サンサーラ・バラッド考察「付喪神になろう」

はじめに

「異世界転生RPG サンサーラ・バラッド」は、いわゆる「なろう系」「異世界転生もの」のプレイを主旨としたTRPGである。プレイヤーキャラクターであるサンサーラは、地球世界の現代人が異世界イラを救う救世主として地球世界から転生・転移してきたものだ。
サンサーラの転生先は、その異世界イラに住まう様々な存在から選ぶことが可能である。人間はもちろん、様々な特徴をもつ獣人、エルフやドワーフを含む妖精、人造人間やゴーレム、修羅と呼ばれ本来人類に敵対するゴブリンやオークといった者たちだけでなく、恐るべき変異能力で力をつける蜘蛛やスライムなどの怪物に転生することも可能だ。
本稿では、そんな「怪物」の一種であるが様々な特性によりただの怪物、いや他のどの種族と比べても独特な性質を有する存在、意思ある器物『付喪神』への転生についてデータ面から考察してみたいと思う。

事前確認

さて、付喪神のデータ的特徴を見ていくにあたって先ず注目すべきものがある。エラッタである。付喪神は、基本ルールブックのエラッタによって彼らを取り巻く環境が激変している。公開されているエラッタの中から、付喪神に関わる重要なものを簡単に纏めてみよう。
[余暇]での法具化が可能
[ユニーク]タグを貫通して法具化できる

2つ合わせて、付喪神の伸びしろに関わる重要なエラッタ。後述もするが付喪神は特性スキルの大半が取れないので、[封入]による真法の取得はキャンペーンプレイでの成長の横幅を大きく増やしてくれるし、[威力強化]や[属性減少]による純粋な強化も可能であることは活用したい。
《概念転化》の代償の免除
破壊されなくなり、気軽に属性の識化と威力向上が見込めるようになった。オーヴァード諸君には気をつけて欲しいが《オーバーロード》とは違って威力が倍になるわけではないことに注意。
〈消耗〉と[矢弾]の消去
ナイフや手斧の付喪神が投擲武器として遠隔攻撃してもその身を散らす心配がなくなり、銃器の付喪神は補給に悩む必要がなくなった。
[掃射]や[連射]も消費無しでやりたい砲台、もといやりたい放題である。

これらのエラッタにより、付喪神は遠隔攻撃や将来的な成長性に多くの可能性を得てきた経緯がある。注目を集めている種族の一つであると考えてよいだろう。

付喪神の独自性

付喪神の現在の環境を確認したところで、付喪神が他の怪物種族とどう違うのかという部分を見ていきたい。
特性スキルの選択肢
付喪神がその他の怪物種族と異なる最大の点は、習得可能な特性スキルの種類数である。
……こういう書き方をする時は大抵、ほかの怪物よりも多くの特性スキルが覚えられそうなものだが、残念ながら付喪神が習得できる特性スキルは一般の怪物に比べてだいぶ少ない。戦闘に関わる特性スキルはある程度サポートされているが、隠密を見破ったり水に親しんだりといったユーティリティなスキルは対応していない。戦いのための武器や防具に由来する、付喪神らしい制限といえるだろう。
その代わりなのか、先述した法具化による強化がサポートされている。サプリメント『アヴァターラ・サーガ』にも追加の法具化が掲載されており、今後もこの辺りが手厚く増えていけば特性スキルを習得できない点を補うほどのビルド幅が確保できるだろう。
本体となる装備品のデータを持つ
付喪神の本体が武器であればその武器・防具であればその防具の性能がキャラクターに付いてくるというのも大きな特徴である。《金剛素体》と違って地球アイテムや乗物も選択可能なため、内包カルマの許す範囲で強力なアイテムを運用可能だ。ただし、乗物はものによって装備条件があることに注意しよう。
《念動》を前提とする
付喪神自らが攻撃する場合、《念動》の効果により〈射撃〉による遠隔攻撃も〈白兵〉による近接攻撃も【精神】で判定することになる。伸ばすべき能力値が【精神】に集中できるし、《真法適性》は火力向上に良く、[封入]した真法をサブウェポンとして使うにあたっても相性が良いだろう。
《同調》による味方への大量のAP供給
付喪神独自のスキル《同調》は、膨大な超過APを"所有者"となる味方に譲渡し割込スキルをふんだんに使わせたり、付喪神本体のデータを他のキャラクターにも使わせることができるという特性だ。
【AP】の高い味方に《同調》すれば、その効果により己の本来の【AP】よりも先んじて行動を起こすことが可能である。《同調》を前提とした特性スキルをさらに重ねれば2キャラクター分の割込スキルを載せに載せた強烈な1行動で火力を出すことも可能だろう。
ただし、[軍用]特性に係る制限や、所有者が付喪神本体の武器種を使うスキル構成であるか、既存の武器の枠を押しのける必要があるなどコンビ打ちを前提とした密な相談が必要である。

このように、付喪神は怪物でありながらもアイテムに関わるデータの恩恵を受けやすい種族である。そういった点を踏まえて、装備アイテムの強化と同じ視点で構成を考えるのもよいだろう。

運用上の注意

付喪神の運用面の特徴を見てきた。以上の点を踏まえ、実際のキャラビルド各論をする前に補足説明のようなものを記しておきたい。
《変身》をする前に
付喪神の本体が武器であるならば、自らそれを振るうための技術を求めて称号キャリアを得るために人型種族への《変身》を選択することはよくあることだろう。所有者を伴わずに介入フェイズで人里で活動するときにもRP的に使える。(もちろん介入する街の住民が、剣や銃に話しかけられても愛想よく答えてくれる良き人々であるならば必要ないだろう)
ここで気をつけたいのは、変身後の付喪神は《念話》を失うため会話が全くできなくなることだ。言語を習得できる職業キャリアを取得したり、《言葉持つ獣》を習得可能な怪物へ変身してから人里に降りるなどして対応しよう。
再転生の使い方
キャラクター作成の段階でのみ通用する方法だが、事前に人型種族へ転生して称号キャリアを得てから、付喪神への[再転生]を行うことで《変身》を経由せずに称号キャリアを得ることも可能である。

具体的なビルドと運用案

具体的なビルドと運用を記すにあたって、付喪神の本質である本体の種類ごとにその運用を考えていきたいと思う。
武器を本体とする
・アタッカー運用
武器は振るうためにあるものである。ならば武器そのものが意思を持てば、彼らは己の攻撃力を自ら行使することも当然の帰結といえる。つまり一番シンプルな方針である。同調を全く考えなければ出自キャリアが野生一択なのはしょうがない。【AP】はあるに越したこともないだろう。
武器の運用を強化するデータは称号キャリアに多い。必要ならば[再転生]で事前に習得するか《変身》を検討しておこう。射程延長や範囲拡大程度ならばチートの汎用効果も視野に入れておくと良い。
・同調しての運用
他のサンサーラを前提として、彼らが使う武器として参加するならば付喪神本体には称号キャリアのスキルは必須でなくなる。ただ上述の通り、相方となるサンサーラがいることが前提であるため気をつけよう。
防具を本体とする
・真法などによる能動的行動運用
本体が武器でないため、防具の付喪神がなんらかの[行動]を起こすには真法の[封入]が必須である。あるいは[限界強度]を大量に確保してチートを用いて戦うという手もあるだろう。
《真法適性》や[真法強化]で火力を上げた真法で攻撃するなり、バフをかけるなり真法使い運用をすることになるだろう。
・防御型運用
豊富な装甲値で《野生の献身》をもってダメージコントロールを行うのを主旨とした運用法である。法具化や特性スキルにより耐久性を高め、攻撃をかなぐり捨ててでも味方を守るビルドである。
《同調》していると所有者以外を守りに行く時に所有者ごとエリア移動させることになる。所有者が射程0の割込行動を持っている時は頭の隅に入れておくとよいだろう。
・《同調》しての協調的支援運用
防具の装甲値で所有者を守りつつ、[封入]した真法の恩恵を所有者に与えることができる。《波動闘気》や《明滅》など各種真法の美味しいところをつまみ食いしよう。
防具は武器に比べて装備に関する制限や問題が起きにくいため、気軽に所有者を変えることもできる。柔軟な運用をしよう。
超過APは所有者に使わせるなり、真法や割込スキルによる支援に使うとよいだろう。
乗物を本体とする
一般の乗物は再装填がエラッタされている点に注意すること、防具以上の装甲値と装備条件である騎獣フォロワーの部隊値を活かす方向が良いか。騎獣フォロワーの維持費の関係で人型種族への《変身》が必要。
地球アイテムからはバイクがオススメ。騎乗を必要とするサンサーラと手を組むことも可能だ。このとき《騎乗適性》ではなく《同調》で乗ることに注意。
巨神を本体とする
法具化の件で『アヴァターラ・サーガ』に言及した以上、《巨神の体》について言及を避けることはできないだろう。ただこのデータは、巨神操士のキャラクターに混じって遊ぶ際の選択肢だと考えられる。ビルド論については巨神ビルド工学の項目で語られるべきだろう。
強いて言うなら他の巨神の倍近く用意された巨神カルマでパーツを選び、小手先のスキルよりもパーツの品質と威力でぶん殴ると差別化できると考えられる。《同調》を採用して他の巨神操士キャラクターの巨神として参加するのもよいだろう。

もちろん、あくまで上記のビルド案は一例でしかなく、TRPGのキャラビルドは自由なものだ。剣の本体で真法攻撃をメインにしたりしてもよいだろう。

おわりに

以上、本稿を通じて付喪神サンサーラに何ができるかということを示してみた。本稿を参考に、付喪神のキャラクターで遊んでみるプレイヤーが増えたりしたら幸いである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?