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マスクトピア
2014年5月8日 14:53
浅瀬に人影がうかんでいた ゆらゆらと動いているのは髪の毛ばかりで まだ生きていた父とふたり はるか野の際をいく船に手を振り 斜面の草をゆらす風に 白い花びらをちぎっては散らした 別れのはじまりはこんなにも唐突で わたしはふいに折り重なっていく予感に 編みあげた冠をかぶることも忘れて 鈍色の裂け目にのまれるように遠ざかる 父の
2014年5月17日 22:20
五月の青い闇のなか 私はかぼそい少年になり 夢の迷路へ踏み入った 白いうなじに風を受け はだしの足で土を蹴り 煙る街頭はすに見て ネオン流れる色街へ 着いた路地にはカツカツと 商売女の靴の音 闇に隠れて覗き見る 色めく世界の艶やかさ (おいでな坊や 姐さんの 胸の谷間でお
2014年5月27日 12:13
世界の片隅で生まれた風は 猫柳の枝を揺らし 水辺に群がる蝶の触手を掠め 乾いた轍の上を砂塵を巻き上げながら 叫びと響きを翼にのせて つむじとなって舞い上がる 鋭いまでの切っ先で遥かな高みに挑みかかり 打ち破れうなだれた幼い風は 地を慕うように吹き戻り、棕櫚の梢へ やがて閉ざされた窓へと―― 君には風が見えないか 生まれたばかりの清新の息吹を その頬に感じないか