Magik Deep『Views From Within』


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 優れたハウス・アーティストを多く輩出している南アフリカのなかでも、Ababiliは熱心に追ってきたレーベルのひとつだ。若手のトラックメイカーを積極的に取りあげる姿勢だけでなく、良質な音をコンスタントにリリースしているのが好感ポイント。体を動かさずにはいられない肉感的グルーヴをまとうハウス・ミュージックの数々は、ダンスフロアはもちろんベッドルームで聴いても耳を喜ばせてくれる。

 そんなAbabiliがまたひとつ良作を届けてくれた。マジック・ディープのアルバム『Views From Within』である。本作は私たちの腰をリズミカルに揺らす官能的ビートが盛りだくさんだ。余計な音を入れず、遅めのBPMでひたすら4つ打ちを反復するリズム・パターンはかなり中毒性がある。その中毒性に身を任せていると、少しずつ酩酊感が体を包みこみ、心地よい精神拡張に至らせてくれる。

 高域を強調せず、キックやベースといった低音を前面に出したプロダクションは、人によっては極端に思えるかもしれない。だがそのおかげで、本作はなかなかお目にかかれない艶めかしいサウンドスケープを得られた。歌というより囁きに近いヴォーカルはリスナーの興奮度を高め、妖しげな雰囲気を作りあげる。
 こうした曲構成にくわえ、ローファイな音質とファンク要素の濃さもふまえると、本作はムーディーマンやセオ・パリッシュといったデトロイト・ハウスとの共通点が多いように感じる。そういう意味では、ハウス・ミュージックの先達に対する憧憬が鮮明な作品とも言えよう。

 お気に入りの収録曲を挙げるなら、断トツで“Gnashing Tsuris”だ。ミスター・フィンガーズに通じるディープ・ハウスで、徐々に意識が解体されていくような解脱感を味わえる。


※ 本稿執筆時点ではMVがないのでSpotifyのリンクを貼っておきます。


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