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liner note___ep.1「yoru」


yoru

耳鳴り誘う
誰かのせいにした
振り向くまで
忌み嫌う夜 

例えば
窓越しの冷たさや
呆れるような無力さや祈りが
失われそうな今日に
煌めきやいとしさを
宿すような

揺れて車窓
途絶えた後の朝が
情けなくなだめるのも
花を散らすから見惚れて
意味を閉じて 想って

例えば
君の手に依る弱さ
無理もなく嘯いた言葉が
閉じた眼に見る無常に
戸惑いや悦びを
隠したなら

夜を曲がって
想うままで
止めないで

さようなら
拐かす有為な歪み
見飽きていた優しさが情が
知る由もない君に
安らぎや意味すらも
宿せたら


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つい考え込む性格だから、帰り道というのは反省、反芻、反駁に溢れ、"あること"に対し、誰かのせいにしたり、嫌気がさしたり、時にものすごく後悔する。


人という生き物には気分の波があり、溌剌と生きれない時期は大抵、苦しい。苦しい時には音楽を聴く。祈りの様な声、願いの様な曲、怒りの様な編曲、、、、。僕が苦しくなりはち切れそうな時は大体、そういった音楽を耳に入れていない時だ。それは生理現象に近いくらい、不可避な事だ。だから僕にとっては、楽しむことや、踊ることは音楽に関わる本質的な目的でない。(もちろん副次的な目的たる場合はある)


2週間ほど家に篭りきりになったあとのある時、電車から見えた電灯は、ひどくきれいだった。それはいつも見ていた形だったけれど、何かが徹底的に染み込んだ、潤った景色だった。今もずっと忘れていない。


自分から落ちる影は決して曲がらないように、想うこと、動くこと、生きること、が存在するなら、いいなあ、と思う。


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ここからは少しフラットに言葉を書こうかと思います。

きっかけは一時期 いろはうた が心に引っかかり、事あるごとに読んで考えていたことからでした。生物が生まれ、考え、様々な煩わしさや苦労を背負い、日々を越えていく事。願いの様な、起源を感じました。そして、果たして人が歌に求めているものとは?という疑問について考えていました。

僕がこれまで測ってきた音楽との距離感は絶妙なもので、経験や見てきたものを描いてはいるけれど、現実逃避的な"遠さ"を有してもいた。それはどうなんだろう?と思ったのが いろはうた が引っかかった理由でもあります。
現実逃避的な側面だけではなく、現実(うつつ)に直面していながらそれを乗り越えようとする葛藤を、願いを、おおっぴらにする。
そんなことをものづくりの中でしたいな、と。

そうしてyoruができていきました。何度も何度も作った理由もそこにあります。

だから少しだけ、心地悪さも感じて欲しい、私という人間的なところも閉じ込めたつもりです。ひたすらに理想と現実の自分を鏡で見続けているようで、僕は、あまり聴きたくない、と感じています。もちろん大好きな曲ですがね。


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聴いて欲しいポイントも記しておきます。
サビのメロディが三度出てきますが、そのメロディの役割が毎度違うように作っています。
曲の展開としては

A サビ A B(間奏) サビ C D(間奏) サビ

と認識するかもしれませんが、一度目(0:41〜)のサビでは直前のAメロに対してのBメロとして、二度目(2:17〜)のサビでは直前の間奏に対してのAメロとして、ラスト(3:29〜)のサビはサビとして。何度もメロが生まれ変わり、その度に違う役割を担う。故にコードも言葉も違う、意味も響き方も編曲も変えています。
面白いでしょ?
アイデアの種明かしの様ですが、是非そんなふうな事を意識して、聴いてみてくださいね。

奏者はDr.大見勇人さん、Ba.今野颯平さん。距離の近い二人に具体的なオーダーを出しまくって演奏してもらいました。兄に演奏してもらうのはなかなかメモリアルで、それがyoruなのも嬉しかった。そして、ギターの歪む最後の間奏(3:03〜)からのベースがすごくワルくてかっこ良いので聴いてみてください。


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読んでくれてありがとうございました。
今後、リリース日から毎週一曲ずつ、手の内を明かしていこうと思います。良かったら来週も引き続き読んでみてください。

最後に参考楽曲を載せておきます。皆さんの音楽ディグの一助になれたらと。
(下記のFuzzy Soulと間奏の転調先が一緒になったのは完全なる偶然です。僕にはパッと聴いて転調先がわかるような耳はないから、覚えていたわけでもないし、意識もしていません。yoruに向き合う中でぶつかった終着点がたまたま合致していた、偶然で嬉しかったです。)


茜さす 帰路照らされど・・・/椎名林檎
Fuzzy Soul / Bruno Pernadas
Emotional Eternal / Melody's Echo Chamber

上記三曲の参考楽曲とその制作に携わった方々に、多大なる感謝を。

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