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天上の戯れ (お話)

ああ、降ってきたね。

雷もすごいな、嫌いかい?大きな音がするからね。

あれはね、神様たちが踊っていなさるんだ。
金の縁飾りのついた衣装を着て、腕や足に煌びやかな飾りをつけてね。雲間が光るのはそのせいさ。そうそう、あの音は踊りの拍子をとる太鼓だよ。

・・・まあ、時々ステップを間違うんだろうね、それで地上に火のついた足を踏み下ろしてしまうのかも知れない。
それか、悪ふざけか。存外に荒っぽくて気まぐれな方達だから。


私にそう教えてくれたのは年の離れた従兄だった。
気象予報士だったから、雷の正確な仕組みもちゃんと知っていたに違いない。けれど、小さな私が怖がらないように、咄嗟にお話を考えてくれたのだろう。

「人の魂が雨になって帰ってくるって伝承を持つ民族がいるんだよ」と教えてくれたのも同じ従兄だった。
なら従兄さんは、この雨になって帰ってきたのかしら、優しい従兄さんにしては降り方が激しいな、と窓を叩く夕立を眺めながら思った。


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「雷=空の上でなにかが踊っている」というイメージがずっとあるのでそれをお話にしました。

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