見ると、そこには先ほど出ていた《ダウスィーの虚空歩き》が。改めて虚空カウンターを置きつつ追放領域に置いたところで、スンは何か悪寒のような違和感を感じる。

この違和感は一体何なのか。それを確かめるべく、《ダウスィーの虚空歩き》のテキストを確認したスンは、大きな悲鳴を上げた。

そこには、こう書かれていたからだ。

「T,ダウスィーの虚空歩きを生け贄に捧げる:対戦相手がオーナーで虚空カウンターが置かれていて追放されているカード1枚を選ぶ。このターン、あなたはそれをマナ・コストを支払うことなくプレイしてもよい。」

夜光はそのまま《ダウスィーの虚空歩き》の起動型能力を起動。たった0マナで、先ほど生贄に捧げさせた《引き裂かれし永劫、エムラクール》を、追放領域から自分の盤面へと召喚させる。

何もかも奪われたスンはここで投了。勝者夜光。メタゲームを読み切り、見事ストレートでマッチを制することとなった。

夜光2ースン0

■デッキリスト

■対戦動画


よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。