古畑任三郎(さん)と僕

2005年春。
26歳の時のことです。
自作の映画「美女缶」の【世にも奇妙な物語】におけるTVリメイクの為に、憧れの……面白いドラマのエンドクレジットでよく目にしていた映像制作会社【共同テレビ】に初訪問しました。


当時の私は、まだ監督としては新人もいいところ、ドラマ業界の右も左も分かりませんでした。
緊張の為か、慎重だったのか、かなり早めに会社に到着しました。会議室が空くまでのあいだ、空きスペースで待っていると、革張りの高級そうなリクライニング椅子がそこにありました。なにやら、読書灯も付いていてとても素敵な、特別な椅子に見えました。

椅子には「触れないでください」という旨の張り紙が。スタッフさん曰くそれは「古畑任三郎」撮影時のマサカズさん専用の休憩椅子とのこと。
そうそう、田村さんを知る業界の方は「マサカズさん」(イントネーションはフラットです)とおっしゃいます。

いま、思えば古畑(敬意を込めてこの呼び方です)という存在と唯一、接近したわずかな瞬間でした。

「古畑」は連ドラ〜SPドラマまで1分も欠けることなく観た珍しいTVドラマかもしれません。

故に、その後「素敵な選TAXI」(2014年)の音楽を「古畑任三郎」の劇伴作家である、本間勇輔さんにお願いできたときはまさに心臓が飛び出るくらい緊張しました。

ウイスキーや焼酎飲みながらファンの人と、マニアックな古畑トークを永遠にしたい気分です。
どのエピソードも好きすぎて、一番を選べません。

田村正和さまのご冥福をお祈りいたします。

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