人生は実験だ。

先日、友人のマサから電話がかかってきた。

マサは唐突にこんな質問を私に投げかけてきた。

「もし無人島のような未開拓地にいたとして、
　東に金がある。って聞いたら
　お前は東にいく？」

『たぶん行かない。笑
　きっと西に行く。』

「なんで？」

『東に金があるってわかっているなら、
　行く必要がないって思っちゃう。
　じゃあ西には何があるんだろうって
　考えるかな。』

「なるほど。」

そうなのだ。

よく天邪鬼と言われるが、
私は決して逆張りをしているのではない。

東だけの情報があっても意味がない。
後々のこと、全体のことを考えると、
北、南、西へと行くことの方が良いと
私は考える人間なのだ。

私が社会人の時は、
就職したら定年まで働くことがベストだった。
転職は落ちぶれることだと考えられていた。

それでも私は転職したらどうなるのだろうか？
と知りたかった。

みんなが言う通り本当に落ちぶれた人生になるのだろうか？
と知りたくなったのだ。

結果は転職してもとくに変わらなかった。

それから転職を繰り返すこともいけないことだと教えていただいた。

それでも繰り返したらどうなるだろうか？
と知りたくなった。

結果はたしかに悪い印象を持たれることがあった。

今度は起業してみようと思った。

起業は簡単じゃない。計画や目標をちゃんと設定することや市場調査することなど、たくさん教えていただいた。

それをせずに起業してみた。
何の考えもなくとりあえず会社を作ってみた。

作るのは簡単だった。
社長になるのは簡単だった。
むしろ部長や課長になる方がよっぽど難しい。

それに社長だからって優れた人間ではないと分かった。
書類さえ出せばこんな私でも社長になってしまうのだ。

私は知りたいと思って行動することが多い。
だけど周りの人は何かを成したいと思って行動しているように思えた。

ゴールがあって、逆算して、
それを埋める手段を実行しているように思えた。

だから私も同じように、ゴールがある前提で実行しているのだろうと考えられている。

何がしたいの？

え？ただ知りたいんです。

は？

ごめんなさい。
ベクトルが逆なんです。

お金持ちになりたいから、
成功したいから、
会社員が嫌だから、
起業したわけじゃない。

起業したらどうなるのだろう。
で起業したんです。

ご想像の通り、痛い目に遭うこともあります。
ピンチになることもあります。

もう終わりだって、
とても苦しくなります。

それでもいいんです。
どうにかなるもんなんです。

努力とかそんなんじゃなく、傷が自然と塞がるように、こうやってまた立ち上がれるのが人間なんだと私は思うのです。

痛い目に遭わないこと、ピンチにならないこと、
そういった保険のメガネを掛けると見えなくなることってあるんじゃないですかね。

時々、この知りたい欲に殺されそうになるときもあります。

死んだらどうなるのだろう。
知りたい。

世間がどうなるとか、周りの人の反応を知りたいとか、後処理のことではありません。

私はどうなるか。
人間はどうなるか。
知りたくなるんです。

不思議だと思いませんか？

どんな賢人であれ死んだらどうなるかは、
誰にも伝えることはできないんです。

何かこの世の禁忌のような気がします。

本当に伝えられないのだろうか？
何か手があるのではないだろうか？

こんな風に思考を巡らせていくと、私はこの欲に殺されそうになる。

私は自分を使って人体実験をしている気分だ。

だけど何かを証明したいわけじゃない。

ただ知りたい。