第116回おうちでレガシー カバレージ Round1 けんだま(バント石鍛冶) VS ブラック(エスパー石鍛冶)
「これは石鍛冶界におけるエポックメーキングである。」
こう嘯くのは「けんだま」。彼は《石鍛冶の神秘家》を軸に据えたコントロール~ミッドレンジデッキ、通称「石鍛冶デッキ」をこよなく愛するプレイヤーである。
通常《石鍛冶の神秘家》と《剣を鍬に》などの除去を担当する白、および《渦まく知識》《思案》といったドロースペルや《意志の力》といった打ち消しを担当する青を主軸として組まれることが多いのだが、彼が今回持ち込んだのは「バント石鍛冶」。つまり更に緑を足しているという事だが、一体緑を足して何を企んでいるのだろうか。
対する「ブラック」は「エスパー石鍛冶」をチョイス。こちらのコンセプトは先のけんだまに比べて分かりやすい。黒を足すことで《思考囲い》《コジレックの審問》で相手の手札を覗きつつ、よりプロアクティブに相手に干渉しつつゲームを有利に運んでいく。最も取り回しやすい石鍛冶デッキと言えばこれだろう。
実は普段はエスパー石鍛冶を好んで使うことでも有名なけんだま。しかし彼が今回持ち込んだのはエスパー石鍛冶ではなくバント石鍛冶。彼をここまで動かしたのは一体何だったのか。早速見ていこう。
■Round 1
先手を貰ったけんだまが《喜ぶハーフリング》を展開するなか、ブラックは《思考囲い》をプレイ。相手のデッキを確認しにかかる。公開された手札は《意志の力》《剣を鍬に》《石鍛冶の神秘家》《島》、そして…《コーの遊牧民》。
およそ石鍛冶に似つかわしくないクリーチャーを前に、ブラックは首をかしげながらも、けんだまのゲーム展開力を大幅に削ぐべく、ここは《石鍛冶の神秘家》を捨てさせていく。けんだまはターンを貰うと《コーの遊牧民》をプレイ。そのままブラックへターンを渡していく。
見慣れぬカードを前にダラダラとゲームを続ける理由はないと判断したか、ターンを貰ったブラックは《石鍛冶の神秘家》をプレイ。《カルドラの完成体》をサーチし、ゲームを畳みにかかる。
けんだまは《思案》で手札を整えつつ、先に公開した《剣を鍬に》で《石鍛冶の神秘家》を処理にかかる。しかしこれは織り込み済み。ブラックは《意志の力》でかき消しつつ、ターンを貰うと《石鍛冶の神秘家》から《カルドラの完成体》を射出。一気にけんだまのライフを削りにかかる。
万事休すか。しかし、この盤面になりながらもけんだまの顔はどこか涼しげである。けんだまはターンを貰うと、《喜ぶハーフリング》からマナを捻出しつつ、このデッキの核となるカードを叩きつける。
彼が叩きつけたカードは《有翼の叡智、ナドゥ》。全てのクリーチャーが能力の対象になるたび、莫大なアドバンテージを獲得できるようになると書かれたクリーチャーである。
「《石鍛冶の神秘家》で《手甲》を探すことができるなら、緑足して《有翼の叡智、ナドゥ》を足した方がアドバンテージを稼げていいんじゃない?《オークの弓使い》も気にせず引けるし。」
これこそが、けんだまが黒を捨て、緑を足した理由である。
ブラックが苦い顔をしつつ対応ない旨をけんだまに言うと、けんだまは早速《コーの遊牧民》の能力をクリーチャーに対して起動。都合6枚分のカードアドバンテージを稼ぎ出す。そのまま引き込んだ《剣を鍬に》で《カルドラの完成体》を装備した細菌トークンを追放し、ターンをブラックへ渡す。
一応ターンが返ってきたブラック。ここは既にセットして置いた《カラカス》を《有翼の叡智、ナドゥ》へ起動。1枚分のカードアドバンテージはやむないものと判断し、なんとかアドバンテージの暴力を防ぎにかかる。
しかし、けんだまはこの必死の抵抗を嘲笑うかのように、《コーの遊牧民》の能力を《カラカス》にスタックして起動。土地がめくれてセットされていく中、ここで《死者の原野》が公開される。
《有翼の叡智、ナドゥ》の能力で土地をセット。2/2のゾンビが生成され、更にそれを《コーの遊牧民》の対象にしてアドバンテージを捻出。さらに土地がセットされゾンビが生成され…。
一連の行動が終わり、手札に戻される《有翼の叡智、ナドゥ》。しかし、この時点でけんだまの盤面には膨大な数の土地とゾンビが。ブラックは《思考囲い》をプレイ。けんだまは手札を広げると、にこやかにこう応対する。
「どうぞ。手札16枚あるけど何がいい?」
顔を覆いつつ、ブラックは《石鍛冶の神秘家》を捨てさせる。が、この圧倒的リソース差を埋めるには焼け石に水である。
ターンを貰ったけんだまは《カルドラの完成体》をプレイ。更に《虹色の終焉》でブラックの《石鍛冶の神秘家》を吹き飛ばすと全員でコンバット。返す刀でブラックのライフを全て削り取り、まずけんだまが1本取っていく。
けんだま1ーブラック0
■Round 2
2ゲーム目、ブラックは《思案》で手札を整えつつ、けんだまの展開する《喜ぶハーフリング》を《目くらまし》で打ち消していく。
出鼻をくじかれたけんだまだが、妨害は当然想定の範囲内。続くターンで《手甲》を展開し、しかけるタイミングを静かに待ち続ける。
ブラックは《ロリアンの発見》をサイクリングし土地を確保すると、《濁浪の執政》を展開しゲームを終わらせにかかるが、けんだまは《剣を鍬に》で的確に処理していく。
リソースを使い切ったと判断したか、けんだまは《有翼の叡智、ナドゥ》を展開。アドバンテージを確保しつつ、ブラックにターンを回す。ブラックは《虹色の終焉》で《手甲》を処理し、ひとまず《有翼の叡智、ナドゥ》のアドバンテージを封印していく。
しかし、けんだまはここで「盤面に展開した《有翼の叡智、ナドゥ》でブラックのライフを削る」というプランBに切り替える。《有翼の叡智、ナドゥ》をコンバットに回しつつ、更に 《謎めいた外套》を展開し、ブラックに圧をかけていく。
何とか対応したいブラックは5マナで《ロリアンの発見》をプレイ。3枚カードを引き込み、対応を探しに行く。
一方のけんだまもここで《石鍛冶の神秘家》を引き込みそのままプレイ。《手甲》をサーチしてプレイすると、さっそくクリーチャーに装備させつつアドバンテージを稼ぎ出していく。
「こっちは5マナ払って3枚カードを引いているのに、相手は同じくらいのマナから8枚くらいカードを引いたり出したりしてないか?」理不尽に頭を傾げつつも、ブラックはこの場を一回リセットするべく、《終末》をプレイ。けんだまの盤面を吹き飛ばしにかかる。
しかし、けんだまはバックアップとして用意していた《カラカス》を起動。《有翼の叡智、ナドゥ》を盤面から手札に戻しつつ、傷口を最小限にしていく。
けんだまはターンをもらうと、再度《有翼の叡智、ナドゥ》をプレイ。《手甲》を装備してめくれたカードはよりによって《死者の原野》。めくれる土地、生成されるゾンビ、更に飛び出るクリーチャー、全除去を撃った返しにモリモリと生えてくるけんだまのアドバンテージを前に、ブラックは再度顔を覆う。
最後の抵抗と言わんばかりにブラックは《カラカス》で《有翼の叡智、ナドゥ》をバウンス。《瞬唱の魔道士》から《思考囲い》でけんだまの手札を覗き、《有翼の叡智、ナドゥ》を捨てさせ、更に《石鍛冶の神秘家》で《殴打頭蓋》を展開。何とか次のターンまで耐え忍ぼうとしていく。
が、結論から言うと、ブラックに次のターンが返ってくることはなかった。けんだまはターンを貰うと、《虹色の終焉》で《瞬唱の魔道士》を処理しつつ、《時を解す者、テフェリー》で《石鍛冶の神秘家》をバウンス。がら空きになった盤面にクリーチャーを全て走らせ、2ゲーム目も制していった。
けんだま2ーブラック0