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田原イコール物語8「オンライン反転授業講座の悪戦苦闘」

Amy Lenzoのオンライン講座を受けて、MoodleとGoToMeetingを組み合わせたオンライン講座を自分たちもやってみることにした。反転授業と言えば、講義動画を作るところにハードルがある。そこで、動画作成の講座から始めることにした。佐賀県武雄市の反転授業の動画を作成していた古山竜司さんが講師、桑子研さん、横川淳さんがサポート役になり、Explain Everythingというアプリを使って動画を作る講座を企画した。
1.解説動画を参考にして受講者が動画を作る
2.作った動画をMoodleにアップする
3.相互コメントする
4.GoToMeetingに集まって対話する
という構成で5週間の構成だった。
初めての割にはうまくいったと思うが、4割ほどの参加者が脱落してしまった。Amyの講座でも脱落者が出ていたからオンライン講座だとそんなものなのかなと思ったけど、せっかく申し込んでくれた人が脱落してしまうことに胸がチクチクした。

「反転授業の研究」では、授業設計(インストラクショナルデザイン)のことが話題になっていて、それを専門としている人たちも発言していた。そこで、第2回は授業設計をテーマにすることにした。米島博司さん、淺田義和さん、山崎進さんを講師にお願いして、オンライン講座を授業設計して、授業設計を学ぶ講座を行った。しかし、結果は、脱落者がむしろ増えてしまった。対面授業で開発されてきた授業設計のノウハウが通用しなかったという結果を踏まえて、「オンライン講座」というものの本質をとらえ直す必要があることに気づいた。

対面であれば、授業時間以外のインフォーマルな交流があり、そこで関係性が生まれたり、心がほぐれたりする。オンライン講座では、フォーマルな時間しか無くなってしまうのが問題なのではないか?という仮説を立てた。

3回目のオンライン講座は、小林昭文さんに講師をお願いし、横山北斗さんに運営チームに加わってもらった。そして、週に1回、横山さんと一緒に雑談ルームというものを導入して、インフォーマルなコミュニケーションが生まれる余白を作った。その結果、はじめて脱落者ゼロを実現することができた。それ以降、「反転授業の研究」でオンライン講座を10回以上やったが、脱落率が1割を超えることはなかった。

何度かオンライン講座をやるうちに、講座の告知方法に違和感が生まれてきた。講座の主な対象は「反転授業の研究」のメンバーである。彼らは、仲間である。そこに、講座の価値やメリットを並べて講座を販売するというところが、どうもしっくりこなくなってしまった。その矛盾は、福島毅さんに講師をお願いして行ったファシリテーション入門講座で表面化した。なかなか定員が埋まらず、福島さんが「僕が有名じゃないからね」と言った時に、「そういうことじゃないだろ。なんかが間違っているぞ」という気持ちになった。そこで、オンライン勉強会で、その違和感を正直に話した。いろんな意見が出たので取り入れたり、江藤由布さんが、講座の応援をする動画を作ってくれて、かつ、受講生としても参加してくれたりした。流れが変わって定員も埋まり、素晴らしい講座になった。

教える側と教わる側の2項対立になっている構造に限界があることが分ってきて、それを越える方法を模索していると、当時、京都精華大学にいた筒井洋一さんが、教員、学生、授業ボランティアの3項で授業を回しているという話を聞いた。ここに重要なヒントがあると直感して、京都まで授業見学に行った。教授の筒井さんは、教室の後ろのあたりをうろうろしている。授業ボランティアが前に立って一生懸命話している。それに触発されて学生のグループワークが白熱する。そして、見学者も一人ずつフィードバックを送る。授業後は残れる人が残ってお茶を飲みながら、みんなで振り返り。そこには、全く違うダイナミクスがあった。

筒井さんの取り組みからヒントを得て、さっそく、「反転授業の研究」のオンライン講座に取り入れることにした。講師、受講者、運営ボランティアの3者でじゃんけんのような関係になることをイメージした。ギュンターちえさんが、「運営ボランティアは、カラオケで最初に歌いまーすみたいな感じね」と言っていたことをよく覚えている。みんなで手探りで進めていく楽しさがあった。

ここまで僕の役割はずっと運営統括で、企画と告知、チームビルディングを担っていたが、この役割を交代していくことが次のステップだと感じた。二人三脚で一緒にやってきた松嶋渉さんに運営統括をお願いして、自分は、教育の外部とのコラボレーションの可能性を模索することにした。松嶋さんは、僕以上に運営統括をこなした。運営統括は、平野 貴美枝さんや、倉本龍さん、福田美誉さんへとリレーされていった。「反転授業の研究」のオンライン講座はメソッドとして確立されてきた。

外部とのコラボレーションの第1号は、「U理論」の翻訳者の由佐美加子さんたちの合同会社CCCだった。NVC(非暴力コミュニケーション)を取り入れた「オーセンティックリーダーシップ入門」を2016年2月に行った。この直前にZoomにブレークアウト機能が付いた。実は、それまでは、GoToMeetingをメインルームに使い、Zoomのアカウントを8個購入してブレークアウトルームとして使っていたのだ。「1つのアカウントでできるようになった!運営の負荷が大きく下がった!」と思った。不便な環境でツールを組み合わせながら3年間取り組んできたので、Zoomの機能の革命性を実感することができた。参加型のオンライン講座を行う技術が追い付いてきて、これから一般化していく未来が見えた。

同時に、「反転授業の研究」における自分の役割が終わりに近づいていることも感じ始めていた。こんなにたくさんの友達ができたのは生まれて初めてだった。自分の思い込みやメンタルモデルがボトルネックになるたびに、自分のつまらないこだわりよりも、仲間との関係性やコミュニティの発展のほうが大事だと思って、それを壊して自己拡張してきた。このコミュニティがあったおかげで成長できた。でも、その結果として、次のフェーズが見えてきてしまった。

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