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「浅田家」が見せる涙の意味(映画感想)

⚠︎このnoteは映画「浅田家」のネタバレを含みます。

 10月2日に公開された「浅田家」。よくある「感動映画」だと思ったら大間違い。だだ感動しに行くのではもったいない映画だと思います。「浅田家」が一体何を伝えようとしているのか、「浅田家」を見て自分が何を感じたのか、ゆっくり考えるうちに心がじんわり温まってくる。そんな映画です。

映画の基本情報

ユニークな家族写真で写真会の芥川賞とも言われる木村伊兵衛写真賞を受賞した浅田政志の写真集「浅田家」と東日本大震災の津波で泥だらけになった写真を洗浄し元の持ち主に返すボランティア活動に参加した浅田政志が、作業に励む人々を約2年間にわたって撮影した「アルバムのチカラ」の2冊の写真集を原案とした事実に基づいたオリジナルストーリー。
主人公浅田政志を演じるのは二宮和也、兄役に妻夫木聡。父役に、平田満、母役に風吹ジュン、写真洗浄のボランティアで出会う東北の大学院生・小野役に菅田将暉など豪華なメンバー。監督は『湯を沸かすほどの熱い愛』の中野量太。


この映画をおすすめしたい人

感動映画が苦手な人。
涙を流しに映画館に行きたいわけではない!という人にこそおすすめです。
感動したい人のニーズも満たしてくれますが、すこしひねくれた映画の見方をした方が見えてくることも多いでしょう。すごく丁寧に作られた映画だと感じました。

二宮和也ファン。
何も考えずいますぐチケットを取ることをおすすめします。定職につかずフラフラしているのにどこか憎めない主人公の政志の「かわいさ」は二宮和也の真骨頂でしょう。同様にキャストに惹かれた方もおすすめです。特に浅田家を演じた二宮和也さん、妻夫木聡さん、平田満さん、風吹ジュンさんそして幼なじみの若菜を演じた黒木華さんの演技だけでも一見の価値があると思いますよ。

映画の感想※ネタバレあり


「浅田家」における涙

 この映画の中では多くの場面で登場人物が涙を流しますが、ある共通点があります。それは悲しみだけの涙ではないということ。

 主人公である政志の「浅田家」を手に上京する際に流した涙、家族写真をとるなかで家族と向き合う中で流した涙。ボランティアの小野の涙も、写真洗浄に反発していた渋川の涙も。大きなかけに勝った政志の幼なじみの若菜が流した涙も、

悲しみだけの涙ではありませんでした。

 震災で父を失った少女である莉子が政志の家族写真の中で父とのつながりを感じたように、「浅田家」が見せたのは目の前にある困難や悲しみの中で、人との繋がりを見つけた涙でした。

 これら「浅田家」の登場人物の涙は何を伝えたいのでしょうか。正解はわかりません。けれどそれを考えるのも映画の楽しみであり、醍醐味ではないでしょうか。

「浅田家」から感じたもの

 繰り返すようにこの映画は劇的な悲劇でも、喜劇でもありません。
日本を激震させた東日本大震災は死や喪失の象徴ではありますが、それ以外にも世の中には悲しみが溢れています。
私たちは悲しみに暮れるしかないのでしょうか。

 それでも登場人物が写真を通じて人とのつながりを感じたように、身の回りに悲しみが溢れる一方で、確かにそこに当たり前すぎて気がつかない、人とのつながりも存在するのではないか。だからこそこの映画はこんなにも暖かいのではないか。

これが僕が見た「浅田家」です。

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