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居合道ですので、「世の中」の理不尽すべてが相手なんです。


理不尽、不条理、不合理、矛盾。道理を外れた事象のすべてが、居合道の受け持つ相手なんです。

「立合い」の対義語として、「居合い」と云う。

お互い鞘から刀を抜いた同士、互いに相手と太刀を合わせる。
ことから「立合い」。
立ち合いは、勝負です。勝ちと負け。白と黒。命を得る者と命を失う者。
「生と死のある道理」のある時間です。

対義語として「居合い」。
とってもおおざっぱですが、「立合い」の時間以外そこらあたり全部。
立合いの時間が、朝8時から昼12時までの4時間であれば、居合いの受け付け時間は、「一日の残り時間」の20時間。「立合いの前」の時間と「立合いの後」の時間。

さらには、稽古している姿が、刀が鞘から飛び出す抜きつけ、振りかぶり、打ち下ろし、血振るい、刀を鞘へ納める納刀。
鞘から鞘までの動きなので、「立合いの追体験」が行われている。
「追体験の時間」を「立合い時間」とすると、一日全部の時間。

ですので、
人が願う。こうであってほしい。ああであって欲しい。
人が悔やむ。あの時、あれがあれば、これがあれば。これができれば、あれができれば。

「未来の時間」と「過去の時間」が、人の思いとともに「現在の時間」に内在されている。
ですので、居合道で行われている「想定」と「形」が多岐にわたり、多様で多彩。いくらでも人の思いを盛り込める器です。

時代に人に合わないものは形骸化して廃れていきながら、新しい情報を盛り込み「道」そのものが、新陳代謝して変化し、つながってきています。

これは?!

「あの~これ。どういう状況ですか?」
「見てのとうりだが」
「僕。正座してますよね。目の前に壁。右側に壁。左腰に刀を下げて、角っこの隅っこでっっっっって。壁の花ですか」
「この状況で、僕の左側から相手に頭をかち割られる血の花火ですよね」
「かち割られるとは限らんぞ、滅多矢鱈に突かれるやもしれん」
「いやいや、こんな身動きとれない。刀が抜けない左側から襲われるって」
「悔やんでも仕方ない。そんな間の悪い時もあるさ」

「足。ダダダダダダダダって、踏み鳴らして多人数と思わせるんですよね」
「そうだ」
「これ、使う時。想定事態、ものすごく限られてますよね」
「そうだな」

「土佐の居合いは、アラクタイという」
「荒唐無稽な初見殺しに対して、手元にあるものを組み合わせて応ずる」
「誰もが戸惑う状況で、迷いなく迅速な姿が、アラクタイと見える」

「手にした刀が、他人の刀であっても気にしない、しゃあしゃあと振るう」
「決して脳筋ではない」
「修行者へ常に想像力を求める技と想定の積み重ねが、直感となる」
「まずは、自身の直感を信じ切ることができるまでが稽古だな」


形稽古と本質的に同じ訓練方法の臨書

臨書(りんしょ)とは、書道において過去の名筆や古典的な書物を模写・模倣することを指します。この技法は、書道家が技術や表現力を向上させるために非常に重要な訓練方法の一つとされています。臨書を通じて、書道家は以下のようなメリットを得ることができます。

  1. 技術の習得:臨書は、優れた書法を身に付けるための基本的な方法です。古典的な名筆の筆使いや構成を模倣することで、自身の技術を磨くことができます。

  2. 歴史的理解:臨書を行うことで、過去の書家や時代背景に対する理解が深まります。書道の歴史や文化的背景を学び、その知識を作品に反映させることができます。

  3. 個性の発見:初めは他の書家のスタイルを模倣することから始まりますが、やがて自分自身の個性や表現を見つけるための土台となります。臨書を通じて、自分独自のスタイルを確立することが可能です。

  4. 集中力の向上:臨書は繰り返しの作業を伴うため、集中力や持久力を養うのにも適しています。このプロセスを通じて、より深い集中状態に達することができます。

臨書の方法

臨書を行う際には、以下のステップが一般的です:

  1. 手本の選定:まず、模倣したい古典的な書物や名筆を選びます。これは、学びたい技術やスタイルに応じて選ぶことが重要です。

  2. 観察と分析:手本をじっくり観察し、その筆使いや文字の構成、全体のバランスを分析します。どのような筆圧で書かれているのか、どのようなリズムで筆が運ばれているのかを理解することが重要です。

  3. 模写:実際に筆を持ち、手本を見ながら模写します。この際、手本と自分の書いた文字を比較し、違いを認識して改善していきます。

  4. 反復練習:一度の模写ではなく、何度も繰り返し練習することで、技術を体得していきます。

  5. 批評と修正:自分の作品を客観的に見て、改善点を見つけて修正します。また、他の書家や師範に見てもらい、アドバイスを受けることも有益です。

有名な臨書の例

日本や中国には、多くの有名な臨書の手本があります。例えば、中国の王羲之や顔真卿、日本の空海や小野道風などの作品は、現在でも臨書の手本として広く用いられています。

臨書は単なる模倣ではなく、古典的な技術と現代の個性を融合させるための重要なプロセスです。この過程を通じて、書道家は自己の技術と表現力を高め、独自のスタイルを確立していくことができます。

臨書には、形臨(けいりん)、意臨(いりん)、背臨(はいりん)の三つの概念があります。

これらの概念を使って臨書を説明すると、より詳細な理解が得られます。

形臨(けいりん)

形臨とは、手本となる書をできるだけ正確に模倣することを指します。具体的には、文字の形、筆使い、配置などを忠実に再現することが求められます。形臨の目的は、古典の技術やスタイルを正確に学び取ることです。

メリット

  • 基本技術の習得:書道の基本となる筆使いや文字の構成を学ぶことができます。

  • 観察力の向上:手本を詳細に観察し、それを再現することで観察力が養われます。

方法

  1. 手本を選ぶ:自分が学びたい技術やスタイルに合った手本を選びます。

  2. 詳細な観察:手本の筆使いや文字の形、配置を細かく観察します。

  3. 忠実な模写:手本を見ながら、できるだけ正確に模写します。

意臨(いりん)

意臨とは、手本の形だけでなく、その書の背後にある意図や精神、リズムなどを理解し、それを表現することを指します。形臨よりも手本の精神や意図を重視するため、少し自由な表現が許されます。

メリット

  • 表現力の向上:単なる形の模倣にとどまらず、手本の持つ意図や感情を自分の書に取り入れることで、表現力が向上します。

  • 深い理解:手本の書家の思いや意図を理解することで、書道に対する深い理解が得られます。

方法

  1. 手本の分析:手本の書家がどのような意図でその書を書いたのかを分析します。

  2. 精神の模倣:手本の形だけでなく、その精神やリズムを自分の書に取り入れます。

  3. 自由な表現:形にこだわりすぎず、手本の精神を反映した表現を試みます。

背臨(はいりん)

背臨とは、手本を見ずに模写することを指します。手本の形や精神をしっかりと理解し、それを記憶に基づいて表現します。背臨は、書道家が自分の内に取り入れた技術や精神を試すための方法です。

メリット

  • 記憶力の強化:手本を見ずに模写するため、記憶力が強化されます。

  • 自己表現の発展:手本を完全に自分のものとし、独自のスタイルを発展させるためのステップとなります。

方法

  1. 手本の習得:形臨や意臨を通じて、手本をしっかりと学び取ります。

  2. 記憶による模写:手本を見ずに、自分の記憶に基づいて模写します。

  3. 自己評価:自分の書いた文字を手本と比較し、改善点を見つけます。

まとめ

  • 形臨:手本を忠実に模写し、基本技術を習得する。

  • 意臨:手本の意図や精神を理解し、それを表現する。

  • 背臨:手本を見ずに模写し、自分の内に取り入れた技術や精神を試す。

これらの臨書の方法を通じて、書道家は技術を磨き、表現力を高め、自分独自のスタイルを確立していきます。

手に持つ得物が筆か日本刀の違いで、居合の稽古も本質的に同様です。

不条理な世界に対して、人々の積み重ねてきた努力で立ち向かう

努力は、報われる。人はそのようにできている。
居合いの稽古は、ミラーニューロンとミラーシステムを用いる。

ミラーニューロンとは

ミラーニューロンは、他者が行う動作を観察する際に、自分自身がその動作を実行しているかのように活動する神経細胞です。これらのニューロンは、他者の行動を理解し、模倣する能力を支えるとされています。ミラーニューロンは主に前頭葉と頭頂葉に存在し、運動制御、意図の理解、共感などに関与しています。

ミラーシステムの役割

ミラーシステムは、ミラーニューロンを含む神経ネットワークであり、以下のような機能を持っています:

  1. 模倣学習:ミラーシステムを通じて、他者の行動を観察し、その行動を模倣することで、新しいスキルや知識を習得することができます。これにより、効率的に学習が進むため、努力が報われる機会が増えます。

  2. 共感と社会的理解:ミラーシステムは他者の感情や意図を理解する基盤となります。これにより、他者との協力や支援が容易になり、社会的な環境での成功につながる可能性が高まります。

  3. 動機づけとフィードバック:他者の成功を観察することで、自己の努力に対する動機づけが強化されます。ミラーシステムを通じて他者の成功体験を「共有」することで、自身も同様の成功を達成したいという意欲が高まります。

努力が報われる理由

ミラーニューロンとミラーシステムの機能を考慮すると、以下のように努力が報われる理由が説明できます。

  1. 効率的な学習:ミラーシステムを通じた模倣学習は、他者の成功した方法や技術を迅速に取り入れることを可能にします。これにより、自分の努力がより効率的に成果を生むことができます。

  2. 社会的支援の利用:ミラーシステムによって共感や社会的理解が深まることで、他者からの支援や協力を得やすくなります。これは、努力を持続させるための重要な要素となります。

  3. モチベーションの維持:他者の成功や努力を見ることで、自身の努力に対する動機づけが強化されます。これにより、困難な状況でも努力を続ける意欲が高まり、最終的に成功を収める可能性が高まります。

具体例

例えば、スポーツ選手がトレーニングを行う際に、コーチや他の選手の動きを観察し、模倣することで技術を向上させることができます。このプロセスはミラーシステムによって支えられており、効率的に新しい技術を習得し、努力が成果として現れることになります。

また、仕事の場面においても、他の同僚の成功事例を観察することで、自分の仕事の進め方を改善し、成果を上げることができます。このように、ミラーシステムを通じて他者の成功から学び、自身の努力を報われる形に結びつけることが可能です。

まとめ

ミラーニューロンとミラーシステムの知見を用いると、他者の行動や成功を観察し、それを自分の努力に反映させることで、効率的に学習し、成功を収めることができると論じることができます。
これにより、努力は報われるという見解が強化されます。


道ですので、未知を切り拓いた天才も道をつなげた秀才も貴人も鬼神も凡人も先人達が歩いている。道に迷えば聞けばいい。
過去から今。そして未来へ続く道。
道は、踏まれても瞋恚(いから)ず、貴賤みな通す。

居合の技に、前を向きながら、後ろへ進む技がある。
相手を見据えながら、鯉口を切り、柄に手を掛けた抜刀姿勢のままで、背後を見ることなく、後へ全力で後ろ走りしながら切る技があります。

潔く死ぬ覚悟もあれば。泥を啜って生き抜く覚悟もあります。

居合道ですので。

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