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渡辺淳一全集第13巻『女優』を読んで

 たまたま第20巻『たまゆら』を読んで面白いと思い、第1巻に立ち戻って、以来、ずっと図書館から借り出しして、読み続けている。今回、第11巻を読むべきところ、図書館の書庫になく、次は貸出中の表示、しかたなしというか、単純に第13巻『女優』を読んだ。
 あの、もうというべきか歴史上の女優、松井須磨子の話、全然、予備知識もなかった。ただ日本人として、本好きの人間の一人として、「松井須磨子」の名前は、知っている。
 「カチューシャ可愛や、わかれのつらさ🎵」ぐらいしか知らなかった。坪内逍遥のもとで俳優として売れっ子になり、島村抱月と仲良くなり、不倫するといった流れ。
 松井須磨子がひいた風が島村抱月にうつり、肺炎を悪くして死んでしまう。松井須磨子は、島村抱月の死後、様々に生きようと努力はするが、気落ちしたのか、自殺するという流れだ。
 ストーリーとしては、大物の脚本家と懇ろになり、俳優としても大売れに売れ、有名になり、他をもまったく顧みない態度で過ごしたものの、支えを失って、儚んで死んだことになった。
 一代記的にも面白い。坪内逍遥や島村抱月に支持され、世間的にも大うけし、つい調子に乗った感じもある。
 淡々と、小説としても面白い。
 この渡辺淳一先生、医師出身で医療関係を素材にとった小説、札幌医科大学の心臓移植の他、医療関係は、特に専門家だけに、興味深い、面白い。またエロテック、官能小説で、男と女の恋の物語、一対一のラブストーリーから不倫ものまで、幅広く、一般受けする小説を多く書いている。
 この小説と同じように一代記、特に、高年齢層には圧倒的な英雄、野口英世の一生を描いた『遠き落日』、大変、いい小説だった。いろいろな意味で。幼い頃の大やけどを起点にして、勉学に努力、運にも恵まれて、世界的な医学者になって、日本人として、世界に誇れる人となっただけではない。その裏面も、様々に書き表し、非常にいい本にした。
 まだまだ、この角川書店が発行した渡辺淳一先生の全集だけでも、完結していない。次は、第12巻を予約済みで、まもなく入手できる。なぜか同じ図書館で同じような本を借り出す方と競合し始めた。
 そんなこともあるまいにとは思う。
 一度、会いたい見たいと思う。
 この渡辺先生、固い、柔らかい、一本気、誰でもそうなんだけれも、そういうところが大好き。
 男なら女が好き。これは大事なこと。

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