見出し画像

田原イコール物語5「反転授業の研究」

2013年、エインに教えてもらったWizIQを使って、物理のライブ講義を始めた。フィズヨビの受講生は、動画とメルマガでしか僕のことを知らなかったから、WizIQで「会う」ことができることにワクワクした。

ちょうどそのころ、アクティブ・ラーニングの取り組みしている小林昭文さんのブログを見つけた。一斉講義の背後にあるヒドゥンカリキュラムについて書かれていた。ヒドゥンカリキュラムとは、学校が工場労働者や兵士育成の場として機能するために、時間厳守、服従、単純作業に耐える、などを身に着ける訓練の場としてデザインされているということだ。311のときのメディアに感じた違和感と、そこに従順に従う人が多いことに対する違和感の原因に触れた気がした。そして、自分が10年以上続けてきた物理講義も、無自覚にヒドゥンカリキュラムを再生産してしまっていたことにも気づいた。

アクティブ・ラーニング型で物理講義をしてみようと思ったが、どこから始めてよいかわからなかった。でも、何とかしたいと思っていたら、あるとき、突破口が見えた。WizIQを使ったフィズヨビのライブ講義で電気回路を扱ったときに、「質問はありますか?」と聞くと、受講者が「電気回路の電位の高低の話がイメージが沸きません」とチャットに書いてきた。反射的にそれに回答しそうになったが、ふと思いとどまって、「みなさん、Aさんの質問に回答してみてください」と呼びかけた。いろんな回答がチャットに流れた。その中の一番わかりやすい回答をAさんに選んでもらった。それは、ほんの10分ほどの出来事だったが、事後アンケートには、ほとんどの人がそのことを書いていた。Aさんは、「私の質問をみんなが考えてくれた。みんなで作る授業は楽しい」と書いていた。自分の中の常識が壊れた瞬間だった。この日をきっかけに、僕の授業は根底から変わっていった。

そのころ、反転授業というものの存在を知った。教室の学びと家庭での学びの役割を「反転」するというものだ。伝統的な授業では、教室で教師が教えて生徒が知識を獲得する。家では宿題をやって知識を定着させる。一方、反転授業では、家で予習動画を見て知識を獲得する。学校では、友達と対話しながら知識を応用して定着させる。教師の役割は、反転授業では「教える人」から「ファシリテーター」へと移行する。フィズヨビで物理の講義動画を作り、動画での学びをやってきた自分の次のステップは反転授業だなと思った。

小林昭文さんと、近大付属高校で反転授業を実践していた芝池宗克さん、関東第一高校でアクティブラーニングに取り組んでいた横山北斗さんをゲストに迎えて反転授業のオンライン勉強会を開くことにした。申し込みページを作ってWizIQに集まれるようにした。オンライン勉強会の直前、佐賀県武雄市で全小学校にタブレットを配布して反転授業を行うことに決まったというニュースが流れた。反転授業に興味を持った人たちがオンライン勉強会に申し込んできた。月曜日22時からの勉強会に110人が集まった。このテーマにこの人数が集まったことに、僕を含めたみんなが驚いた。時代動き始める予感がした。オンラインであるにもかかわらず、すごい熱気が伝わってきた。

このオンライン勉強会をきっかけに「反転授業の研究」というFacebookグループが立ち上がった。このオンラインコミュニティの取り組みが、僕の人生を大きく変えていった。

■田原イコールのクラウドファンディング あと66日 21%達成

■田原イコール物語を最初から読みたい方はこちら


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?