おすすめ10曲 ♯1


 今日から、不定期でSpotifyのプレイリストをアップしようと思います。以前アップしていたときは、ライター/編集の仕事が予想以上に忙しく更新できなくなったので、ペースを維持できるか少々不安ですが……。とはいえ、新たな音楽を聴くきっかけになればと思い、また始めました。テーマはその時々で変わり、毎回“なぜこのようなプレイリストにしたのか?”という理由を簡単に書いていこうと考えております。

 さて、今回のプレイリストのテーマは“サウス・ロンドン”です。サウス・ロンドンを拠点にしているアーティストはもちろんのこと、そのアーティストと関連する曲もピックアップしました。このテーマにしたのは、プーマ・ブルーの「Only Trying 2 Tell U」を聴いたから。これを聴くまで彼のことは知らなかったんですが、贅肉が削ぎ落とされたビートに、上手くはないけど雰囲気があるヴォーカルを乗せるスタイルにやられました。
 というわけで、気になっていろいろ調べたんですが、イギリスではジャズ・シーンの注目株的に語られているとのこと。ただ、ジャズの要素もあるポップ・ソングとして聴いていたので、そこまでジャズの枠に押しこめなくてもいいのでは?とも思います。実際、彼もジャズだけでなく、ショー・ミー・ザ・ボディー(※1)といったアメリカのハードコア・バンドも好んで聴いているそうですし。

 2017年のベスト・アルバム(※2)に選んだモーゼス・ボイドなどもそうだけど、最近UKジャズとして紹介されている作品を聴くと、“これはジャズだ!”と意識することはあまりないですね。もちろん一要素として嗅ぎとることはありますが、多くの要素が混交した優れたポップ・ミュージックとしてとらえています。そうした曖昧さこそが2010年代のUKジャズの面白さでしょう。

 その面白さは、Jazz re:freshedのアダム・モーゼスによる発言からもうかがえる。アダムは、現在をシャッフル・ジェネレーション(Shuffle Generation)の時代と定義して、その世代の人々はジャンルの境界線が明確でなく、ゆえにさまざまな音楽を聴いていると言っています(※3)。さらに、ジャズ・ピアニストのニール・カウリーは、自分をジャズのアーティストとは思っていないとまで言っている(※4)。こうした自由な精神があるからこそ、ジャズについて門外漢である筆者のような人たちにも届く親しみやすさを、UKジャズは獲得できたのだと思います。

 また、今回のプレイリストにはロック寄りの曲もあります。シェイムやドリーム・ワイフなどがそうです。これは、シェイムのデビュー・アルバム『Songs Of Praise』が良かったから。世知辛い世の中に対する憤りを、キャッチーなメロディーに乗せて表現している。シェイムもサウス・ロンドンの音楽シーンで注目を集める存在ですが、彼らはUKロックの因子を受け継ぐ存在です。たとえば「Concrete」などはザ・フォールを連想させる。なので、ザ・フォール→シェイムという流れにしました。エラスティカ→ドリーム・ワイフも同様の理由です。
 シェイムの周辺には、ファット・ホワイト・ファミリー、HMLTDといったサウス・ロンドンの面白いバンドが集まっている。そんなシェイムと交流があるのでドリーム・ワイフもという感じです。

 このように、現在のサウス・ロンドンは特定のジャンルのみならず、音楽シーン全体が盛り上がりを見せています。それを今回のプレイリストで、少しでも感じとってくれたら嬉しいです。ちなみに、次回はこんなに長々と書かないでしょう。ブログですし、日常生活の合間に読める分量にしたいと思っています。プレイリストはSpotifyの埋めこみコードが使えないみたいなので(なぜだ!)、下記にリンクを貼ります。


https://open.spotify.com/user/22ervjtd5o7nsmhesud5225vi/playlist/3I2lJKQhQes3WhiCJLxzvi


※1 : ショー・ミー・ザ・ボディーについては以前書きました。ご参考までにぜひ。https://note.mu/masayakondo/n/n2745951ddda0?magazine_key=m4cd353bd9d6c

※2 : ブログで書いた2017年ベスト・アルバム記事です。https://note.mu/masayakondo/n/naa104be15022?magazine_key=m4cd353bd9d6c

※3 : i-Dの記事『jazz, but not as you know it』(2018年1月3日)を参照。https://i-d.vice.com/en_uk/article/qvwj3m/jazz-but-not-as-you-knew-it

※4 : ガーディアンの記事『Don't mention the J-word: how Spotify gifted my jazz tune two million hits』(2016年9月16日)を参照。https://www.theguardian.com/music/musicblog/2016/sep/16/ride-the-spotify-wave-playlist-jazz-hits-neil-cowley-trio-jazz

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