ベース爆弾 from メキシコ 〜 Upgrayedd Jessica「Q​-​ARTX」〜



 早耳リスナーの間では知られているDJスマーフィー。筆者が彼女を知ったキッカケは、メキシコのMalignaからリリースされたEP「#Smurphwave」だった。時折音程を外す歌声は危なっかしいが、ベース・ミュージックの要素を前面に出したサウンド・プロダクション、さらに3曲目「Comma Ruttus」のレイヴィーな高揚感など、たくさんの見どころがある作品だ。
 その後彼女は、マシュー・デイヴィッド主宰のLeaving Records からアルバム『A Shapeless Pool Of Lovely Pale Colours Suspended In The Darkness』を発表して、ふたたび多くの注目を集めた。このアルバムでは幽玄的なサイケデリアを創出し、ドリーム・ポップといえるサウンドで私たちを楽しませてくれた。


 そんな彼女が、アップグレード・ジェシカ名義で新たな作品を発表した。それが本作「Q​-​ARTX」だ。全4曲入りのEPとなった本作は、これまで以上にベース・ミュージックの要素が前面に出ており、多彩なリズムを特徴とした内容になっている。
 なかでも特筆したいのは、表題曲だ。トライバルなリズムを基調に、仄暗くも妖しいダビーなエフェクト使いが際立つ曲で、ダンスフロアに集う者たちの意識を飛ばすほどのヘヴィーな低音が鳴り響いている。可能な限りの大音量で聴くことをオススメする。
 「Campo del Cielo (Stonner Vibe)」も秀逸だ。こちらはシンプルな4つ打ちを基調としているが、暴力的にエグいベース・ラインは、低音に浸ることの快楽を教えてくれる。本作の中では一番好きな曲だ。最近のメキシコ産エレクトロニック・ミュージックには興味深い作品が多いと感じるが、そのなかでもアップグレード・ジェシカは群を抜いていると思う。

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