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【読んだ】吉見俊哉『空爆論 メディアと戦争』

ドローンに至るまでの空爆技術を「視線」の問題として扱い、それが一貫して植民地支配の不均衡な眼差しなのだと論じるのが全体のテーマ(吉見俊哉曰く「『博覧会の政治学』の続編」らしい)。いつものように面白い史実がたくさん出てくるんだが、例えばドローン技術の着想は実は第二次世界大戦中からあって、それがアメリカ軍が日本軍の特攻隊への対抗として開発が進められた事を紹介しつつ、ドローンと自爆攻撃をベンヤミンの技術論に重ねて比較してたりしていた。

多分重要なのは、セルトーの「戦略」と「戦術」の区分けを基に、「眼差される」側の対抗戦術を論じてる所かと。眼差す側の視線の位置と身体の場所が地理的にズレてるのがひとつのポイントなんだが、眼差される側の戦術行為は寧ろ身体を活用してるのが興味深い。演劇の話とかはいかにも吉見俊哉である。

北田暁大の解説は正直本文より難しいんだが笑、多分データの全体化によって近代的主体とその眼差しあり方が変容(失効?)してる様を、ナッジの話を経由して論じる、みたいな感じかと。それはそれで面白いけどこの本(というか吉見俊哉の仕事全般)の解釈としてはやっぱトリッキーな感じがした。

#吉見俊哉
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