妖艶な歌声に導かれて踊りだす 〜 Hard Ton『Party Hard Ton』〜



 イタリアの2人組、ハード・トンの作品は遊び心で溢れている。たとえば、2010年にInternational Deejay Gigoloからリリースした「Selfish」のジャケットでは、グレイス・ジョーンズ『Island Life』へのオマージュを捧げ、クラブ・カルチャーに対する愛情を示した。また、2016年の「Triple XL」では、ニルヴァーナ『Nevermind』を引用したジャケット・デザインで、私たちを笑わせてくれた。サービス精神旺盛というか、ハード・トンは常に私たちをハッピーな気持ちにしようと、あれこれ考えている印象だ。


 そんなハード・トンのアルバム『Party Hard Ton』が、オーストリアのレーベルLuv Shackから発表された。内容は盛大なハウス・ミュージック祭りといえるもので、4つ打ちの反復が生み出す中毒性と、そこから生じる恍惚をたっぷり味わえる。ポジティヴな空気がそこら中に漂い、私たちをニンマリとさせてくれる。


 絶妙な音の抜き差し、音数を絞った丁寧なプロダクションなど、サウンド面も秀逸だ。オープニングの「Party Hard Core」という小品を除けば、すべてがダンス・ミュージックとしての高い機能性を持ち、ダンスフロアで多くの人々が踊り狂う姿を目に浮かべてしまう。


 同時に、ポップ・ソングとしても高いレベルを誇っている。狂おしいほど妖艶な歌声には、ミラーボールがきらめくダンスフロアはもちろんのこと、ダンスフロアにあまり足を運ばない者も惹きつける魔力が宿っている。ハーキュリーズ・アンド・ラヴ・アフェアあたりの音が好きなら、聴いておいて損はない。

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