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マッサンのMTG通信 ~モダンホライゾン2を遊びつくせ!~

1.はじめに

2019年、嵐は突然やってきた。

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「モダンホライゾン」

「本来スタンダードを経由したカードしか使えないモダンというフォーマットに、直接新カードを供給する」という名目で作られたこの特殊セット、その名に恥じず、モダンという「地平線」を新たに開拓するべく、様々なユニークなカードが投入された。

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…しかし皆さまご存知の通り、開拓には常に犠牲が伴う。あえてここで深く触れることはないが、メインターゲットたるモダン、そして更にレガシーやヴィンテージにまで大きすぎる影響をもたらしてしまい、環境に波乱をもたらしてしまったセットだったことも確かである。

「こんな嵐は二度とごめんだ」…誰もがそう思っただろう。しかし、荒れ狂う自然災害を前に、人の願いなどちっぽけなものであることを、我々は思い知ることとなる。

そう、2021年、嵐が再来したのである。

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「モダンホライゾン2」

白状しよう。筆者ですらこのニュースを聞いた時、「こいつら正気か?!」と思ったのを今でも覚えている。あれだけモダンホライゾンが環境に爪痕を残す劇薬であることを踏まえたうえで、皆が納得する第二弾を作るという発想はおおよそ凡夫には不可能である。不安を抱えたプレイヤーも多かったのではないだろうか。

…しかし、ちょっと目線を変えてみよう。「環境の破壊者」「ブリッジ返せ」等の負の側面が話題となってしまったモダンホライゾンだが、見方を変えれば実は非常に面白いセットであったりする。

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前回のモダンホライゾンを思い出してみよう。忍者やスリヴァーといった人気部族の新規カード収録、氷雪といった旧来のメカニズムの深堀り、そしてこれだけでは語れない多くのユニークなカード…見方を変えてみると、様々な面白いカードがそこにはあったのである。

今回は特別編。今まさに我々の目の前に上陸せんとする嵐に備えるべく、筆者なりの目線から「モダンホライゾン2」のセット紹介をしていこう。果たして新たなモダンホライズンは、どのような地平を見せてくれるのだろうか?

2.「モダンホライゾン2」を紹介する その前に

…と意気込んだはいいのだが、実はこのセット、非常に記事にしてまとめづらい構成をしていることでも有名である。

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何故かというとこのセット、色別に大まかな傾向はあるのだが、個々のカードの癖が強すぎて、しっかりと系統立てて説明するのが不可能であるためだからだ。キーワード能力一つとっても、直近のセット「ストリクスヘイヴン:魔法学院」で初登場した「護法」から、はるか昔に大波乱を巻き起こした「親和」まで、それはそれは幅広いものがある。

こんな癖の強いセットについて、前提知識もなくいきなりまとめるのは非常に難しい。そこで本題に入る前に、少し昔話をさせていただきたい。

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さかのぼるほど15年前の2006年、とあるエキスパンションが産声を上げる。「時のらせん」と名付けられたこのエキスパンションは、今までのMTGの集大成として、非常に多くのメカニズム、そして過去のカードのリメイクや、カード化されていなかった主要人物のカード化など、今までMTGをプレイしてきた往年のプレイヤーに向けたカードが多数収録されたセットであった。

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続く「次元の混乱」「未来予知」といったエキスパンションでは、あえて今までの不文律から外れるカードや、一見してどうやって使うのかわからないカードも登場した。これらのカードに往年のおじプレイヤーは興奮し、そういった層には非常に受けがよかったのは確かである。

しかしこれらのエキスパンション、初心者にとっては極めて不評なセットであったことも事実である。それもそのはず、初心者からしたら訳が分からないルール文章の雨あられであり、ついていくだけで精一杯だったのである。これを反省し、「今後はここまで複雑なエキスパンションを作るのはやめよう」と反省し、現在に至るわけである。

…だが、これはあくまでも普通のエキスパンションでの話。これがもし、モダンやレガシーといった、どちらかというと往年のプレイヤーが遊ぶような環境向けの特殊セットなら、すんなり受け入れられるのではないだろうか?

もう皆さまお分かりだろう。このモダンホライゾンというセット、この「時のらせん」というエキスパンションがもとになっているのである。事実、初代モダンホライゾンは「時のらせんの2号を作る」というところがスタートラインとなっているのだ。

そういうワケで、このモダンホライゾン2、どちらかというと「異なるエキスパンションの能力の掛け合わされたカード」であったり、「昔のカードのリメイク」、そして更に「一見使用方法が分からないユニークなカード」といったものが多い。というわけなので、これらに沿って今回はセットの紹介をしていこうと思う。

3.異なるエキスパンションの能力の掛け合わされたカード

まずはこれだ。MTGが始まって早幾星霜、それこそいくつもの能力が生まれ、消えていった。基本的に各エキスパンション固有の能力は、そのエキスパンションをまたぐことはない。なので皆、こんなことを思うわけである。

「こいつらが出会っちゃうとどうなるんだろう?」

出会わないはずのものが出会う、そこで生じる反応というのもカードゲームの醍醐味である。例えば、こういうカードはどうだろうか?

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《電結の斬鬼》
4R
アーティファクト・クリーチャー ― - 猫
0 / 0
接合4(このクリーチャーは+1/+1カウンター4個が置かれた状態で戦場に出る。これが死亡したとき、アーティファクト・クリーチャー1体を対象とする。あなたはこれのすべての+1/+1カウンターをそれの上に置いてもよい。)
暴動(このクリーチャーは追加の+1/+1カウンター1個か速攻のうちあなたが選んだ1つを持った状態で戦場に出る。)

なるほど、接合といえば「ダークスティール」で出た能力だ。一方の暴動は…新しいなぁ。「ラヴニカへの献身」のグルールの能力だっただろうか。これが組み合わさると、一体何が起こるのだろうか?

まず、接合とは「こいつが死んだとき、自分の上に乗っていた+1/+1カウンターを他のアーティファクトクリーチャーの上に乗せられる」という能力である。言ってしまえば、コイツの上にカウンターが乗っていれば乗っているほど、死んだときに誘発する能力はおいしいわけである。

そこで味を引き立てるのが、この暴動。暴動は、場に出たときに+1/+1カウンターを置くことが出来る能力なのだ。なので、カウンターを追加で乗せて、接合の旨味を増やすことが出来るのである。

またこの暴動、+1/+1カウンターを置かない場合は、速攻を持って殴りに行けるという能力でもある。元々暴動は「強化するか?速攻で殴るか?」という二択が楽しい能力だったのだが、それが接合のおかげでさらに際立つのである。互いに互いの能力を引き立てる、WinWinな関係がそこにはあるのである。

では、こういうのはどうだろうか?

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《エーテル宣誓会のスフィンクス》
7WU
アーティファクト・クリーチャー ― - スフィンクス
4 / 4
親和(アーティファクト)(この呪文を唱えるためのコストは、あなたがコントロールするアーティファクト1つにつき1少なくなる。)
飛行
続唱(あなたがこの呪文を唱えたとき、マナ総量がこれより小さく土地でないカードが追放されるまで、あなたのライブラリーの一番上から1枚ずつ追放していく。あなたはそれをマナ・コストを支払うことなく唱えてもよい。追放したすべてのカードをあなたのライブラリーの一番下に無作為の順番で置く。)

続唱と言えば、「自身のマナコストの総量以下の呪文を、ライブラリーから唱えられる」という能力である。こいつのマナコストの総量は9。なので、額面上は9マナで8マナ以下の呪文がオマケでついてくるというクリーチャーだ。

だがこのクリーチャー、これとは別に「親和(アーティファクト)」を持っている。皆様ご存知この能力、言ってしまえば「場にあるアーティファクトの数だけコストが1マナ下がる」という能力である。というわけで、このクリーチャー、最大白青マナの2マナまでコストを下げて運用できるのである。言い換えれば、2マナで唱えると7マナや8マナの呪文を追加で唱えることも可能なのである。

つまりどういうことかというと、続唱と親和が絡み合うことで、本来低マナ域の呪文の踏み倒し手段だった続唱が、なんと高マナ域の呪文の踏み倒し手段としても機能するようになるのである。まさにネクストレベル続唱。続唱の新たな地平と言っても過言ではない。

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だが、親和を扱った人は誰もが経験があるだろう。このマナコスト軽減を最大限まで活用するためには、低マナ域のアーティファクトを大量に用意し、ゴリゴリ並べていく必要があるのである。つまり、続唱を解決しても、これらの親和のタネにアクセスしてしまう可能性も大いにあるのである。コレもまた面白い所だろう。

4.昔のカードのリメイク

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《永久のドラゴン》か、このカードも面白いな。平地サイクリングで捨てながら平地を手札に持ってきつつ、4マナで墓地のこいつを追放して4/4のコピートークンを生むと。手札から能動的に墓地に送るサイクリングと、墓地のリソースを再利用する永遠が組み合わさった、きれいなデザインのカードである。

…え??このカード、どっかで見たこと無いか?

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そうだそうだこれだ。《永遠のドラゴン》。平地サイクリングを持ちながら、自ターンで5マナ払うと手札に戻ってくる、最強のドラゴンの一角である。当時色んなデッキに採用され猛威を振るった、オンスロートブロック最強のドラゴンである。

…見れば見るほど、上の《永久のドラゴン》によく似た能力だなあ。なんか名前もそっくりだなあ。偶然かなあ。

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ほお、《下賤の教主》くんか。お?ジャンドカラーのマナクリとな?!3マナ目にジャンプって言うのはジャンドでかなり強力である。え?!賛美までくれるの!?ガツガツ殴るデッキにこの能力は願ったりかなったりである。強くないかこのマナクリ?!

…ん?んんん???

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有効色3色カラーのマナクリ。1マナ0/1。そして賛美能力持ち。で、名前に「教主」。極めつけはイラストとフレーバーテキスト。我々はこのマナクリを知っている!いや!このまなざしとこのド畜生性能を知っている!

そう、このモダンホライゾン、過去の名カードがリメイクされて収録されていることでも有名なのだ。

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例えばコチラの《裂け目を蒔く者》、一見待機を持った3マナマナクリのように映る。待機明けのクリーチャーは速攻を持つので、待機で撃てば実質土地のように使えるわけだ。ユニークな能力だが、実はコレもリメイクカードなのである。

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モダンでランプ系のデッキを使っている人にはおなじみ、《明日への探索》。そうこの人、上のイラストでヌッと裂け目から出てきている人なのである。能力を見比べても共通しているところが多く、土地を供給するかマナクリを供給するかの違いしかない。こういうのを見つけてムフフと笑うのもこのセットの楽しい所である。

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また、過去にカードの名前やストーリーで断片的にしか見かけなかったクリーチャーも収録されている。例えばこの《戦慄の朗詠者、トーラック》。キッカーで唱えれば手札をランダムに2枚捨てさせられる能力を持つクリーチャーである。

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手札を2枚ランダムで捨てさせられる。往年のプレイヤーはもうお分かりだろう。そう、「ヒム」の愛称でおなじみの《トーラックへの賛歌》のトーラックおじさんその人である。まさか信奉者(プレイヤー)の皆様も、こんな変態おじさんに世話になっていたとは思えないだろう。筆者は爆笑した。

過去に猛威を振るったあんなカード、どこかで見かけたこんなキャラ、それらを探してみても面白いかもしれない。

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また、往年の名カードがそのまま再録されているのも嬉しい。大体はイラストは据え置きなのだが、一部新規のイラストで収録されており、またそれが面白い反応を起こしているのも確かである。

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例えば今回再録された《総帥の召集》、ここでいう「総帥」とはドミナリアでほたえ散らかした陰謀団の親玉のことで、もとのイラストにはバッチリ総帥が映っている。

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で、これが再録された《総帥の召集》である。見た感じイニストラードだろうか、不気味な夜、群れの長が構成員を招集しているようにも見える。能力を考えると、おそらくこいつらは死体のはずなのだが、ゾンビがそこら中闊歩しているイニストラードでは、こういう怪異があってもおかしくないだろう。

イラストと能力の不気味さが、もとのホラーな次元の雰囲気を際立たせているイニストラード版《総帥の召集》。うーん、これはこれでいい味わいである。

5.一見使用方法が分からないユニークなカード

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お!《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》さんだ!《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》っていう名前がクソ長すぎて誰も名前を憶えてくれない、MTG名物料理人の《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》さんだ!あまりに《アスモラノマルディカダイスティナカルダカール》という名前が長すぎてマナコストが見えないぞ!

…いやちょっと待て、見えないじゃない、マナコストがないぞ?「マナコストが0」じゃない、「マナコストがない」ぞ?ないものは支払えないわけで、ぱっと見使用不能に見えるんだが、どうやって使うんだこのカード?!

…ご安心を。ちゃんと使い方がテキスト欄に書かれている。カードを捨てていた場合に限り、赤マナか黒マナを払って唱えることが可能である。要は1マナ3/3なのであるが、こういう表記をされると「どうやって使うんだろう?!」とワクワクするのが人情である。

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ちなみに彼女、一緒に《地獄料理書》を持ってこられるのだが、この料理書を最大限活用し、墓地から《貪るトロールの王》を持ってくるというデッキが現在モダンで研究されている。さしずめ某番組が如く、「甦れ!アイアンシェフ!」と掛け声をかけているのだろうか。蘇っているのはどう見ても食う側だが。

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ほーん。《飢餓の潮流、グリスト》かあ、トークンを出したり、生贄に捧げるギミックがあったり、面白そうなプレインズウォーカーじゃないか。

…え?何?戦場にいないと1/1昆虫クリーチャーとして扱える?!つまり、戦場にいなければ3マナ1/1昆虫クリーチャーなわけで、なんか悪いことが出来そうだぞ?

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例えば《俗世の教示者》で引っ張って来れたり、《集合した中隊》や《緑の太陽の頂点》で直接場に出すのもいいだろう。統率者環境なら様々なサーチ手段があるので、色々噛みあいがあるカードも多いはずだ。というか、統率者領域は戦場ではないので、なんとこいつは史上初、特に何も条件がなく統率者に指定できるプレインズウォーカーでもある。

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墓地にいてもクリーチャーとして扱うので、《再活性》などのリアニメイトカードで釣り上げることも可能だ。なんとこちらも史上初、リアニメイト可能なプレインズウォーカーである。

現状、「これだ!」という悪用方法が思いつかないものの、いつかきっと、何かしら悪い事に使われそうである。そういう怪しげな芳香を放つカードがあるのも魅力的だ。

6.終わりに

というわけで、今回はざっくりとしたモダンホライゾン2の解説をお届けした。その特異性、そしてカードパワーの高さから何かと槍玉にあげられやすいモダンホライゾンだが、こうやって見方を変えてみると、そこには何とも言えない、魅力的な色彩を放っているのも確かである。

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当然この記事だけで、モダンホライゾン2の魅力を語りつくせたとは思わない。収録カードは300超。つまり、300通りの新たな出会いが皆様を待っているわけである。筆者も新たなカードを使ってどういうデッキを組んでやるか、今からワクワクが止まらない。

WotCの提供する新たな「地平線」。開拓するのは我々MTGプレイヤーである。その与える影響は暴風雨そのものかもしれないが、フォーマットを問わず、様々な刺激を提供してくれるに違いない。この記事を公開したタイミングでは、おそらくテーブルトップでも遊べるようになっているだろう。ぜひ皆様、お手に取って新たなカードの魅力に酔いしれてもらいたい。



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