「ガザ・モノローグ2010」その21

21.ムハンマド・カセムさん 1995年生まれ アル・サフツァイ通り

僕はおばあちゃんと家に二人きりでいました。おばあちゃんはこの国の昔話のなかでも特に悲しいやつを僕に話してくれました。でも僕はその話を全部聞いたことがありません。なぜなら、おばあちゃんは半分も話したらトイレに行っちゃうから! おばあちゃんは自分の時間の半分を部屋で過ごして、もう半分はトイレで過ごします。

おとうさんとおかあさんは、夜の10:30に帰ってきて、そのまま寝てしまいます。僕は眠れずに、ベッドに寝転がって、宿題をしていました。とつぜん、遠くの方でなにかが爆発する音が聞こえました。僕はニュースを聞くためにおとうさんとおかあさんの部屋にラジオを取りに行き、おとうさんを起こして言いました。「大きな爆発の音が聞こえたよ」
でもお父さんは「静かに寝てなさい。どこかを狙って撃ってるわけじゃないから」と言いました。

そして、僕はベッドに戻ったのです。そうしたら突然、電気が消えました!それからとても大きな爆発が世界を揺らしました。ブランケットをとって頭にかぶると、なにかが顔に落ちてきました。力を振り絞ってブランケットをどけると、落ちてきたのは窓枠でした。ブランケットはガラスにまみれていて、家中が煙でいっぱいでした。その日は僕の家のすぐ隣にあった労働組合が爆撃された日だったのです。

でも、それは問題ではありませんでした。もっと問題だったのは、説明しようのないおかしなことが起きていたことです。第一に、世界が炎に包まれて、誰もが死ぬかもしれないと感じたその時、おばあちゃんが自分の入れ歯を探していたこと! 死んだ時に歯がないことがバレるのを心配したそうです。もうみんな知ってるのにね!
次に、家が煙に包まれているのにも関わらず、おとうさんがタバコに火をつけて吸おうとしたこと。もう煙はいらないよ!
そして、おじさんが僕らの無事を確かめにやってきて、おとうさんがみんなの無事を伝えたとき、窓がひとつを残して残り全部が割れていたこと。おじさんはそれも割ってしまえと言って、おとうさんは実際にそうしてしまったんです!

どうしてこんなこと話してるのかわからないですけどね、僕が知ってることといえば、みんなカゴの中の鳥のように、檻や監獄の中にいたということです。出て行きたいのに、包囲されている。子どもたちは母親の目の前で死に、その人が心が裂けるほどの叫び声をあげても、誰の耳にも届かない。誰の心も穏やかではなく、誰もそのことを気にしない!

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