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プロジェクト・センタード・デザイン(その2)

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参加型プロジェクトと参加させられ型プロジェクト

世の中には、様々なプロジェクトがあるが、私が扱いたいのは、自分たちの想いが中心にあって、想いを実現するために集まった社会的バンドによって取り組まれるプロジェクトである。

それとは別に、外部からの指示で集められたチームで、指示された目標を達成するプロジェクトもあるだろう。

これらを区別するために、前者を「参加型プロジェクト」、後者を「参加させられ型プロジェクト」と呼ぶことにする。

私が、省略して「プロジェクト」と言うときには、「参加型プロジェクト」のことである。

参加型プロジェクトでは、想いを実現するために集まったチームによって目標が設定され、その達成のためにリソースが集められ、チームの知識やスキルが活用される。当初、設定した目標が、想いの実現にはつながらないときには、目標を再設定することもある。意志決定のオーナーシップは、プロジェクトチームが持っている。

一方、参加させられ型プロジェクトの場合は、目標が外部から設定され、それを達成するためにメンバーが集められる。メンバーは、目標を達成できるかどうかで評価される。また、評価が外発的動機付けとして使われ、行動を管理される。意志決定のオーナーシップが外部にあることが、参加型プロジェクトとの大きな違いである。

想いとドリーミング

では、想いとはどこから生じるのだろうか。もう一度、橘川さんの「深呼吸する言葉」の一節に戻ってみよう。

人間は、二つの目、鼻、耳で世界を吸い込み、心で咀嚼して、たった一つの口で断言する。

社会秩序の中で権威付けられた情報ではなく、同時代を生きる様々な人の実感のこもった想いや言葉を吸い込み、自分自身も同時代を生きる人間の一人として社会に向けて言葉を吐き出す「深呼吸」をしながら生きていくとどうなるだろうか?

私たちは、同時代を生きる人たちの「想い」を吸い込みながら、自分の心で咀嚼しているうちに、自分の「想い」が生まれてくるのだろう。

自分の「想い」とは、世界とは無関係に生じるものではなく、世界と自分の「あいだ」に生じるものだ。だからこそ、世界で生きている誰かと「想い」で繋がっていくことができるのだ。

この話を裏返して、世界の側から語ることもできる。世界には、時代の精神という夢(ドリーミング)が漂っていて、それらが私たちを通して世界に出現しているとも言える。私たちは、一人ひとりから出現している夢(ドリーミング)を吸い込み、心で咀嚼して、自分自身の夢(ドリーミング)を生きながら、同時に、時代の精神という夢(ドリーミング)を生きるのだ。

想いで共振共鳴して集まった参加型プロジェクトチームには、チームの夢(ドリーミング)が宿り、それを実現するためにチームが動き出す。

個人の夢、チームの夢、世界の夢が重なり合っていくと生きがいややりがいが生まれてくる。その感覚を頼りに方向を定めて進んでいくと、道が開かれていく。参加型プロジェクトは、道が開かれていく方向を感じ取りながら、目標を柔軟に修正して進んでいくのだ。

プロジェクト・センタード・デザイン

参加型プロジェクトチームに宿った夢(ドリーミング)を実現するために目標を設定し、必要なリソースを集め、チームメンバーの知識やスキルを活用して行動していく。

客観的な市場価値ではなく、チームに宿った夢(ドリーミング)の実現にとって意味のあるものを「現象学的な価値」と呼ぼう。

参加型プロジェクトが目指すのは、「現象学的な価値」の創造である。

最初は漠然としたところから始まると思うが、

試行⇒結果⇒内省⇒概念化⇒・・

という経験学習サイクルを回しているうちに、必要な学びと気づきが起こり、やるべきことが明確になっていくだろう。

それに伴い、夢(ドリーミング)の実現のために必要なリソースや知識、スキルなども明確になってくるので、それらを獲得していく動きも生まれるだろう。

チームが創造した「現象学的な価値」を、必要とする人やチームに提供し、提供された側がそれを活用すると、彼らの中で、彼らにとっての「現象学的な価値」が発生し、価値創造が連鎖していく。

また、彼らが創造したものをリソースとして受け取って、チームにとっての「現象学的な価値」を創造すると、価値創造の循環が起こる。

これらの考えを1つの図に統合したものが次の図である。私は、この図を中心に据えて、参加型プロジェクトのエコシステムをデザインしたいと考えている。この図で表したものを「プロジェクト・センタード・デザイン」と呼ぶことにする。

プロジェクトセンタードデザイン

創造したものをお互いがリソースとして活用して、参加型プロジェクトを中心に据えて(プロジェクト・センタード・デザイン)、それらのネットワークが価値創造の循環を起こしていくのが、私が思い描くプロジェクト・エコシステムである。

プロジェクト・エコシステムの4つのレイヤー

エコシステムの本質は、交換関係を基本とした循環構造の自己組織化である。

プロジェクト・エコシステムでは、次の4つの交換関係が多層的に生まれるはずだ。

1)プロジェクト間のメンバー交換(直接交換)

参加型プロジェクトにおいて、メンバーの追加、脱退、交換が行われる。

2)プロジェクト間のリソース交換(直接交換)

各プロジェクト間で、創造したものを提供し、必要なリソースを受け取る交換が行われる。

3)通貨を介した交換(間接交換)

リソース交換を行う相手が見つからない場合、通貨と交換して、別のタイミングで必要なリソースと交換する。

4)学びの交換(直接・間接交換)

プロジェクトを進める上で必要な知識やスキルを誰かに直接教えてもらったり、本や動画という形でアーカイブされているものから学んだりする。また、プロジェクトを通して学んだり、気づいたりしたことを、別のプロジェクトチームに直接シェアしたり、本や動画にアーカイブして、別のタイミングで誰かの役に立つようにしておく。

プロジェクト・センタード・デザインの今後

サービス・ドミナント・ロジック(SDL)を参考にしながら、経済的循環モデルを検討すると同時に、学習者中心デザインを参考にしながら、学びの循環モデルを検討し、それらをプロジェクト・センタード・デザインという形で統合していくことを目指す。

まだ、あいまいな概念なので、参加型社会学会で、「プロジェクト・センタード・デザイン分科会」を立ち上げ、哲学(現象学など)、経営論(ウェルビーイングなど)、組織論(ティール組織など)、経済(仮想通貨、ギフト経済など)、教育(学習コミュニティ形成など)など、分野横断的に議論を重ねて、参加型社会について考えるための概念を構築していきたいと考えている。

8月27日(金)20時から、参加型社会学会のオープンミーティングを行います。

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