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2024年PC横浜 日本レガシー選手権・冬 準決勝カバレージ えむたろう(ゴブリン) VS ぴかいち(バント豆の木)

レガシーが日本一上手いプレイヤーは誰か。

2024年2月、横浜パシフィコで開催された「日本レガシー選手権・冬」。我こそが日本レガシーに覇を唱えんと222人ものレガシープレイヤーが参加し、しのぎを削りあうこのイベントは、プレイヤーズコンベンションの一つの見どころとなっている。

参加者には筆者が運営する草の根イベント「おうちでレガシー」のプレイヤーもちらほら混ざっており、勝った負けたという報告がSNS等で見受けられた。筆者も微笑ましい気持ちでそれを見ていたのだが…この「おうちでレガシー」の参加者の中で2名、破竹の勢いでスイスラウンドを勝ち上がり、プレイオフへ歩を進めていたプレイヤーが存在した。

1人目の名は「えむたろう」。昨年のチャンピオンズカップファイナルで好成績を上げ、プロツアーの権利まで勝ち取った若きホープである。おうちでレガシーにおいては、その独特な感性から生み出されるユニークなデッキを持ち込み、レガシーという過酷な環境に果敢にチャレンジしているプレイヤーである。

彼は今回のイベントのデッキとして「ゴブリン」をチョイス。元々《___ Goblin》によるマナ加速と、それの受け皿としての《上流階級のゴブリン、マクサス》が話題となっていたこのデッキに、更に盤面の制圧も可能な《舷側砲の砲撃手》も獲得。その攻撃性に一層磨きがかかり、名実ともに今のレガシー環境を定義するデッキとして名を挙げている。

2人目の名は「ぴかいち」。エターナルフォーマットの巧者として名をはせており、かつてはモダン神の座にもついていた猛者である。昨年レガシー神TOP8に残ったことからも、その実力のほどがうかがえる。おうちでレガシーでは上のえむたろうと異なり、メタデッキを回していることが多く、特に多色コントロールやペインターに造詣が深いプレイヤーとして名を馳せている。

彼は「バント豆の木」でこの日本レガシー選手権に挑む。デッキ名にもなっている《豆の木をのぼれ》でアドバンテージを確保。相手の脅威は《剣を鍬に》《力線の束縛》で対応しつつ、こちらは隙なく《聖カトリーヌの凱旋》《濁浪の執政》を展開。一気にライフを削り切ることを目標とする、中低速のデッキである。

トリッキーな若手デッキビルダーと老獪なベテラングラインダー。完全に対照的な、しかし、まぎれもなく実力者である2人が日本レガシー選手権の準決勝という場で激突する。その手に握られるデッキも攻めと受けで方向性が完全に異なるものの、今のレガシーを代表するデッキである。

おうちでレガシーという場を飛び出し、ハレの舞台で実現した対照的な2人の対決を、カバレージという形で振り返っていこう。

▲多数のギャラリーに囲まれ 準決勝が進んでいく

■Game 1

開幕一閃。まずはえむたろうが仕掛ける。《裏切り者の都》をセットし、《金属モックス》をプレイ。基本的に3マナ帯が攻め手の起点となるゴブリンにおいて、全く理想的な展開である。

が、これが理想的な展開であることはぴかいちも織り込み済み。加えて、《裏切り者の都》の特性上、この後に《金属モックス》や《猿人の指導霊》なしでは絶妙なテンポロスを引き起こすことも考え、ぴかいちは《意志の力》で対応に走る。

次の手につなぎたいえむたろう。しかし、ここで痛恨のマナスクリュー。勝ちの一手につながる3マナ目を手札に引き込むことが出来ない。

これを好機と見たぴかいちは勝負を畳むべく、一気にギアを上げる。ドロースペルで手札を整えた後、一気に《濁浪の執政》をプレイ。マナの枯渇にもがくえむたろうのライフを一気に削り取り、1ゲーム目は幕を閉じた。

えむたろう0ーぴかいち1

■Game 2

2ゲーム目、先ほどと異なり、しっかりとマナを確保したえむたろうは《月の大魔術師》をプレイ。多色地形を多用する豆の木デッキに対しては痛烈な一打となりえるカードだが、ぴかいちはこれを見越し《島》《平地》をセットしており、完全に機能不全に陥ってはいない。

当然ぴかいちも対処に動く。土地を伸ばしていくと3マナ払い《力線の束縛》をプレイ。《月の大魔術師》を追放し、自身の土地基盤を回復させていく。

1ゲーム目同様、初撃を捌かれたえむたろう。しかし、先ほどとは異なり、彼は不敵に微笑みつつ、二の矢をつがえにかかる。

えむたろうは土地を伸ばしつつ、更に《魂の洞窟》をセット。打ち消しをケアしつつ《ゴブリンの女看守》をプレイ。十分なマナを確保していることを確認した彼がサーチしてくるゴブリンは《上流階級のゴブリン、マクサス》。

そしてえむたろうは《虚空の杯》をX=1でプレイ。これを見たぴかいちは苦笑する。確かにバント豆の木は《豆の木をのぼれ》の都合上、高いマナ域のカードで勝負するデッキではあるのだが、その動きを支える《思案》《渦まく知識》《剣を鍬に》は全て1マナなのである。

果たして、ぴかいちの手札は全て1マナ。1ゲームとは対照的に、今度はぴかいちが身動きが取れなくなってしまう。

身動きができないぴかいちを前に、えむたろうは《上流階級のゴブリン、マクサス》を展開。ライブラリートップからゴブリンが展開されないことを祈るぴかいちだが、その祈りもむなしく、盤面には《ゴブリンの熟練扇動者》が2体と《ゴブリンの首謀者》が展開される。

そのまま展開したゴブリンを走らせ、きれいに攻め切ったえむたろう。このマッチの行く末は、3ゲーム目にゆだねられた

えむたろう1ーぴかいち1

■Game 3

最終ゲーム。先手を貰いゆっくりと始めるぴかいちに対し、えむたろうは《ゴブリンの従僕》を展開。手札にある《上流階級のゴブリン、マクサス》と併せ、このゲームを終わらせようとする。

ぴかいちは少し悩むと、2マナ立たせてえむたろうにターンを返す。ぴかいちの不穏な動きにえむたろうは少しひるむ。が、ここで引っ込む理由もない。がら空きのぴかいちの盤面へ《ゴブリンの従僕》を走らせ、ゲームを終わらせにかかる。

が、ここでぴかいちが動く。2マナ払い、彼が盤面に送り込むのは…《封じ込める僧侶》。そのまま《ゴブリンの従僕》を討ち取り、第一波をしのぎ切る。

第一波をしのがれたえむたろうは手札に目を落とすが、目の前の2/2に対して有効打が取れない。ひとまずはターンを回し、次の攻め手を模索していこうとする。しかし、ここでぴかいちの展開したクリーチャーを前に、えむたろうは天を仰ぐ。

ぴかいちが展開したカードは、新セット「カルロフ邸殺人事件」にて収録された《門衛のスラル》。自身のクリーチャーの誘発能力を封じられたえむたろうは、いよいよ攻め手を欠く展開となる。

「まさかヘイトベアがバント豆の木に採用されているとは思わなかった。」えむたろうは試合後にそう語る。

もちろん、彼のサイドボードには《紅蓮操作》《激情》と言った対処手段は用意している。しかし、これはバント豆の木の主な勝ち筋に一切触れられないため、サイドボードに入れられたままになっていたのである。

予想外の展開だが、起きてしまったことは仕方ない。必死に回答である《舷側砲の砲撃手》を探すえむたろう。しかし、ゴブリンは誘発型能力によりドローやサーチを進める前提で組まれているデッキであり、ドローそのものの性能は貧弱と言っていい。

この貴重な隙を、ぴかいちは見逃さない。彼はすぐさま盤面に《濁浪の執政》を追加。えむたろうのライフを削っていく。

崖っぷちまで追い込まれながらも、それでも最後まで回答を探しに行くえむたろう。しかし、目の前の状況を覆すカードを引くことはできなかった。

日本レガシー選手権、その準決勝という栄えある舞台で行われた、おうちでレガシーの参加者同士の戦いは、鉄壁の守りと柔軟な対応力で応じたぴかいちが、勝利を勝ち取ることとなった。

■デッキリスト

ぴかいち/バント豆の木

えむたろう/ゴブリン



▲試合後の記念撮影 バチバチの試合を間近でみれたことに感謝

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