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【米国判例メモ/著作権】VR空間その他コンテンツ内における建築物等の再現と著作権

【キーワード】

米国 著作権 建築著作物 絵画、図形及び彫刻の著作物 パブリックアート 権利制限規定 コンテンツ内利用 VR空間

本判決:Leicester v. Warner Brothers, 232 F.3d 1212 (9th Cir. 2000).

【検討テーマ】

① 建築著作物と彫刻の著作物はどのように区別されるか。
② ある構造物が映画の中に写った場合、建築著作物に関する権利制限規定である米国著作権法第120条(a)の適用を受け、侵害不成立となるか。
③ 日本法との比較(VR空間における再現など、建築物等をコンテンツ内で描写するケースを念頭に)。

【事案の概要】

 1994年、ロサンゼルスのダウンタウンにある801タワーと、その南側の道路に面した壁を形成する4本のタワー(「ランタンタワー」と呼ばれる2本のタワーと、「スモークタワー」と呼ばれる2本のタワーからなる。801タワーの周りには他にも関連するタワーがあるが、下記映画に写ったのは上記4本のタワーである。)(以下、本記事において便宜的に、これらの壁と4本のタワーをそれぞれ「本件ストリートウォール」及び「本件タワー」と総称することがある。)が、映画「バットマン・フォーエヴァー」に登場するゴッサム第二銀行として利用された。

 本件タワーの参考画像は以下のとおり(出典はこちら)。

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上記映画内での登場シーンの参考画像は以下のとおり(出典はこちら)。

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 原告Andrew Leicester氏(大型のパブリックアートで知られるアーティスト)は、中庭スペース (「Zanja Madre」と呼ばれ、原告はその全体を彫刻の著作物として著作権登録している。) の中に作成したその他の美術作品と合わせて、本件タワーについて著作権による保護を求め、映画会社等を被告として訴えを提起した。

 第一審は、大要次のとおり述べ、801タワーとともに本件タワーを撮影した画像は、建築作品著作権保護法 (Architectural Works Copyright Protection Act of 1990; AWCPA。その一部が米国著作権法120条(a)として規定されている。) における建築物の画像表現物に関する権利制限により、著作権侵害とならないと結論付けた。
    ① 本件タワーは、801タワー計画の一部となるべくデザインされた機能的な側面があり、その外観からして、当該建物の構造と調和するようにデザインされていること、また、本件タワーの最上部に施された美術的なデザインは、801タワーの構造及びデザインに組み込まれていることから、「建築著作物」の一部である。
    ② 建築作品著作権保護法より前は、建物から「概念的に分離可能」な彫刻の特徴は、「絵画、図形及び彫刻の著作物」としての保護を受けることができたが、同法による著作権法改正は、かかる保護を維持するものではない。建築著作物に組み込まれた非実用的な彫刻(ガーゴイルやステンドグラスの窓など)につき、概念的分離可能性テストのもとで認められる場合があった従前の保護に代えて、建築著作物について新たな形の保護を与えようとするものである。

 原告は、Zanja Madreを一体の彫刻の著作物として捉えなかった点、また、建物に付随する彫刻の著作物について独立した保護を否定する形で建築作品著作権保護法を解釈した点で誤りがあると主張し、上訴した。

【裁判所の判断】

棄却(上記いずれの点においても原審の判断に誤りはない。)。

本件タワーは彫刻の著作物か、建築著作物(の一部)か

    「地方裁判所は、ランタンタワー及びスモークタワーは、その最上部に施された装飾的要素を含めて、801タワー全体の一部であると認定した。原判決が述べたように、それぞれのタワーは、建築的な部分と美術的な部分を双方含んだ、1つの統合的なコンセプトであるように見受けられる。地方裁判所は、当該装飾的な部分は、全体の中で、概念的に独立した美術的な装飾物としてのみ見るべきであるというLeicesterの主張を退けた。そうではなく、地方裁判所は、その美術的及び建築的な印象は、[801タワー]の付け柱を補完し、また、その3階にあるランタンのテーマを拡張した[801タワー]全体によって作り出されるものであると認定した。」

    「かかる認定は、記録上、十分に根拠がある。[本件タワー]は、[801タワー]を土地の境界線まで拡張するストリートウォールを形成している。本件ストリートウォールは、Leicesterの著作物における創作的な側面ではなく、十分なマス(注)を備えた構造によって道路との境界が定まり、かつその構造が3階よりも低くてはならないというロサンゼルス地域再開発局 の要求によって義務付けられたものである。このため、本件ウォールストリートにおける最も高い2本の柱 (ランタンタワー) は、3階までの高さに制限されている。」
《注:「絵画・彫刻・建築作品において、全体の中で一つのまとまりとして把握される部分」などの意。デジタル大辞泉(コトバンク)より》

    「本件ストリートウォールは建物と調和しており、建物が土地の境界線まで続いているという印象を与える。本件ストリートウォールのタワーは、建物の一部に見えるようにデザインされている。実際に、原審は、相当な証拠に基づき、Hayes(注:801タワー計画の主要な建築士)はLeicesterとともに[本件タワー]の共同著作者であると認定している。[本件タワー]の基礎は、1階から3階までの建物の付け柱と同じものであり、同じピンク色の花こう岩と緑色の大理石で構築されている。ランタンタワーに施されたランタンのデザインは、建物の3階層に付けられたランタンと調和しており、これらは同じ素材で作られ、同じ高さにある。本件ストリートウォールのタワーは、建物の2本の付け柱の間に距離に調和するように配置されている。さらに、反対側の8番通りに面した角に3本のスモークタワーから成るストリートウォールがあり、当該付け柱と同じ距離を置いて配置されている。これらのタワーは、フィゲロア通り側にあって建物に最も近いスモークタワーと同一である。Leicesterは、8番通り側のタワーはZanja Madreの一部ではないことを認めている。Naidorf教授(注:Dean of the Woodbury University School of Architecture and Design)は、建物のフィゲロア通り側のストリートウォールを形成するランタンタワー及びスモークタワーと、8番通り側のスモークタワーは、「側道との境界を示し、複合施設としての歩行者レベルを高めるという建築上及び都市環境デザイン上の目的」を果たしているとの意見を述べた。また、Zanja Madreのストリートウォールは、制御のために開いたり閉じたりしてランタンタワーに掛かることにより、金属ゲートとして、往来を中庭へと向かわせる機能を果たしている。」

    「Leicesterは、[本件タワー]は[801タワー]から『概念的に分離可能』な彫刻の著作物であるから、独立して著作権による保護を受けることが出来ると主張する。繰り返しになるが、地方裁判所はこれと異なる認定をしており、当裁判所もその認定が根拠を欠くと言うことができない。[本件タワー]は、フィゲロア通り及び8番通りに沿って、[801タワー]を視覚的に拡張するようデザインされている。8番通りのスモークタワーは等しく統合され、フィゲロア通りのスモークタワーがフィゲロア通りで果たすのと同じ目的を8番通りで果たしている。このことは、それらが(フィゲロア通りの2本のランタンタワーとともに)[801タワー]の機能的及び建築的な技巧の一部であることの強力な証拠である。」

米国著作権法120条(a)が適用されるか

    「[本件タワー]は建築著作物の一部であるから、著作権法第120条(a)が適用される。Leicesterが主張するように、1990年改正が、その改正後も、建物に付された彫刻の著作物について独立した保護を引き続き認めるものでない限り、公衆は、同条に基づき、公開された建物(本件における[本件タワー]を含む。)を撮影する権利を有する。Leicesterの主張は、ベルヌ条約は絵画、図形及び彫刻の著作物についての著作権による保護を取り去ることを要求しておらず、合衆国議会も、同条約を実行するAWCPAを可決する際にその保護を取り去らなかった、というものである。彼の主張は、とりわけ、絵画、図形及び彫刻の著作物として別個に保護が与えられる一定の著作物が、建築著作物に永久に組み込まれることがあり、その場合、著作者(両著作物について同一人物である場合)は、著作権法第102条(a)(5)又は第102条(a)(8)のいずれの救済を求めるかを選択することができることを示す立法過程に基づいている」

    「Leicesterが、彫刻の著作物としての[本件タワー]に係る著作権に対する別の侵害につき、何らかの他の請求権を有し得るか否かにかかわらず、当裁判所は、801タワー及び保護される建築著作物を具現した本件ストリートウォールに係る画像表現物について、彼は何らの権利も有しないと確信する。そうでなければ、建築物の画像表現物に関する著作権法第120条(a)所定の権利制限が、無意味に帰することになる。1990年、建築著作物の著作権者に初めて保護が与えられるにあたり、その権利は、公に見ることができる建築物が自由に撮影できるよう、著作権法第120条(a)によって制限された(略)。これは、フェアユースの適用に関する「個別の判断」に依存した従前の制度からの転換を反映したものであった。これにより、合衆国議会が、一体的な建築著作物の、全てではないにしても、一部の画像的なコピーを禁止する趣旨であったと解するのは、直観に反するであろう。」

    「よって、当裁判所は、著作権法第120条(a)が適用されるとした地方裁判所の判断に賛同する。」

【ちょっとたコメント】

 写真、映画、ゲームなどのコンテンツ作品では、普段誰でも見たり入ったりすることができる建築物等が作品内で描かれることが頻繁にあります。最近では、現実世界をもとにしたバーチャルリアリティ (VR) 空間を作り出し、その中で建築物やパブリックアートなどがそっくりに再現され、現実世界におけるのと同じように内外を行き来し探索することができるようになりました。これら建築物等は、コンテンツ作品内で登場人物等が活躍する様子が描かれる「世界」「環境」あるいは「場」そのものとなりますので、コンテンツ制作側としては幅広く自由な利用が認められるかどうかが重大な関心事となります。
 このように利用の対象となりやすい建築物やパブリックアートですが、気になるのは著作権法上の扱いです。

 米国著作権法上、保護される著作物のカテゴリーとして、「絵画、図形及び彫刻の著作物」と「建築著作物」が含まれています。もっとも、ある作品がそのどちらに該当するのかを判断することは、必ずしも容易ではありません。例えば、建物の屋根や壁面に施された装飾的な彫刻部分は、その部分だけを見れば「彫刻の著作物」と言うこともできそうですが、建物全体から見れば「建築著作物」(の一部)であるとも言えます。
 コンテンツ内で建築物等を描写しようとする場合、この区別は非常に重要です。なぜなら、「絵画、図形及び彫刻の著作物」と「建築著作物」のいずれに該当するかによって、著作権による保護が制限される範囲(自由に利用できる範囲)が大きく異なるからです。日本法よりもこの差が大きい米国の著作権法では、例えば次のような規定があります。

《「絵画、図形及び彫刻の著作物」に関する権利制限規定の例》
米国著作権法 第109条(c)
第106条(5)の規定にかかわらず、本編に基づき適法に作成された特定のコピーの所有者又はかかる所有者の許諾を得た者は、著作権者の許諾なく、当該コピーを直接又は一回につき画像1点を映写することで、コピーがある場所にいる観衆に対し公に展示することができる。
 
《注》要するに、ある作品が「絵画、図形及び彫刻の著作物」に該当する場合、それを買った人などは、その所在場所でその作品を公に見せても侵害になりません。
《「建築著作物」に関する権利制限規定の場合》
米国著作権法第120条
(a) 画像表現物の許容 建造された建築著作物に対する著作権は、当該著作権を具現化した建築物が公の場所に所在し又は公の場所から通常見ることができる場合、当該著作物の図画、絵画、写真その他の画像表現物を作成し、頒布し、又は公に展示することを禁止する権利を含まない。

《注》要するに、ある作品が公の場所にある「建築著作物」に該当する場合、写真を撮ったり動画を撮影したりして自由に利用できます。
《注》そのほか、第113条(d)など参照。

 これらの規定を見ると、建築著作物の方が、絵画、図形及び彫刻の著作物よりも、コンテンツ内利用に関して著作権が制限される(=自由に利用できる)範囲が非常に広いことが分かります。建築著作物の場合、それが公の場所に所在等していれば、それを撮影等してコンテンツ内に利用することは広く許容されています(=侵害になりません)。これに対し、絵画、図形及び彫刻の著作物の場合、その彫刻等の所有者等が、それ自体をその所在場所で展示することは可能ですが、コンテンツ内に利用する場合には、原則として権利者の許諾が必要ということになります("de minimis" useやフェアユースといった例外によって許容されることはあります。)。
 それゆえ、本件のように、コンテンツ制作の中で、絵画、図形又は彫刻の特徴を備えた建築物を撮影するにあたっては、その中に写り込む部分が「絵画、図形及び彫刻の著作物」なのか、それとも「建築の著作物」(の一部)なのかによって、いかなる権利処理が必要になるかが変わってくるのです。

 具体的には、それが「建築著作物」である場合、第120条(a)の権利制限が適用されるため、許可なく制作できます
 他方、それが「絵画、図形及び彫刻の著作物」で(も)ある場合、同様の権利制限規定はないため、著作権者から許諾を得る必要があるということになります。

 本判決は、「本件タワー」がそのどちらに該当するのかが争われた事例です。
 本件において、裁判所は、建築物である801タワーと同様のコンセプトでデザインされた部分があること、本件タワーのほかにも、801タワーを取り巻く周辺環境のデザインに本件タワーと同一のデザインが用いられていたことなどを理由に、本件タワーは801タワーと一体となった建築著作物(の一部)であり、801タワーから独立した別個の彫刻の著作物とはいえないと判断しました。
 それゆえ、著作権法第120条(a)が適用され、本件タワーが写った映画作品について著作権侵害が否定されました。

 本判決で興味深いのは、本件タワーが建築著作物の一部であると判断された結果、米国著作権法第120条(a)の適用に関する限り、本件タワーだけを取り出して彫刻の著作物であると認めることはできない旨が判示されている点です。
 これに対し、日本の裁判例では、いわゆるノグチ・ルーム事件決定(東京地決平成15年6月11日・判時1840号106頁)において、「ノグチ・ルームを含めた本件建物全体と庭園は一体として、一個の建築の著作物を構成するものと認めるのが相当である。彫刻については、庭園全体の構成のみならず本件建物におけるノグチ・ルームの構造が庭園に設置される彫刻の位置、形状を考慮した上で、設計されているものであるから、谷口及びイサム・ノグチが設置した場所に位置している限りにおいては、庭園の構成要素の一部として上記の一個の建築の著作物を構成するものであるが、同時に、独立して鑑賞する対象ともなり得るものとして、それ自体が独立した美術の著作物でもあると認めることができる。」とし、彫刻につき、建築の著作物との位置関係などを踏まえた表現上の一体性ないし結び付きがあることから、建築の著作物(の一部)であると同時に美術の著作物でもあるという性質の併存を認めています(もっとも、上記ノグチ・ルーム事件の判旨は、本判決とは異なり、後述する我が国著作権法第46条等の権利制限規定の適用の場面における著作物の性質決定を述べたものではない点に注意が必要であると考えます。)。

 この点、日本の著作権法では、次の規定があります。

(公開の美術の著作物等の利用)
第46条 美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
一 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に譲渡する場合
三 前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

《注》要するに、(複製物ではなく原作品が)屋外にある美術の著作物と建築の著作物は、一から四以外の方法であればどんな方法で利用しても著作権侵害とならないということです。
《注》「前条第二項に規定する屋外の場所」とは、「街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所又は建造物の外壁その他一般公衆の見やすい屋外の場所」のことをいいます。

 このように、米国著作権法に比べ、日本の著作権法では、美術の著作物(第46条との関係では、複製物ではなく原作品が屋外にあるものに限ります。以下同じです。)も建築の著作物も、自由な利用が許される範囲が広く共通しているため、2つの著作物としての性質を併存させても問題が少ないといえるかもしれません。

 もっとも、日本の著作権法の下でも、両者を明確に区別しなければならないケースは想定することができます。例えば、ショッピングモールの屋内オープンスペースの床に据え付けられた彫刻があるとします。このショッピングモールをVR空間内で再現する際に、その彫刻を含めた屋内全体をもデジタルで再現し、ユーザがアバターとなって行き来し、鑑賞できるようにした場合、日本の著作権法上どのような取扱いになるでしょうか。

 日本の著作権法第46条によれば、屋内にある彫刻その他美術の著作物は、同条の適用対象となりません。
 他方、建築の著作物の内部の構成要素は、同条の適用対象になると解釈することができます。第46条の文言上、建築の著作物については、その適用対象が建築物の内部と外部とで区別されていないからです。なお、前掲ノグチ・ルーム事件決定でも、建物の一部を構成する「ノグチ・ルーム」と呼ばれる室内造作(大型の引き戸スチールサッシ、素材等が異なる三段の床、レリーフ彫刻などがあしらわれた壁面のテラコッタタイルなど)も、建築の著作物(の一部)と認定されており、建築の著作物はその内部構造も含むものとして扱われています。
 そうすると、ショッピングモールの屋内に据え付けられた彫刻が、ショッピングモールという建築の著作物の一部としての性質のみを有すると評価すれば、第46条の権利制限により、VR空間でその彫刻を再現しても著作権侵害にならないこととなります(このような評価をした場合、美術の著作物としての性質を有しないと見ることになるため、第46条第4号も適用されず、やはり侵害になりません。)。
 他方、この彫刻が、ショッピングモールとは別の独立した美術の著作物であると評価すれば、これが屋内にあるため第46条の適用を受けないことになり、VR空間でデジタルモデルとして複製・翻案し、これを公衆送信する行為(データを送信してVRデバイスで表示させる行為など)は著作権侵害となる可能性があるということになります。さらに、建築の著作物と美術の著作物の性質を併有していると評価すれば、問題はさらに複雑となります。
 これら著作物としての種類・性質の区別に関する裁判例は多くありませんが、前掲ノグチ・ルーム事件に加え、本判決が参考になればと思い、紹介させていただきました。

 現実世界をVR空間で再現しようとする場合、数多くの建築物を、その内部・外部問わず、可能な限り忠実に再現することが求められます。このとき、VR空間を作り出そうとする側としては、極めて多くの建築物等の権利者を突き止め、その許諾を得なければならないとなると、その実現が難しくなるほど大変な作業になるかもしれません。
 他方、VR空間での取引が活発になり人々の生活に浸透していくと、ビジネスの場ないし対象としてのVR空間の存在感が益々高まっていくと考えられます。その場合、建築物等に関する権利者の方としても、VR空間内で自分の建築物等が利用されることに関して権利を主張する必然性が高まっていくでしょう。
 建築物のデザインについては、改正されたばかりの意匠法によって保護を図ることが重要になっていくものと思われますが、VR空間での利用といった新しい分野にも目を向けると、依然として、著作権法が重要な役割を担います。建築物のデザインが著作権法上どのような保護を受けるか、また、どこまで利用できるのかを整理し直し、VRという新しい分野に関わる技術とビジネスの積極的活用を促しつつ、権利保護の適正なバランスを図る法制度・解釈を改めて考えていく必要性が強く感じられます。

 なお、日本の著作権法では、第46条以外にも様々な権利制限規定が設けられていますので、上記のようなケースで実際に検討が必要となった場合には、それらも含めて全体的に適法性を吟味していただくことをお勧め致します。

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