田原イコール物語11「自己解体の向こう側へ」
自己利益を最大化する生き方から、循環の中に身を投げ込む生き方へと転換したが、最初は、新しい生き方に振り回されてバランスを取ることが難しかった。
依頼される話をどんどん引き受けていたら、プロジェクトがどんどん増えて、たくさんの皿を同時に回している皿回しのような状況になった。
ひどい肩こりがするようになり、右手がしびれるようになった。ペナン島には、中国系の鍼灸師が数多くいるので、そこで、鍼を打ってもらったが、あまり改善しなかった。そこで、中国系のマッサージ師のところにいくと、「カッピングをやろう」ということになり、生まれて初めてやってみた。
カッピングとは、ガラスのコップみたいなものに火をつけて温めた後で背中に置き、膨張した空気が収縮することで吸盤のように背中に吸い付かせるものだ。血液が滞っていると血が吸い上げられて紫色になる。
マッサージ師は、濃い紫色になった僕の背中を見て、「こんなに紫色に染まったのは珍しいから写真を撮ってやる」といって、スマホで写真を撮ってくれた。ちょうどそのとき、オンライン講座をやっていたので、雑談ルームでその写真をシェアしたら、受講していた画家の渡邊野子さんが、「紫色は私のテーマです。これにインスパイアされたので絵を描きたい」と言い出して、構図案をメッセンジャーで送ってくれた。3つの構造案のうち、僕が気に入ったのがこれだった。のちにちゃんとした絵になってプレゼントしてもらった。
身体からのサインを受け取ることは大事だと思った。何かを変えなくてはと思った。自分に巡ってくる渦が大きすぎて、自分一人では対応できないのでチームになる必要性を感じた。
てっちさん、中西さん、杉岡さん、さわさんたちと話すようになり、安冨歩さんの「生きるための経済学」「生きるための論語」にインスパイアされた「生きるためのX」という対談動画シリーズを始めた。「何かのために生きることがあるのではなく、生きるために何かがあるのだ」というフレーズが、生命論的な生き方を模索する自分たちにしっくり来ていた。
じゃあ、何をやっていこうかということで、5人で定期的に話していくことになり、てっち案と中西案と生まれた。二人の意見は対立し、どちらか一方を取ると、もう一方の人は去っていきそうだった。信念対立を超えた世界へ行きたいと思っていたのに、スタートラインから信念対立で崩壊しそうな状況になって、再び右手がしびれるようになった。日本に帰国する飛行機の中で自分の右手のしびれと7時間対話を続けた。自分は何を心の底から望んでいるのかがようやく見えてきて、ミーティングでそれを共有した。信念対立が解けて5人がスタートラインに立つことができた。そうして、2018年に与贈工房というチームがスタートした。
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