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妬いてるの?

「ねえ、妬いてるの?」

私はタバコの煙を燻らせながら問いかけた。気だるい気分を表すかのように煙を吐く毎にため息が漏れる。

「離婚、できない?」

またか。何度同じことを聞くの。私は離婚するつもりなんかない。そんなこと端から分かってたでしょ。

「やっぱり俺は君と結婚がしたいんだ」

しつこい男だ。初めから割り切って付き合い始めたんじゃない。

「君の旦那さんに1度会わせてくれないか?俺から話してみるから」

何言ってるの?自分から不倫を告白するの?バカじゃない。哀れだわ。でも、1度会わせてみる?

私はバッグからスマホを取りだして電話をした。

「今から待ち合わせしたから、1度3人で話してみましょうよ」

ホテルから外に出ると、満点の冬の夜空が私たちを出迎えた。もうしばらく私はこの景色を見ることはできないだろうと覚悟を決めた。

「どこへ行くの?」

もう、なんて察しの悪い人。さっき話をしたいって言ってたじゃない。

車に乗ってシートベルトを締めいつもの駅前に向かう。助手席に座った男は目を白黒させている。

「ねえ、どこへ行くの?」
 
もう、何度も同じこと聞かないでよ。本当に察しが悪いったらありゃしないわ。

駅前では寒空の下もう1人の男が待ちくたびれたように欠伸をしている。あ、あそこにいるのか。じゃあ、もう一度電話してみるか。

「もしもし?あ、その角を右に曲がって。突き当たりの辺で乗せるから」

信号が変わった。私は欠伸をしていた男を横目でしっかり確認しながら右折し、その後アクセルを踏み続けた。突き当たりまでの距離はそう長くはなかった。

車から出て見ると、男は大の字に横たわり大きな悲鳴とともに怒号が響き渡っている。救急車とパトカーが次々と押し寄せ、私は警察官に後ろから羽交い締めにされ身柄を確保された。

慌てて助手席から車の外に出てきたもう1人の男に向かって私は言った。

「これでいいんでしょう?あなた、これでも妬いてるの?」


【了】



山根さん、この度もご査収のほどよろしくお願いします。


#青ブラ文学部
#山根あきらさん



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