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マッサンの統率者構築記 ②嵐呼びのカラマックス

1.はじめに

「おかわりがほしい」

美味い飯を食った時、あるいは腹が猛烈に減った時、人間誰しもこう思うものである。目の前のご飯がもう一品出てきてくれないかなあと、最近筆者も夕飯を食べながらぼんやりと考えている。

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一度使ったものをもう一回味わうこの「おかわり」、MTGにおいても大人気である。一回使ったインスタントやソーサリーを再利用できる《瞬唱の魔導士》や《ヴリンの神童、ジェイス》、《ゴブリンの闇住まい》などに代表されるように、呪文のおかわりは人気が高く、かつ強力であることは歴史が証明している。

だが、我々は瞬唱を唱えてニヤニヤしている傍ら、同時にこうも思うわけである。「タダでおかわりを食わせろ」と。つまり、「ノーコストで呪文を倍にさせろ」という話である。パッと聞く限りでは強欲の極みだが、そこはMTG。ちゃんとその欲望をかなえるカードも存在する。

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タダで呪文を倍にすると聞いて真っ先に思い浮かぶのが「呪文のコピー」である。例えば、出来事呪文をノーコストでコピーする《幸運のクローバー》なんかはかなり人気が高く、往時はやよい軒の白飯よろしく飢えたスタンダード民の腹を満たしていた。

こう言う「タダで呪文をコピー可能」なカードを統率者でも使いたいのだが、そんな都合のいいカードはあるだろうか?

そう思って色々探してみたところ、ピッタリの統率者を発見するに至った。

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《嵐呼びのカラマックス》

色々探したが間違いない。コイツこそが統率者における《幸運のクローバー》となってくれる。今回はこの恐竜を使い、腹一杯満足するまで統率者を楽しんでいこう。

2.こいつで何が出来るのか

さて、おいしい体験をさせてくれることうってつけのカラマックス。早速その能力を見ていこう。

《嵐呼びのカラマックス》
1GUR
伝説のクリーチャー ― - エレメンタル・恐竜
4 / 4
各ターン内で初めてあなたがインスタント・呪文を唱えるたび、嵐呼びのカラマックスがタップ状態である場合、その呪文をコピーする。あなたはそのコピーの新しい対象を選んでもよい。
あなたがインスタント・呪文を1つコピーするたび、嵐呼びのカラマックスの上に+1/+1カウンターを1個置く。

何が出来るのか、もう書いてあるままである。言ってしまえば、こいつがいる限り自分が唱えたインスタントをタダでコピーすることが出来るのである。更に、インスタント呪文をコピーするたびにこいつの上に+1/+1カウンターも乗せれるというオマケつきである。

勝手にアドバンテージを稼ぎながらモリモリデカくなっていくこいつはまさに猛獣。更に統率者戦では、各統率者からのダメージを21点以上受けると死ぬというルールがあり、カラマックスがでかくなることにもキチンと意味がある。まさに統率者で暴れるために生まれてきたようなクリーチャーである。

…のだが、無条件にホイホイ呪文をコピーできるかと言うと、そうは問屋が卸さない。インスタントをコピーするための条件は、思った以上に事細かく設定されているのである。

まず、インスタントをコピーするためには、カラマックス自体がタップしている必要がある。そのため、何の工夫も無しだと唱えたそのターンからコピーはできない。キチンとタップしてやる方法を模索してやる必要があるだろう。

そしてもう一つ。インスタントのコピーできる回数は、各ターンに1回のみである。1ターンの間にインスタントを複数回コピーすることは出来ないことに注意してやる必要がある。

とまあ、上記のような制約はあるにせよ、極めて強力な能力を持っていることが分かる。早速次の項目で、この恐竜をどういう風に活かすか考えていこう。

3.こいつでどうやって勝つか

さて、先ほど述べたカラマックスの能力。まとめるとこうなるだろう。

インスタントをタダでコピー可能!(※1)(※2)
(※1)カラマックスがタップしている場合に限ります
(※2)各ターンコピーできる回数に限りがあります

書き起こしてみると胡散臭い広告のそれだが、実力は間違いなく一級品である。方針もすっきりしており、「カラマックスの能力で様々なインスタントをコピーし、アドバンテージを稼ぎに稼いで勝利する」ということが出来るだろう。

即死コンボを実現させるインスタントを忍ばせてもよし、単にインスタントをコピーしまくって巨大化したカラマックスで殴ってもよしと、その方法は多岐にわたる。正直あまりに強力すぎるのと、あまりにもガチガチに方針が固まってしまっているようなものなので、これ以上書くことがない。

…なのだが、上の方針だけで突っ走ろうとすると問題がある。先にも述べたがこのカラマックス、ただ突っ立っているだけでは呪文をコピーしてくれない。オマケに、各ターンでコピーできるインスタントの回数に制限がある。

というわけで、上記の方針を達成するためには以下のハードルを乗り越える必要があるだろう。

①どうやってカラマックスをタップさせるか?
②各ターンに動く方法はないか?

それぞれどういう風に攻略していくか、さっそく次の項目で確認していこう。

4.どうやってデッキを組むか

それでは実際に、どういうカードを入れて上の課題を克服していくかを考えていこう。

①カラマックスをタップさせる方法

まずはとにかくこれである。カラマックスをタップさせる。一見ものすごく簡単に聞こえるのだが、統率者戦をプレイされたことがある方は、これがなかなか難しいということにお気づきなのではないだろうか。

通常、速攻がないカラマックスをタップさせるには1ターン待つ必要があるのだが、この1ターンが大問題なのである。よく考えてほしい。目の前に「次のターンからタダでインスタントが倍になる」と書かれた生き物を目の前にした場合、プレイヤーの多くはこう考えるだろう。

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「いかんでしょ」と。

そう、上の能力、相手からしたら「お前は死ぬ」と見えてしまってもなんらおかしくないのである。従って、自分以外の相手から除去が大量に飛んでくることは必至。統率者戦は4人で遊ぶフォーマットのため、基本的に自分以外の3人から除去が飛んでくると考えていいだろう。これをかいくぐるのがかなりしんどいのである。

そのため、出来ることなら出たそのターンにタップさせてやりたい。そうすることで、仮にマナに余りがある場合、いきなりインスタントのコピーまで繋げることが可能なのである。

というわけで、出てすぐタップさせる手段を考えよう。まずは、統率者戦の定番ともいえるこのカードはどうだろうか。

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《稲妻のすね当て》
2
アーティファクト ― - 装備品
装備しているクリーチャーは速攻と被覆を持つ。(それは呪文や能力の対象にならない。)
装備0

クリーチャーに速攻と被覆を持たせられる装備品である。こいつが装備できれば除去を気にせずいきなり他人を叩きに行くことが出来る。また、装備コストは圧巻のゼロ。そのため、ノーコストで統率者を守る手段としてよく利用されているのだが、今回はカラマックスを出してすぐタップするという手段にも用いることが出来る。当然採用だ。

また、殴りに行く以外でも、こういう手段でタップさせることも可能である。

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《バネ葉の太鼓》
1
アーティファクト
T, あなたがコントロールするアンタップ状態のクリーチャーを1体タップする:あなたのマナ・プールに、好きな色1色のマナ1点を加える。

このアーティファクトおよび自分がコントロールするクリーチャー1体をタップすることで、マナを捻出することが出来るアーティファクトである。出してすぐこいつの能力でマナを出してやり、インスタント呪文につなげてやることもできる。

カラマックスをタップしてインスタントを唱えるためのマナを出す。まさに一石二鳥の役割を果たしてくれるアーティファクトだ。

他にはこういう手段はどうだろう。

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《密輸人の回転翼機》
2
アーティファクト ― - 機体
3 / 3
飛行
密輸人の回転翼機が攻撃かブロックするたび、あなたはカードを1枚引いてもよい。そうしたなら、カード1枚を捨てる。
搭乗1(あなたがコントロールする望む数のクリーチャーを、パワーの合計が1以上になるように選んでタップする:ターン終了時まで、この機体はアーティファクト・クリーチャーになる。)

「カラデシュ」から登場したアーティファクト、「機体」である。これら機体は普段はアーティファクトだが、搭乗数以上のパワー分のクリーチャーをタップすることでクリーチャーとなり、相手を殴りに行くことが出来るようになる。もうお分かりだろう。搭乗要員としてカラマックスをタップしてやればいいのである。

中でもこの《密輸人の回転翼機》は性能がかなり高く、3/3飛行というスペックもさながら、攻撃かブロックをするたびにルーティング能力を誘発させることが出来る。カラマックスをタップさせながら手札を整えられる、いい感じの機体である。流石スタンダード禁止は伊達ではない。

更に、こういう土地なんかはどうだろうか

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《生存者の野営地》
土地 ― - 砂漠
T:あなたのマナ・プールに◇を加える。
T, あなたがコントロールするアンタップ状態のクリーチャー1体をタップする:あなたのマナ・プールに、好きな色1色のマナ1点を加える。

普通はただの無色土地なのだが、クリーチャーをタップさせることで好きな色マナを引き出せる。土地として運用できるため、デッキ内を圧迫しなくていいというお得カードである。

実は似たような土地が何枚かあるのだが、あまり入れ過ぎてもアレなので1枚忍ばせておく程度でいいだろう。

②各ターンに動く方法

さて、お次は各ターンに動く方法である。さらっと書くと簡単そうに聞こえるこちらのお題も、実は結構難しい。というのも、統率者戦の場合、自分のターンまで帰ってくるまで4ターンかかる。そのうち、パーマネントをアンタップできるのは自分のターンのみ。従って、上のお題をもう少し具体的に書き下すと、「4ターン無補給で動き続けろ」と書いてあるわけである。

当たり前だが、何の策も講じずにこんなことを達成できるわけがない。方法を考えていこう。具体的には、相手のターンであってもパーマネント、特に土地をアンタップできるカードを採用し、使用できるマナを確保してやるという考え方である。

例えば、こういうクリーチャーはどうだろうか。

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《種子生まれの詩神》
3GG
クリーチャー ― - スピリット
2 / 4
他の各プレイヤーのアンタップ・ステップに、あなたがコントロールしているパーマネントをすべてアンタップする。

各プレイヤーのアンタップステップ時、自分のパーマネントも全てアンタップできるようになるクリーチャーである。こいつがいれば自分のターンどれだけガツガツ動いたとしても、相手のターンには土地が全てアンタップされるため、動くことが可能になるという寸法である。

…なのだが、実はコレ、問題がある。改めてよく見てほしい。全てのパーマネントをアンタップすると書いてないだろうか。そう、土地だけならまだしも、せっかくタップしたカラマックスまで起きてしまうのだ。

そのため、これをうまく使う場合、上記で挙げた《バネ葉の太鼓》や《密輸人の回転翼機》といった、相手ターンでもアンタップできるようなカードを併用して使ってやるといいだろう。

他にはこういうカードも考えられる。

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《荒野の再生》
3G
エンチャント
あなたの終了ステップの開始時に、あなたがコントロールしている土地をすべてアンタップする。

自身の終了ステップ開始時、コントロールしている土地を全てアンタップできるエンチャントである。シンプルながら強烈な能力であり、多くの人が世話になったカードではないだろうか。

こちらは上の《種子生まれの詩神》と異なり、自分の終了ステップにしかアンタップしないものの、カラマックスまでアンタップはしないという利点はある。うまく使い分けてやりたい。

なお、この《荒野の再生》、エンド時に見た目上マナが倍になるというとんでもない特徴を持っており、これを悪用したデッキも数多く存在した。

当然、今回も同じことが出来る。

③えっ 今日はこんな危険物コピーしていいのか!

さて、コピーのためのハードルを乗り越えたところで本題に入ろう。どういうインスタントをコピーすれば旨味があるのか。という話である。

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MTGが産声を上げて早30年近く。今まで様々なインスタントが作られてきた。そしてその中には、明らかに壊れたインスタントも多数存在する。

「他フォーマットを出禁になったハイパワーなカードが使える」というのも統率者の魅力。そこで今回は、せっかくなので筆者の独断で選ぶオススメインスタントを紹介していきたい。

まずはジャブからいこう。こういうインスタントはどうだろうか。

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《大あわての捜索》
2U
インスタント
カードを2枚引き、その後カード2枚を捨てる。土地最大3つをアンタップする。

3マナでカードを2枚引いて2枚捨てる。ぱっと見《信仰なきもの漁り》より使いづらいと思われるかもしれないが、なんとこのインスタント、オマケのように土地を3枚アンタップできる。つまり、土地からマナを出した場合、0マナで2ドローできるというとんでもない呪文である。当然、マナを土地以外から供給していた場合、何故かマナが増える。

これだけでも十分恐ろしいインスタントだが、コピーすると更にカードが引けて、オマケに土地も更にアンタップできる。結果的にどうなるかと言うと、4枚ドロー(4枚ディスカード)+6枚土地アンタップが可能となる。ライブラリーを掘り進めながら使えるマナを増やし、引いてきたカードに備えよう。

なお当然だがこんな危険物、統率者以外ではほとんどのフォーマットで禁止である。

「ライブラリーを掘り進めて特定のカードにアクセスする」という意味だと、こういうカードも考えられる。

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《時を越えた探索》
6UU
インスタント
探査(この呪文を唱える段階であなたがあなたの墓地から追放した各カードは、1を支払う。)
あなたのライブラリーの一番上からカードを7枚見る。そのうち2枚をあなたの手札に加え、残りをあなたのライブラリーの一番下に望む順番で置く。

ライブラリーの上7枚を見て、その中から2枚を手札に加える。言わずと知れた超強力インスタントである。一見すると8マナという使いづらそうな呪文だが、ご存じの通り、この呪文は探査持ち。墓地からいらないカードを追放することで最低青2マナで撃てるようになるのだ。

更に恐ろしいことに、これをコピーするとライブラリーの上14枚を見て、その中から4枚好きなカードを選ぶことが出来るようになる。2マナ4ドローという時点ですでにおかしいのだが、ドローよりも質がいいのは火を見るよりも明らかだ。統率者以外では現状パイオニアでしかのびのびと使えないカードなので、統率者で使い倒してやろう。

そして更に、劇物インスタントといえばこれを忘れてはいけないだろう。

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《運命のきずな》
5UU
インスタント
このターンに続いて追加の1ターンを行う。
運命のきずながいずれかの領域から墓地に置かれるなら、代わりに運命のきずなを公開し、オーナーのライブラリーに加えて切り直す。

追加でターンを得る。わかりやすい性能を持ったインスタントである。

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分かりやすい故かなり強力で、これをコピーすると追加で2ターン得られる。ちなみに、追加で2ターン得る呪文は現状10マナが相場であり、かなりお得なことをしていることが分かる。ここまで来るといっそすがすがしく感じるものだ。

なおこのカード、使用され墓地に行くと、何故かそのままライブラリーに戻ってしまう。つまり、再度引き直すことが出来ればもう一度これを利用し、無限ターンのような何かに突入することが出来る。これが原因となり、諸フォーマットでは出禁を食らったこともある由緒正しいインスタントである。

決まればカッコいいのだが、決まらないと延々と時間を引き延ばしてしまうだけになってしまう諸刃の刃である。運用は慎重に。

なお、上に挙げたカードはどれも強力だが、ゲームを決めるカードではない。ちゃんとゲームを決めるカードもいれておこう。こいつなんかいいんじゃないか?

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《召喚の調べ》
XGGG
インスタント
召集(あなたのクリーチャーが、この呪文を唱える助けとなる。この呪文を唱える段階であなたがタップした各クリーチャーは、1かそのクリーチャーの色のマナ1点を支払う。)
あなたのライブラリーから、点数で見たマナ・コストがX以下のクリーチャー・カード1枚を探し、戦場に出す。その後、あなたのライブラリーを切り直す。

つぎ込んだマナに対応したマナコストのクリーチャーを1体持ってこられるインスタントである。コピーするとクリーチャーを2体場に出すことが出来るのだが、2枚場に出すというその行為がかなり強力なのだ。

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どういうことかと言うと、2体で勝負が決まるクリーチャーコンボをこれ1枚で揃えられるからである。色々あるので割愛するが、《鏡割りのキキジキ》+《詐欺師の提督》であったり、《鏡割りのキキジキ》+《士気溢れる徴集兵》であったりと、様々な活用が考えられるのでここは各々調べていただきたい。

5.サンプルデッキ

というわけで、今回のデッキがコチラ。「ドカ食いカラマックス部」である。以下にMoxFieldのリンクを掲載したので、興味のある方はレシピを見て参考にしていただきたい。

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上で挙げたカード以外にも、結構危険なインスタントは多数存在する。今回は筆者が好きなインスタントをたくさんデッキにぶち込んでみた。腹いっぱいインスタントのコピーを味わっていただけられれば幸いだ。

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クリーチャーもインスタントに縁があるクリーチャーを多数採用している。《若き紅蓮術師》のようにトークンを量産出来たり、2マナ以下のインスタントを持ってこられる《呪文探究者》であったり、探せば色々候補がいるはずなので、皆様もお気に入りのクリーチャーを探してみよう。

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また、カラマックス以外にもインスタントをコピーできるカードを採用。これらの手段とカラマックスを併用し、バカスカ呪文をコピーして相手に差をつけていこう。これらの手段でインスタントをコピーしても、カラマックスの+1/+1カウンターを乗せることが出来る。

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コピー手段としてオススメなのがこの《嵐の伝導者、ラル》。コピー能力は-2能力でしか使えないが、最大の特徴は呪文をコピーするたび1点ダメージを与えれられるという能力だ。詳しい説明は省くが、コイツと《発展》のような「インスタントをコピー可能なインスタント」が2枚あれば相手が全員死ぬ。

6.終わりに

いかがだっただろうか。今回はカラマックスを題材にして、インスタントをコピーして遊ぶデッキを組んでみた。強力なインスタントをコピーして遊ぶのはかなり面白い。皆様も思い思いのインスタントを使って遊んで見てほしい。

実はこのカラマックス、今まで筆者が組んだ統率者デッキの中でもかなり面白い部類に入る。というのも、インスタントを中心に組みながら、「カラマックスをタップする方法」「相手のターンに動く方法」「インスタントをコピーする他の方法」など、それ以外にも様々なことを考える必要があったためである。

強力な統率者でありながら、その力を100%引き出すにはちゃんと考えてやる必要がある。そんなカラマックスの魅力が伝われば幸いだ。

よかったらサポートして頂けると幸いです。MTGアリーナの活動などに充てたいと思います。