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本音と建前

少し前に日本のある議員の方が地方の電車がほとんど通らない線路を渡ったことで書類送検されたニュースを何かで見た。

政治的な話は横に置くとして、もし今後もこのような法律は法律という建前だけをゴリゴリと押し通し、勝手踏切のような地域社会の本音が消されていくとすれば、日本はますます生きづらい社会になるのではないだろうか。

これは決してタイだけではないが、東南アジアの住みやすさの1つは、時折に「建て前(法律、ルール)」よりも「本音(共通認識)」が幅を利かせていることがあるからだろう。

例えば、ヘルメットの着用。

タイでは基本的に地方に行けば行くほど、ヘルメットの未着用率が高くなる。チェンマイに関して言えば、日中はまだヘルメットを被る人が多いものの、警察がいない夕方以降になると、ヘルメットを被らない人の方が多くなる。自分の経験上、警察の人の前をヘルメット未着用で通過してもお咎めされることはない。

建前では「ヘルメットは被らなければいけない」のは誰もが知っている。そしてこれは面白ことに日中は建前がある程度は守られている。しかし、夕方以降になると、地域社会の共通認識である「ヘルメットは自己責任」という本音が、法律という建前を超えて顔を出してくる。

「バイクは2人乗りまで」という建前はあってないようなもので、3人乗りだけではなく、4人乗り、子ども連れで5人乗りまで見たことがある。それを警察が法律を振りかざして捕まえて罰金を科すことはない。そんなことをしたら自分たちの生活が息苦しくなるからだ。

線路に関しては、タイには両脇にお店が所狭しと並んでいる観光スポットがあり、人々が線路の上を普通に行ったり来たりしている。それも電車が来ない時間帯というよりも、電車が通過する直前まで線路に人がいるのが日常茶飯事で、日本では考えられないが、「踏切は気を付けて渡れ」というのがタイ社会の暗黙の了解だろう。

そういう本音、暗黙の了解が社会に浸透している場所が自分にとっては居心地の良さに繋がり、また建前が強い先進国から本音が残っている東南アジアに移住する人々を引き付けている要因の1つなのかなと思う。




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