Zebra Katz『Less Is Moor』


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 ニューヨークを拠点とするラッパーのゼブラ・カッツといえば、2010年代のクィア・ラップ・シーンを牽引した男として知られている。特に印象的なのは、2012年リリースの“Ima Read”だ。重低音が際立つダークなトラックに合わせ、ゼブラ・カッツは呪術的なラップを披露した。この曲はスマッシュ・ヒットを記録し、マイクQやDJスリンクなど多くのアーティストがリミックスしている。

 この頃から客演仕事も目立つようになった。共演者はブランコやタニカといったダンス・ミュージック系のアーティストが多い。しかし最近は、デーモン・アルバーン率いるゴリラズの『Humanz』(2017)に参加したりと、客演の幅を広げつつある。

 『Less Is Moor』は、ゼブラ・カッツの最新アルバムだ。セガ・ボデガ、トニー・クアトロ、S.ラストン、シャイガールなど、多くのアーティストが参加している。
 なかでも注目なのは、ロンドンを根城とするセガ・ボデガだ。収録曲のほとんどでプロデュースを務め、本作の作風を決定づけている。ベース・ミュージックの要素が色濃い本作のインダストリアル・サウンドは、セガ・ボデガがこれまで残してきた作品に通じるものだ。ちなみに、シャイガールもロンドンのアーティストで、セガ・ボデガのプロデュースを受けたことがある。

 その影響か、本作はイギリス色が目立つように感じる。たとえばヒップホップ、インダストリアル、ベース・ミュージックという3つの要素が混じり合う“ISH”は、マンチェスターのレーベルModern Loveからリリースされたジャック・ダイス「Block Motel」(2012)を彷彿させる。この作品も、ベース・ミュージックを土台としながら、サウス・ヒップホップとインダストリアルを取りいれたサウンドだった。

 ニューヨークのラッパーがイギリスのシーンと共鳴した本作。筆者からすると、この事実は理解できなくもない。サウス・ロンドンのオンラインラジオ局Balamiiがニューヨークでパーティーを開催するなど、ここ数年ニューヨークとイギリスのシーンが交わる事例をたびたび見かけるからだ。そうした積みかさねから誕生した果実のひとつが『Less Is Moor』である...という楽しみ方もできる。



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ポップ・カルチャーが大好きなフリーライター/編集。批評スタイルは「媚びずに是々非々」。主な仕事のまとめ : http://masayakondo.strikingly.com/ 連絡先 : acidhouse19880727@gmail.com

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