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参議院選挙のしくみ(2022年版)

参議院選挙は「2票制」

参議院選挙で有権者は2票投票する

参議院選挙は、有権者1人が2票を、それぞれ別の選挙区に投票します。1票は都道府県選挙区※、もう1票は比例代表選挙区です。

※ただし、鳥取県と島根県徳島県と高知県は、有権者人口の格差是正のため、2県で1選挙区となっています。これは「合区」といわれています。

衆議院総選挙のような「比例復活」「復活当選」はありません。都道府県選挙区に立候補した人の、比例代表選挙区への同時立候補は認められていないからです。

「この人負けるかもしれないけど、接戦だから復活当選するよね」というようなことは、参議院選挙では、ないのです。

都道府県選挙区の当選人数は都道府県によって異なる

都道府県によって当選人数は異なる

都道府県選挙区は、比較的わかりやすい制度となっています。有権者が候補者に投票して、上位の候補者が当選します。

ただし、すべての選挙区で、得票トップ1人だけの当選とはなりません。参議院では、人口の多い都道府県選挙区の当選人数は、1人ではなく複数になっているからです。

各都道府県の当選人数は、次のようになっています。

東京都 1人
大阪府、埼玉県、神奈川県、愛知県 4人
千葉県、兵庫県、北海道、福岡県 3人
静岡県、茨城県、広島県、京都府 2人
その他の県 1人(ただし、鳥取県と島根県、徳島県と高知県は「合区」制度により2県から1人)

そのため、選挙区によって、候補者の戦い方も、有権者の投票行動も、大きく変わってきます。

特に東京都の場合は要注意です。「あの人、6位争いがやっとらしい。応援したいけど、それじゃ絶望的だな」いやいや、そういう場合はむしろ応援しないと! なんですよ。6位の候補者まで当選できるんだから

比例代表選挙区でも、意中の人に投票できる

比例代表選挙というのは、政党の名前を書いて投票する選挙です。

めちゃくちゃわかりやすくいうと、ある政党が50%の票を集めたら、当選者の50%がその政党の当選人数(獲得議席数)となる、というものです。

とはいえ、実際には、政党の得票率は24.369...%、のようになります。でも、国会議員の数は1、2、3……という整数以外ありません。そのため、得票率を整数である当選人数に直すための「ドント方式」というものがあります。ただ、えらいややこしくなるので、ここでは省略します。

で、

実際に当選するのは、「政党の候補者名簿(ここでは「政党名簿」)」の中に書かれている人です。

候補者名簿に順位があり、この順番で当選者が決まる方式を「拘束名簿式」、順位がなく、特定の方式で当選者が決まる方式を「非拘束名簿式」といいます。

参議院選挙の比例代表選挙は「非拘束名簿式」です。

そのため、

有権者は、比例代表選挙区の投票で、(1)支持する政党の名前を書いて投票するか、(2)「政党名簿」の中の、自分が特に当選してほしい人を1名書いて投票するか、を、選ぶことができます。

この選択は、投票所で、投票用紙の記載ブースで、考えてもいいです。事前に選択する必要はありません。

また、投票用紙の記載ブースには、全政党の「政党名簿」が掲示されているので、そこで、意中の人を選んでも、まったく構いません。

こうして、政党単位の比例代表選挙制度だけれど、有権者が意中の人を1人だけ選んで投票できる制度になっているわけです。

ただ、政党名簿の中への票は、その人本人の票になると同時に、その政党への票にもなります。そのため、その人に投票することで、名簿政党の得票が増え、その政党(たとえ、あなたが支持していない政党でも)の国会議員の増加にもつながることは、知っておくべきでしょう。

そういう制度のため、政党として、全国的な知名度の高い人に、「政党名簿」の中に入ってもらい、得票数増加を狙うことも重要になってきます。

なかなかややこしい、比例代表選挙区のしくみ

比例代表選挙区では、名簿中の各得票数の多い候補者が当選

もし、A党から3人当選と決まったら、A党の「政党名簿」中の候補者のなかで、獲得した個人票の多い順に、3人当選します。

だから、「政党名簿」のなかに入れてもらっても、選挙運動を頑張って票を集めなければならないので、候補者は結構たいへんです。しかも、全国単位での運動が必要なので。

ただし、下の図のように、あくまで当選人数は政党単位で決まるので、個人票と当選・落選の逆転現象が起きることもしばしばです。

20万票のBさんは当選、25万票のIさんは落選

たとえば、

A党から3人、B党から1人当選となった場合、

A党で、トップとなる20万票の個人票を集めた候補は当選しますが、B党で、トップに次ぐ21万票の個人票を集めた候補は、「B党から1人のみ当選」ということから、落選してしまうわけです。

そして、

前回の選挙から、参議院の比例代表だけ「特定枠」を設けてもよいことになりました(設けなくてもよいです)。

特定枠というのは、個人得票数に関わりなく、順位に応じて、一般の枠より優先的に当選する名簿の枠のことです。

「????」 という人は多いでしょう。

これは政党名簿を、「特定枠」と「一般枠(実際にはこういう言い方はしませんが。従来枠でもいいのかな?)」に分けるのです。

「特定枠」の候補者は、個人票を何票獲得するかに関係なく、順位に従って当選が決まります。

「一般枠」の候補者は、従来どおり、個人票の多い人から当選が決まります。

特定枠の候補者は、得票数に関わらず優先的に当選

もし、A党が3人当選となった場合、A党の政党名簿が
 A党特定枠名簿 1位 Bさん 2位 Cさん
 A党一般枠名簿 6人の候補者
であれば、

BさんとCさんは、当選です。
そして、一般枠の6人の中から、個人得票数の最も多い人が1人だけ当選します。

特定枠部分の名簿には順位が必要なので、「参議院選挙は非拘束名簿式が原則だが、一部が拘束名簿式だ」という、難しい説明がされることもあります。

ともかく、こういったことを考えた投票行動も、有権者には必要になってくるのですね。

うーん、ここはややこしい?

たとえ意中の人が落選しても、あなたの一票には大事な役割

有権者の一票一票で税金の行き先が決まる

国政選挙には、実はもう1つ、重要な意味があります。

それが、政党助成金制度にもとづく「政党交付金の決定」です。

国から、つまり、われわれの税金から、およそ310億円のお金が、政党交付金として、一定の条件を満たした政党に、毎年配分されています

それは、(1)国会議員の数と、(2)得票率によって決定します。政党交付金の総額のうち、半分が(1)をもとに、残りの半分が(2)をもとに、それぞれ配分されます。

そのため、

もし、あなたの入れた票によって、意中の人が当選しなくても、各政党が国からもらう政党交付金の額のいくばくかの決定につながることになります。

ほんとうにわずかな額かもしれませんが、税金の使いみちが、選挙における国民の一票に応じて決まるわけです。

そういう意味でも、選挙に行くことは大事なことなわけですね。

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