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あなた誰?本気を出した夫の変貌

ついに夫が本気でダイエットに乗り出した。
きっかけは、晩ご飯のお好み焼きを食べた後の体重が73kgに達していたことらしい。

身長180cm台であればまあまあかなという数字であるが、夫は160cm台。
アウトである。

まず夫はダイエットのアプリをスマホに入れた。
食べたもの、運動した内容を全て記録して、摂取カロリーと消費カロリーを算出する。
1ヶ月で何キロ落とすかの目標値により、1日の摂取カロリーの上限が決まる。
そのため、夫は何を食べるにも慎重になっていった。

最初は食べた後に記録していたのだが、それだと「食べた結果カロリーオーバーだった」ということになりやすい。
そこで、昼食を食べた時点で「今日の晩ご飯は?」と私に訊き、先に食べる予定のメニューを入力しておくことにしたのだ。
そこでオーバーしていると何かを削ったり副菜を替えたりし、逆に〇〇kcal余裕があるぞとなれば、1品足したりデザートを付けたりする。
そうすると、うまく上限の中に収まるので、夫はアプリの中のアドバイザーの女性に褒められる。

なんだか楽しそうである。
今までみたいに好きなように食べられない苦しさはあるけど、ドンと増えた分の体重が戻って結果が出ているし、やりがいはあるに違いない。

しかし、褒めるなら私も褒めて欲しい。
朝昼晩のご飯のことを考えて作っているのは私。一日中ご飯のことを考えている。
考えた献立を摂取カロリーの状態で変更するしんどさ。
誰かわかってください…!

と頭の中でモヤモヤしているが、口に出してはせっかくの夫のやる気スイッチを解除しかねないので黙っておく。

夫が行っているダイエットは所謂レコーディングダイエットである。
いつか世間で話題になり、自分でもノートに書き出してやってみたことがあった。食べたものを書くだけで痩せるというのだ。余計な出費はないも同然。
しかしそれは続かなかった。
書いても書いても何も見えてこなかったのだ。
体重体脂肪にも影響なし。

それから何年経ったかわからないが、紙ではなくアプリで管理する便利な令和時代、夫のレコーディングダイエットは今までの食生活の問題点を色々と浮き彫りにした。

入力すると食べたもののカロリーが算出される。
これは私の料理にも大きく影響した。
酢を使った副菜をよく作るのだが、酢が体に良いとしても酢の物には砂糖が入るしマリネにはオリーブオイルを使う。
これが『塵も積もれば…』の要領で摂取カロリーに響いてくるのだ。
その結果、生野菜にノンオイルドレッシングをかけるのがベストとなり、以降副菜には度々茹でブロッコリーが登場することとなる。(茹でといいつつ実際は冷凍ブロッコリーをレンチンしているだけ)

アプリはカロリーだけでなく栄養バランスも棒グラフで教えてくれる。
規定の量に届かなければ不足、摂り過ぎると過剰と表示される。尚、ビタミンやカルシウムなどは過剰の表示はされない。摂り過ぎても悪いことはないからだろう。

夫は毎日塩分と脂質の項目が過剰である。
ここで足を引っ張っているのが、ウィンナーやベーコンなどの加工肉だ。
我が家はウィンナーを大袋で購入している。朝ごはんのホットドッグ、炒飯の具、ナポリタンと定番メニューでの登板が多く、あると助かる存在なのだ。
しかしダイエット中の身にはよろしくない。
冷蔵庫にあるとついつい頼ってしまうので、しばらく買わないことにした。代わりにツナ缶や茹でた鶏ムネに頑張ってもらう。
ちなみにウィンナーは鍋に入れても抜群に美味しいので、夫のダイエットが軌道に乗ったらまた少しずつ取り入れたい。

これらは見直しポイントの一部分に過ぎない。
しかし、自分で入力している夫の意識は明らかに変わってきた。

まず、間食が激減した。
仕事の合間にキッチンに来てはガサゴソとお菓子のカゴに手を入れていたが、最近めっきりその姿を見かけなくなった。
夕食後に「さーて」などと言いながらお菓子を取りに行くのもやめたようだ。
食べたい時はパッケージを裏返して、必ずカロリーをチェック。

とはいえスイーツを食べたい時もあるので、摂取カロリーの上限まで余裕があれば、コンビニに出向いてデザートを買ってくることもある。
しかし夫はここでも油断はしない。
自分の分として買ってくるのは、糖質オフのアイスなのだ。

私は驚きとともに感動を覚えた。
あの夫が。
たまに出勤しては帰りにひとくち饅頭をたくさん、または切り落としのカステラ大入りパックなどを買ってきていた夫が。
糖質オフのアイスに手を出すなんて。

さらに驚くべきことに、夫は摂取カロリーの上限を死守するため、息子の食べ残しに一切手を出さなくなった。
これまで息子の食べ残しは夫の担当だった。
酷い時は「お肉なら残してもいいよ。お父さんが食べたいから。野菜は食べなさい」などと言っていた。
育ち盛りのタンパク源を奪うなと注意していたぐらいだ。
それが今や大皿の餃子でさえキッチリ数えながら食べ、「俺が食べられるのはここまで」と引き際もあっさりしている。

夫は変わった。
きっと、食べたものを記録して摂取カロリーや栄養バランスを目にしたことで、自らの食生活を省みたのだろう。

私も料理の仕方が少し変わった。
使う油脂の量は極力少なくし、食べた量がわかるように大皿ではなく個別の皿に盛ることを心がけている。

別にズルをしようと思えばいくらでもできるのだ。
コッソリ食べても記録しなければいい。
しかし、夫は真面目に実際に口に入れたものを過不足なく記録しているのだ。
今度はきっとうまくいく、私はそう確信している。


さて、夫が手をつけなくなった息子の食べ残しだが、それは当然私の担当になった。
今は娘に授乳しているので、ちょっと食べ過ぎたぐらいでは少しも影響しない。
しかし早ければこの秋には卒乳、いやもっと早い段階で離乳食が進んで哺乳量が減ってくれば、今度は私に蓄積されてしまう。
息子に出す分を最初から減らす方がよさそうだ。
それか息子よ、君は太らないからもっと食べなさい。

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