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Poetry Lab

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むかし遊びで書いた詩を、ちょっと恥ずかしいのですが時々載せています。あまり気にしないで下さい。
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2014年5月の記事一覧

「砂 景」

「砂 景」

  浅瀬に人影がうかんでいた
  ゆらゆらと動いているのは髪の毛ばかりで
  まだ生きていた父とふたり
  はるか野の際をいく船に手を振り
  斜面の草をゆらす風に
  白い花びらをちぎっては散らした
  
  別れのはじまりはこんなにも唐突で  
  わたしはふいに折り重なっていく予感に
  編みあげた冠をかぶることも忘れて
  鈍色の裂け目にのまれるように遠ざかる
  父の

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「色街 幻想」

「色街 幻想」

   

   五月の青い闇のなか

   私はかぼそい少年になり

   夢の迷路へ踏み入った

   

   白いうなじに風を受け

   はだしの足で土を蹴り

   煙る街頭はすに見て

   ネオン流れる色街へ

   着いた路地にはカツカツと

   商売女の靴の音

   闇に隠れて覗き見る

   色めく世界の艶やかさ

    (おいでな坊や 姐さんの

     胸の谷間でお

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「風を忘れた君へ」

「風を忘れた君へ」

 

 世界の片隅で生まれた風は
 猫柳の枝を揺らし
 水辺に群がる蝶の触手を掠め
 乾いた轍の上を砂塵を巻き上げながら
 叫びと響きを翼にのせて
 つむじとなって舞い上がる
 鋭いまでの切っ先で遥かな高みに挑みかかり
 打ち破れうなだれた幼い風は
 地を慕うように吹き戻り、棕櫚の梢へ
 やがて閉ざされた窓へと――

 君には風が見えないか
 生まれたばかりの清新の息吹を
 その頬に感じないか
 

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