公民館00

[ 言葉の繊維 ] 8. 稲富公民館 (紡ぐ人)

「演技なんて初めてだし、と難しく思われている方もいると思いますが、
 大丈夫です」

撮影現場に集まったエキストラの方々、
一人ひとりと目を合わせるようにして、監督はそう言った。

映画「糸」の撮影がはじまろうとしていた。

20〜30畳ほどの広さの公民館は、
役者さんやカメラや音響などのスタッフで熱を帯びている。

趣のある「書道」や「水墨画」に見守られた畳の空間から、
この地に住む方々が集い、支え合ってきた息遣いを感じる。

置かれている「ホワイトボード」は決して新しいものではないと思うが、
この空間にあると白さが際立ってみえる。

ここで撮影するのは、糸島の若い人たちが提案した
「町おこし」について、ずっとこの地に住んでいる
人たちと話し合う場面だという。

スタッフの声が飛び交うなかで、
周りを見渡しながら監督は続ける。

「現場では、みなさんに気持ち良く演技してもらうことが全てです。
 それでは、助監督を紹介します」

「あっ、監督ありがとうございます。それでは…」

若い助監督が話しはじめた。

「ちょっと、待って。おれ前座?」

笑いが溢れて、一気に場が和んだ。

その後、監督は

「この場面は、こういう心境だから、こういう反応をしてほしい」

丁寧に具体的に役割を伝えていく。

糸島の方で、セリフをもらった方もいる。

いよいよだ。

「カチンコ」が合図を告げる。

役者さんと同じ空間でカメラが回っている。

それだけで緊張する。

「カット!」

現場から「ふうーっ」と肩の力が抜けたように感じた。

そんな僕たちを見て

「監督の仕事で聞きたいことはありますか?」

「気になったことがあれば、なんでも言ってください」

監督はスタッフの方とはもちろん、エキストラの方たちとも、

対話しながら撮影は進んでいった。

テイク2、3…。

言われていた通り、撮影は遅くまでかかりそうだ。

誰もが生き生きとした表情をしていた。


#映画糸 #中洲大洋映画劇場 #糸島

(写真は糸島のとある風景)


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