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今年も東北をこの人たちと走れた

2019年の最後に走った東北の景色は最高だった。

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2019年、僕は人生で初めて東北以外の場所へ住むという経験をした。東京に住み始めて9ヶ月、僕は久しぶりに地元・東北へと向かった。年末、恒例行事となっている底上げマラソンを仲間とともに走るために。岩手県宮古市から宮城県南三陸町まで約170kmの距離、襷を継なぐ。

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寒空の下、どうして僕たちは誰にも期待されるわけでもないのに走るのだろう。三浦しをんの小説「風が強く吹いている」では、アオタケの長である清瀬灰二が箱根駅伝を目指そうと住人に呼びかけたとき、清瀬は天才ランナーである蔵原走に「知りたいんだ走。走るっていったいどういうことなのか」と問いかける。

物語の中盤、走は箱根駅伝についてこう語る。「綺麗だから繋がってきた。箱根駅伝を始めた人たちは、来年自分たちの意志を継いでくれる人がいるかどうかなんて関係なかった。でも、純粋に走ることが好きだったから箱根に挑んだんだ。(意訳)」

以前、その文章を読んだときに、底上げマラソンという挑戦をしてきたメンバーたちはこのことを体現しているのだと思った。理由なんてない。でも、この人たちと一緒に走りたいから走る。シンプルにその想いで繋がっている。

そして、毎年自分たちが走るなかで見えたものを言葉にしてきた。走るとはどういうことか問い続けた清瀬をはじめアオタケのメンバーのように。

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12月28日午前7時、僕は宮古市のホテル沢田屋の駐車場前でウォームアップをしていた。軽いジョグと流しを3本。レースではないけど、オークリーのサングラスにナイキのスパッツ、足元は発売されたばかりのAdizero Evergreen Pack

今年もこの瞬間がやってきた。宮古のスタートラインに立った。そして、僕たち底上げマラソン部は宮城県南三陸町に向けて走り出した。

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「底上げ」とは気仙沼を拠点に若者の心に火を灯し続けるNPO底上げのことで、2015年に寄付を募るために行った企画がこの底上げマラソンだった。2016年以降も有志が続け、今年で5年目になった。この写真の方が底上げマラソン部の部長&監督の誠さん。芦ノ湖で選手のアップを見ていると言われも信じてしまうほどの監督感。

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僕は宮古市街から国道45号線を南へと走り続けた。秋には地元のハーフマラソンのコースにもなるこの道。その大会は、毎年青山学院大学の選手も招待選手として走る。

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毎年僕たちが走る国道45号線のコースは、ほとんどが海に面した場所を走る。僕が走る区間7kmのうち、中盤に差し掛かると防潮堤の間に関門のようになっていて、そこから覗く海の景色は朝日に照らされてキラキラと輝いていた。

2019年4月からRuntripでインターンを始めた僕。3月に代表の大森さんと初めて会った時に言われたのは、走ることを楽しいと感じることの要素だった。「ロケーション、コミュニティ、ギア」の3要素が走ることを豊かにする。

Runtripは素敵なランニングコースに出会えるサービスを提供している。

その環境で1年弱生きてきたこともあり、朝日に照らされた海の景色を見ながら走る自分の中に響くものがあった。もちろん、世界中には素敵なロケーションで走りたくなる場所は他にもたくさんある。インターンをする中で走った、鎌倉の海や山が最高だったとか、神戸の街が良かったとかいろんな思い出がある。

ただ、僕にとってこれまでも、そしてこれからも核になり続けていく風景はここ東北の風景なのかもしれないと気付かされた。東北で生まれ育ったからこそ、この景色に出会えた。

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そろそろ僕が走る区間も終盤。巨大な防潮堤が立ちはだかる場所は陽が当たらずに凍っているところもあり、転ばないよう慎重に歩を進めた。

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2011年3月11日の東日本大震災からまもなく9年の月日が経とうとしている。こんなにも綺麗な景色を映し出している海はあの日一変した。

震災5年後から毎年末走り続けてくると、風景は変わり続ける。防潮堤が建設されていたり、道路が工事中だったり、嵩上げするために土が高く積み重ねられたり。1年前とは全く変わったというところも多い。

普段様々な場所に散らばっている人たちが東北に集まり、年の暮れに走り続けてきたのは、あの日から行動し続けてきた日々を振り返る意味もあるのかもしれない。

震災は多くのことを一変させた。けれども、あの日がなければ僕はこの人たちと走り大事な何かに気づくことも、寄り道して多くの価値観に触れる人生もなかっただろう。

2019年もこの人たちと、この景色を見て走ることができてよかった。走り続ける理由がここにあってよかった。

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2020年も一緒に走り続けましょうね。

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