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デスクメッセのリラックマ03

いきなりのハプニング


 新しい一日が始まった。俺より、めっちゃ早起きのお日様が、真っ暗だった部屋を爽やかな風と共に、寝室の中に暖かい日差しを届けてくれた。
 寝起きで、パッと心に浮かんだ言葉は、デスクメッセ。だった。
 やばい!誰よりも早く起きて登校しないと。慌てて時計を見ると、15分位寝過ごしている。何でも最初が肝心だと言われるのに、この15分の遅れはかなりまずい。
 ガバッと飛び起きて、ものすごいスピードで準備して、パンをかじりながら、家を飛び出した。


杉本彩乃


 教室に入ると、俺の左隣の杉本彩乃が一番に登校していて、後ろ向きに立っていたんだ。
「おはよう」彩乃は、何か言いたげな表情を浮かべてた。
「おはよ・・・・・・」
「新川君さ」俺の机を見てやがる。
デスクメッセの返信文が、ふわりと宙を舞って音を立てて床に落ちた気がした。俺は、どうリアクションして良いのか分からなくて、思わず俯いたんだ。俺は、とりま、デスクメッセを確認した。
 

おはよう。実はね、何日か返信もらえなくてさ、消しゴムで自分のメッセージを消した時、始まってもいないのに、オワタ。って感じたのよね。なので、返信もらえて、すごい嬉しかったの。君のこと、名前も、顔も、容姿も知らないけどさこの学校で初めての友達なのよね。こんな私で良かったら仲良くしてね。
 

 まるで、デートしてるところを、クラスメイトの女子に見られたような気がした。狭い教室、しかも、机の上のメッセージって、普通にバレない方が奇跡なのだ。杉本彩乃は、興味津々なのが、目を見たらわかる。ここで、変な言い訳をしたら、デスクメッセは終わる。一か八か、杉本を説得するしかない。
 「杉本さん。」
 「はい。」
 「君は、口硬い?」
 「はっ?」やべ、絶対ミスったやつ。
 「あっごめん。これ、読んだよねえ。」
 「うふふ。」えっなん、この笑い方こわっ!
 「拓也ってさあ。騙されてね?」
 杉本の言わんとすることは、よーくわかる。どこの誰だか知らない人と、しかも、LINEとかじゃなく、わざわざ、机上文通なんて、ありえない。そう思うのって普通かもしれない。呼び捨てされたし、お返しや。
 「なあ彩乃。俺この子と友達やねん。やから、お願いや。このこと、誰にも言わんといてほしいねん。」俺は、杉本彩乃の目をじっと見据えて言ったんだ。
 「ふふっ。拓也って騙されやすそうやん。でも、面白そうなので、その文通、うちは、フリーで見て良いって約束してくれたら、黙っといてあげるよ。ふふっ」
 うわぁあ、プライバシーの侵害ぶち込んでくるなんて、ナンテコッタ。でも、背に腹はかえられないので、同意した。デスクメッセは、いきなり一部公開になってしまったんだ。
 俺は、心の📷シャッターで、メッセージを撮ってから、素早く、消した。


俺は憂鬱な一日を過ごした。
他のクラスメイトの誰も知らないところで、ピンチを乗り越えたのだが、個人的には、彩乃に俺たちのデスクメッセの進展の一部始終を見られるのって最悪だ。こんなのオカンの監視付きの交際みたいでムリ。
 
授業中もザワザワ感が止まらなくて、
でも解決方法がうかばなくて、6時間目の授業の終わりかけたとき、鉛筆を握りしめて机上に思いを込めたんだ。
(続く) 


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